市民福祉向上より大型開発を優先する姿勢は市民の願いと乖離している! 中村議員が反対討論〔2018年第3回定例会〕
H29年度決算討論 2018.10.4
日本共産党千葉市議団を代表して平成29年度決算に不認定の立場から討論を行います。
1 国政との関係について
安倍自・公政権に追随する市政運営となっており、認められません。貧困と格差を広げ、社会保障を切り捨てる経済政策、「森友」「加計」問題にみられる国政の私物化、9条改憲を進める安倍政権のもとで、市民の暮らし・福祉・平和と安全を守る立場に立とうとしない、市長の姿勢は厳しく批判されなければなりません。
安倍総理の9条改憲に対しても市長は、「公人として憲法を尊重遵守するのは当然」と述べました。そうであるならば、市民の平和と安全を守る立場から、安倍総理の9条改憲を批判すべきではないでしょうか。
2 決算について
H29年度決算の特徴について当局は、実質収支の確保、国民健康保険事業の累積赤字解消、将来負担の着実な低減、脱財政危機宣言が解除されて健全化が進んだこと、及び県費負担教職員給与負担の委譲があったこと等を示しています。
国民健康保険事業の累積赤字解消は、主要な要因は6年連続の料金値上げ等負担増等によるものです。主要債務総額の削減で、市債残高が1兆円を下回ったが市債償還に伴う利子額665億8,300万円を加える残高は1兆607億円であり、1兆円を上回っています。
財政健全化の推進・判断比率の改善は、財政健全化プランに基づく取り組みだけではなく、県費負担教職員給与負担の移譲により、標準財政規模が約300億円増額した結果、主な財政指標のうち実質公債費比率を約0.8%引き下げ、将来負担比率を約13%引き下げる改善効果を上げています。
脱財政危機宣言が解除されて健全化が進んだことについて市長は、「市民の協力」を述べていますが、市民は、協力ではなく、一方的な福祉カットにより多大な犠牲を強いられてきました。
H29年度決算では国保料金値上げなどの負担増と福祉カットを行い、熊谷市政スタートから現在まで、難病見舞金カットや高齢者祝い金カットを始め、280件、約142億円に及び、国保繰り出し金の見送り27億6,000万円、家庭ゴミ有料化51億円等、合計220億8,000万円の福祉カットと負担増を押しつけてきたことについて、全く反省がないことは遺憾です。
また最近は福祉カットの質が低下し、重度心身障害者福祉手当の切り下げ、決算年度を超えますがオムツ支給事業の所得制限を強め、月400円の利用料を4,000円にするなど、真に困っている人の福祉をさらに切り下げていることは許されません。ただちに中止すべきです。
併せて熊谷市長独自の職員給与カットは、90億1,000万円に上っています。
一方、財政危機をいいながら、必要性・緊急性の問われる大型開発53件を実施し、252億円の多額の財政を注ぎ込んできましたが、市民福祉向上より大型開発を優先する姿勢は市民の願いと乖離しています。
「脱財政危機宣言」を解除後の財政運営、事業の選択は、財政危機を理由にカットしてきた福祉事業の復活や、負担増を強いてきた事業の改善など、財政健全化の犠牲になってきた市民に少しでも報いるべきです。
3 大型開発について
新庁舎整備
新庁舎完成予想図で高層棟に比べて低層棟は、市民利用施設などのためホテルを思わせる華やかな施設です。一般市の市庁舎はシンボル的な施設として位置付けていますが政令市は異なり、来庁者数も各区役所が1,200名などであるのに対して、本庁舎は700人程度です。「まち・人・緑をつなぐシティホール」のコンセプトも、千葉駅から千葉みなとまでのプロムナードを利用する市民はほとんどいませんし、役所となりの港公園で集う人影もまばらです。現実を直視して計画の再検討を行い、建設費を抑えるべきです。
次に、本庁舎整備期限をH35年度に決めているが絶対的理由はありません。事業の優先順位を見直して、本庁舎整備3年~5年先に延長してその間に、子どもの命に関わる学校のエアコン設置を急ぐことを求めるものです。
250競輪
国有地払い下げ等で33億円支出する250競輪の収支予想は、市への繰入金を毎年1,700万円と計画しています。現在の千葉競輪の繰入金と同額の1,700万円のために、多額の支出をすることは説明がつきません。また、千葉市が行ったギャンブル依存症調査で、競輪場入場者は14.6%と異常な数値であり、これ以上ギャンブル依存症を増やしてはなりません。もともと地方自治体が競輪事業を行う公共性や公益性はなく、撤退すべきです。
熊谷市長が計画している大型開発は、市庁舎整備307億円、千葉駅前再開発 25億円、250競輪336億円、千葉公園体育館整備77億円、中央公園通町公園連結事業23億円、稲毛海浜公園リニューアル24億円等を、必要性・緊急性を市民参加で見直して、市民や子どもの命を守ることを優先すべきです。
4 小中学校普通教室へのエアコン設置について
H29年決算で小中学校普通教室へのエアコン設置について当初、市長は、学校教育審議会に2年かけて審議することを諮問し、直ちに設置しようとしませんでした。審議会は1年目のH30年7月に酷暑の中で児童生徒の健康を守るため、エアコン設置を市長に要望しました。住民運動も、市民要望も高まる中で、市長は2020年度末までに整備することに至りました。
2020年度末とは2021年3月であり、全教室でエアコン使用ができるのは、3年後になってしまいます。これでは児童生徒の命と健康は守れません。66億円の補正予算を追加補正して、来年夏までに全教室への設置を目指すため、臨時議会の開催を求めるものです。
5 障害者雇用について
中央省庁による障害者雇用水増し問題は、千葉市でも、市長部局と教育委員会などで不適切な算入が報告されています。障害者や団体からは「国が多くの障害者の働く場を奪っている」「障害者差別法が施行されたが、まだまだ名ばかりだ」と厳しい批判が高まっています。
千葉市の不適切な算入は、過去10年間でどのくらいあったか質したところ、市長部局ではH30年度に法定雇用率を下回っており、教育委員会ではH25年度に25人下回っていた答弁がありました。
来年度からは法定雇用率のクリアはもちろん、上回る雇用を目指し、民間企業などに規範を示すことを求めるものです。
次に各部局についての指摘を行います。
総務行政について
自然災害と対策、防災・減災について
西日本豪雨災害、台風21号の直撃、北海道地震・全道停電など、経験したことのない自然災害が日本列島をおそっています。
1年分の雨量が3日間に降っており、危機感が住民に伝わらず、防災無線も聞こえません。ハザードマップが生かされていません。高潮と満潮が重なり異常潮位で被害など様々指摘されている問題点を千葉市行政に速やかに生かした対策を進めることを求めます。
野党が共同して提出した、被災者生活支援法改正案は、被災者生活支援金の支給に係る国の補助割合を引き上げ、住宅の全壊・半壊・一部損壊に対する支援金を改正し、被災者の生活の再建支援をおこなうことを求めています。市長も被災者生活支援法改正を国に働きかけることを求めておきます。
千葉直下地震については、ハザードマップの被害想定を下に、被害を事前にどれだけ縮小できるのか対策・予防を実施し、家具転倒防止金具取り付けを高齢者対策から、危機管理、防災に移し、本気で広げることを求めます。
総合政策行政について
IRカジノ幕張新都心への誘致について
国会で強行採決されたIRカジノ法と、幕張新都心への誘致を検討していることは遺憾です。
カジノは、「人の金を巻き上げるだけのゼロゲーム」で観光振興にも経済成長にもつながりません。カジノで吸い上げた金は、3割が地元と国で、7割を吸い上げる外国企業の利益のためになぜ誘致するのでしょうか。
市長は新都心の活性化のためと言いますが、カジノに反対する日弁連が、暴力団対策、マネーロンダリング、青少年への悪影響などを指摘しているように、新都心の健全な発展を阻害することになります。
ギャンブル依存症千葉市の調査結果男性7.8%は、全国調査3・6%の2倍以上の深刻なものです。幕張新都心へのIR誘致断念をつよく求めます。
オリンピック・パラリンピックについて
無理のない取り組み、必要以上の費用負担はせず、市民理解のえられることを貫くべきです。
パラ事業の推進、パラスポーツの条件整備は一過性でなく持続的に行うこと。アスリートを支える人達を育てること。障害のある人もない人もともに理解し合う共生社会を目指すためパラスポーツの推進とともに、障害者差別解消法の完全実施に向けて全庁一体の取り組みを行うことを求めておきます。
なおオリ・パラの会場への交通アクセスの計画が、目途が立たない状態であることが、分科会審査で明らかになりました。市が作成した「行動計画」の交通アクセス、千葉・羽田空港の旅客船は採算が確保できません。成田空港行きの高速バスはバス会社との協議にも入っていません。JR京葉線・りんかい線の相互直通運転はJR側からいまだに回答もありません。幕張新駅はもともとオリ・パラには間に合いません。問題点を直視して、実現可能な交通アクセスの整備に取り組むことが急がれていることを指摘するものです。
市民局について
コミュニティセンター管理運用では、築30年から40年経過した施設の老朽化が進んでいるため、各施設の不具合などの現状を指定管理者と共有し、速やかに改善し市民利用に支障のないよう求めます。なお、合わせて文化施設をはじめ、公共施設へのヒアリングループ設置も求めておきます。
消費者啓発相談の内容では、架空請求はがきなどの被害が増加しています。相談件数は横ばいですが60歳以上の相談が増え、全相談に占める割合は4割を超えることから、より一層の高齢者への注意喚起を求めておきます。
男女共同参画推進については、LGBT性的少数者に対する市民向けの啓発冊子を配布し、理解促進に取り組んでいます。千葉市でも「同性パートナーシップの宣誓」によって、賃貸住宅契約時や病院で家族としての付き添いを断られる問題が解消される見込みです。引き続き、多様性を認め合える社会に向けて制度改正にあたっても当事者の意見を聞き全庁的に進めていくことを求めます。
保健福祉局について
中高生のネット依存問題が深刻です。厚労省のデータを直ちに分析をして千葉市としての速やかな対応を求めるものです。
市内福祉施設の虐待問題について平成29年通報が45件あり虐待はそのうち5件とのことでした。発達障害など声をあげづらい人に対しての虐待は許せるものではありません。障害者権利条約の立場で改善を図るべきです。
自殺対策では、来年4月に自殺対策センターが設置されるようです。行政が真剣に取り組めば、自殺者を減らすことができます。自死家族へのさらなる支援を求めるものです。
生活保護行政では、学習支援により高校進学率が上昇しました。引き続き、子どもの学びを保障しなければなりません。大学への進学も認められる時代です。対象年齢の拡大など一層の支援を求めます。
経産省は、電気などのライフラインの停止については十分な配慮を求めています。福祉のこころを大切にする行政の支援が必要です。
こども未来局について
子どもの貧困への対策強化が求められます。市の貧困実態調査結果において、無料の学習支援を求める方が87%という調査結果が出ています。子どもナビゲーターだけではこの課題は解決できません。就学援助の支給基準を生活保護と同基準より上乗せし、拡充することと、学校給食では第三子は無料化を求めるものです。子どもの孤食解消のための子ども食堂支援と無料学習支援強化、さらには学習塾等のバウチャー制度を創設して、子どもの未来の可能性を応援する施策を求めます。
子どもルーム運営においては、緊急3カ年対策で施設整備等環境改善を進めることは重要ですが、慢性的な指導員不足解消の手立ては、民間に委託しても、根本的な解決にはつながりません。指導員・補助指導員含めた抜本的な処遇改善策を早急に取組むよう求めます。
保育施設整備も行われていますが、子どもの育ちに必要な遊ぶ環境、安全対策を行い、質の確保と保育士の処遇改善を行うよう引き続き求めておきます。
環境行政について
地球温暖化対策について
豪雨・酷暑など地球温暖化の影響があると指摘されています。千葉市がCO2削減に真剣な取り組みを求めます。千葉市地球温暖化対策実行計画改訂版温室効果ガスの削減目標数値は、18年間に、合計213万トン削減する計画です。
一方市内には、JFE敷地に計画されている100万キロワットの石炭火力発電所が、CO2年間排出量は500万トンといわれています。また千葉市が北谷津に建設するガス化溶融炉が稼働すると、年間約10万トンのCO2が発生します。地球温暖化対策実行計画でCO2を213万トン削減しても、その一方で510万トンが増えると、差し引き301万トン増えてしまいます。発生源の規制こそ必要であるのに、市長は石炭火力発電所の中止決断の要求を拒否していることは、地球温暖化対策に逆行しています。石炭火力発電所に反対し、北谷津に計画しているガス化溶融炉の石炭やコークスの使用料を抑え、CO2削減となるよう環境にやさしい炉の選定を求めておきます。さらに、約2万3千トンのCO2が削減される容器包装プラスチック分別処理実施を求めます。
経済農政局について
企業立地促進は、税源の涵養や雇用の創出を図るためとの説明で、新規企業・継続企業ともに毎年助成額を伸ばし合計で21億8,000万円となっています。
今後は産業用地が不足しているためひきつづきその確保にとり組むとしていますが、正規雇用は5割、市民雇用は4割です。ここ数年は企業立地に突出して予算がついていますが、商店街活性化や中小企業支援、農業関連予算が少なくバランスがとれているとはいい難い状況です。
国会で改定企業立地促進法が成立し、地域経済けん引企業には税制優遇や優良農地転用を認めることとなり、企業が自治体に条例改廃や公共データ提供を提案できるなど「地域版特区」制度が導入されたことで、千葉市への影響が懸念されることは指摘しておきます。
都市行政について
立地適正化計画策定については、20年後を見据えたまちづくりのための計画ですが、都市機能誘導区域への公共施設の集約化を進めるのではなく、まちづくりと地域の公共施設をより充実させるために、住民とともに安心して住み続けられるまちを考えるべきです。
身近な公園については、今後も蘇我スポーツ公園整備や稲毛海浜公園リニューアルに多額の予算が投じられている一方で、身近な公園リフレッシュ推進などの予算があまりにも少なすぎます。市民から遊具の改善や樹木の管理などについて数多くの要望が寄せられています。改善要望に応えられる予算の増額を求めておきます。
建設局について
土木事務所予算の確保についてです。市民からの生活道路の改善要望は、3か年平均で年間約1万2千件となっており、土木事務所の役割はますます重要です。道路舗装や側溝の新設・改良、維持管理などに対する土木事務所の予算を引き続き増額し、技術職の系統的な採用、技術の継承に取り組むよう求めておきます。
道路直轄事業負担金については改善が求められます。これまでも政令市長会や議長会を通じて改善要望を出されていますが、改善が図られていません。国道の改築に係る事業費は、本来、国が全額負担すべきものであり、費用負担すべきではありません。
急傾斜地対策については、生活保護の世帯に対する事業負担の減免はされましたが、地域によって柔軟な対応を図って市民の命と安全を守るよう求めておきます。
消防局について
予防消防体制のなかで感震ブレーカーの無料配布を増やし非常灯などの確保についてなど防災対策の充実が必要です。
消防職員の退職後の消防職員としての経験をいかし、職場確保行うべきです。消防団員の共済掛け金について、条例定数分の納入ではなく実数に応じた掛け金にするべきです。
消防ヘリのさらなる有効活用、ドローンの活用で、市民の命と財産をまもることを求めます。また、あすみが丘消防出張所の建設については、消防局の不手際があります。もっと議会や市民の理解、納得の上で建設を進めるべきです。
水道局について
水道事業については、これまで指摘してきたように、水源確保への莫大な投資と給水人口の課題な見積もりが、経営を困難にしてきた根本的な原因です。さらに、水道管の老朽化対策にも取り組まなければならない課題があります。
私どもは、千葉県からの給水単価と、市民への供給単価の改善を求めてきました。29年度は、県水道局と契約している受水費を、前年度と比較して12,800㎥から12,600㎥に引き下げ、給水原価を下げましたが、根本的な改善が図られていません。
水道事業は、市民の命と災害時の対応に関わる重要な課題であり、問題です。市長を先頭に、千葉県からの給水単価の改善に向けた協議をするとともに、確保した水源の有効活用を求めておきます。
病院局について
自治体病院として地域に必要な政策医療を提供しています。両市立病院は診療報酬のDPCいわゆる包括医療費支払制度を導入して「機能評価係数Ⅱ」で他病院と比較しても上位で頑張っています。
医師以外の医療スタッフを増員し、増員に見合った医業収益が見込めず人件費が
医業収益の7割を占める苦しい収支構造と説明をしています。自治体病院綱領に基づいて使命を果たすことを強く求めます。
最後に教育委員会です。
子どもたちが学校で生き生きのびのびと過ごしながら学ぶことができる環境を作ることが何より求められています。いじめや不登校で学校に行くことができないお子さんに対してのきめ細かなケアを行えるように体制を整えられるよう求めます。
教員の多忙化が深刻化しています。決算委員会の質疑では、月の残業時間では過労死ラインの80時間を大きく上回る、200時間残業という実態も明らかになりました。タイムカード利用や正確な時間管理を進めること、また部活動の休養日も適切に実施されるよう負担軽減策を求めます。そして、少人数学級を推進し教員負担を軽減し、きめの細かい教育環境整備を求めるものであります。
スクールセクハラは、平成29年度64件も起きている深刻な事態です。氷山の一角とも指摘され、子どもからのSOSを受ける体制づくりとしてSNSの相談窓口の周知と、全教員へのスクールセクハラ防止研修を実施し、子どもの権利を守る教育環境づくりを進めるよう強く求めます。