やなぎだ清議員が反対討論

(大要)  (2001.3.16)

1、 市長の基本姿勢、国政及び県政と千葉市政の関係について

 日本共産党市議団は、代表質疑で森、自・公・保政権になにを期待するのか質した。市長は「政局の安定を望んでいる」「国民生活の向上を願っている」と答えた。いま、森内閣は国民の激しい批判にさらされている。景気が改善しないばかりか、KSD汚職では不況に苦しむ中小業者の共済掛け金21億円以上も、架空の党員をつくり党費として自民党本部に納入していたこと。それが自民党千葉県連にも4千万円還元されていたことが判明した。自民党が中小業者を食い物にし、丸ごと金権腐敗に汚染していることへの国民の怒りだ。

 さらに、内閣と官房の機密費問題は、71億円余の税金が領収書なしで使われ、国会議員の海外視察に伴なう餞別や国会対策費にも使われ、消費税導入の際には、前年と合わせて10億円もの機密費が使われ、それが野党にも配られていたことが明らかになっている。米原潜による「えひめ丸」衝突・沈没事件への対応も重なり、森内閣の退陣を求める声は世論調査ですでに90%となっている。松井市長は、こんな国民生活を無視し、地方自治体に犠牲を押し付ける森内閣に、なんら批判しようとしない姿勢は遺憾だ。

 つぎに、沼田県政20年に対する見解を求めたが、「『新産業三角構想』を掲げ、『幕張新都心』や『かずさアカデミアパーク』など、県土の基盤整備に努め」「この20年間で大きく飛躍・発展を遂げた」などと最大限の評価をしている。しかし、沼田県政が実行した三角構想は、幕張メッセが毎年16億円以上の赤字を出し、千葉市も建設負担金など毎年負担させられている。かずさアカデミアパークは1,300億円の事業費で150ha造成しても、進出企業は1社だけ。毎年の管理費など30億円が持ち出しになっている。東京アクアラインは交通量が当初計画の3分の1程度で、100円の収益のために318円の経費がかかる大赤字道路となっているにもかかわらず、さらにもう1本湾口道路をつくる計画に協力している。

 こんな巨大開発中心の県政のため、借金は10年間で3倍の1兆8,000億円にもなり、県財政を破綻させている。その結果、県民生活は犠牲にされ、人口あたりの民生費は47都道府県中45位、児童生徒1人あたりの教育費は、小学校で43位など最下位クラスが長期に続いている。以上、明らかにしたように20年間の沼田県政は、巨大開発優先で県民のくらし・福祉を犠牲にしてきた県政だ。それを評価する市長の政治姿勢は遺憾である。日本共産党市議団は、いま行なわれている県知事選挙で、巨大開発優先の県政を転換し、福祉・くらしを優先する河野泉知事の誕生のため県民のみなさんとともに、全力をつくすものである。

2、松井市政の24年と新年度予算について

 松井市長が担った24年間の市政への評価を、「マリンスタジアムの建設、政令市移行、ポートスクエアーや新町再開発をはじめとする千葉都心開発などを行なった」と自負している。

 しかし、大型公共事業を推進してきたのは、松井市長も沼田知事と同じ、市長が進めてきた大型プロジェクトは、ひずみが生じ破綻状況の無駄な投資だらけだ。

 千葉駅西口再開発は、計画当初500億円の事業費が954億円にも跳ね上がり、計画も延長されている。虫食いだらけの土地が広がり、見通しが立っていない。バブル時代に土地開発公社が、現在の地価の5倍・6倍で購入した土地の買戻しや事業費の利払いで、市財政に深刻な影響を与えている。関連して京成線の下に建設された千葉港・黒砂台線の道路は、4年間もふさがったまま16億円の投資が宙に浮いている。

 中央港地区区画整理事業は、553億円の事業費で更地にしたものの、ビル建設の計画は皆無に等しく、なんのための事業だったのか、目的も意義も経済効果も不透明なまま進行している。市が土地を提供したポートスクエアーと一体の問屋町再開発は、完全に破綻した。ポートスクエアーもホテルの経営者が変わったり、ビルには市教育委員会などが入居してとりつくろっているが、事業費87億3,500万円かけた新宿公園プロムナードも、イベントがある時以外、人通りは見えない。

 「地域経済の活性化のため」と、そごうデパートのために行なった新町再開発は、公共負担が100億円余りだったが、「活性化した」との話は聞こえない。しかも、そごうデパートは事実上の倒産で先行きは不透明だ。扇屋ジャスコ跡地5,027uの取得は、H5年12月に土地開発公社が約128億円で購入した後、公共用地取得特別会計約136億円で再取得したが、利子は年間6億円、H12年までに37億2,100万円も無駄な利払いが続いている。市役所近くのポケットパークは、わずか33坪で、4億1,500万円ものいわくつきの土地購入だった。国際グリーンハウスは購入費2億3,200万円、整備費1億3,000万円使ったが、目的の国際交流にかかわる利用はまばらだ。競輪選手宿舎サイクル会館は、土地代込みで70億円もかけ、年間3分の1程度しか利用されていない。

 このように、大型プロジェクト優先だった松井市長24年の市政は、多くの傷跡を残してしいる。大型開発の用地部門を担当してきた土地開発公社は、483億円の債務と31万1,402uの塩漬け土地をかかえている。市財政は、借金が増えつづけ全会計の借金残高は、利子を加えると1兆1,888億円にも達している。

 一方、福祉や民生費は後回しにされている。千葉市は、12政令市の中で財政力指数では第1位なのに、市民1人当たりの民生費は11位、保育所数11位、公共下水道普及率12位、市営住宅数12位など大変な立ち遅れだ。いま、千葉市政は24年間にわたって続いた、大型プロジェクト優先から市民の福祉・くらしを優先する市政へと、大きな転換が強く望まれている。党市議団は、昨年12月議会で「松井市長24年の最後の予算は、市民生活優先に切り換えるべきだ」と要求した。しかし、新年度予算は従来の立場の継続で、業務核都市に沿った「3つの都心づくり」を中心にした予算となっている。いま、全国の自治体で大型公共事業が破綻し、その見直しが言われている時に、千葉市は、千葉都心開発、幕張新都心開発に続いて、新たに蘇我副都心開発を進めようとする異常な予算となっている。

3、新年度予算の特徴と問題点について

 まず歳入についてだが、地方交付税が前年の128億円から105億円に減り、さらにその半分が臨時財政対策債に振り返られ、59億円しか入ってこない。税収は微増したものの、今後の伸びは期待できない。最高時190億円余りだった財政調整基金は、わずか6,400万円のみ。自主財源の構成比は下がり続けている。借金は発行額が増え続け、それに伴なう利払いは毎年396億2,800万円で、1日あたり1億800万円となっている。

 千葉市の公債費負担比率は、H11年度に警戒ラインの15%を大きく超えた18.7%となり、新年度予算では危険ラインの20%を超すのではないか。このような、厳しい財政状況に至った原因は、大型プロジェクト優先の市政にある。これは、市政の転換がどうしても必要であることを示している。

 つぎに歳出についてだが、この中には、千葉駅西口再開発18億7,657万円、中央港地区区画整理13億3,580万円、新港横戸町線43億2,950万円、蘇我町線22億8,832万円、幕張メッセ負担金を含む県事業負担金17億7,000万円、蘇我臨海部整備計画調査費4,803万円のように見直しや凍結、支出の中止が必要な予算が、合計172億円余り計上されている。これらの予算を、福祉や市民生活に回すことが強く求められている。そのため、日本共産党は公共事業のあり方について、住民参加による「事業評価制度」の導入を提案している。事業の必要性・採算性・環境への影響や計画の事前・事後のアセスメントを住民参加で検討する「制度」として、ただちに設置すべきだ。

 つぎに、個別の施策についての問題点を指摘する。
 松井市長が1番目の重点とした「やすらぎをはぐくむ」施策だ。その1つは、保険・医療・福祉の新年度予算では、青葉病院の建設や配食サービスの充実を行なうとしている。しかし、市民が強く望んでいる介護保険料・利用料の減免制度はつくろうとせず、わずかな年金で必死に生活している高齢者の願いに応えようとしていない。また、せっかく配達区域を広げた配食サービスも料金の値上げだ。

 子育て支援では、保育料を値上げし、乳幼児医療費助成制度では、12政令市中千葉市だけが償還払いのままなのに「県が実施しないとできない」との答弁を繰り返すばかりだ。

 国民健康保険料が値上げされるが、一般会計からの繰り入れ額は政令市中最下位のままだ。「払えない人には資格証明を発行する」と言うのでは、病気になっても医者にかかれない。

 日本共産党は、民生費の構成比をあと3%引き上げ、100億円増やして福祉の充実を求めているが、「人間尊重」「市民生活優先」のスローガンを本気で実施するつもりなら、予算の組み替えを行なうべきだ。

 その2は、環境行政についてだ。排気ガス対策のディーゼル車排気微粒子実態調査とDPFの装着は、その効果が期待されているが道路公害は一刻の猶予もできない。抜本的な対策が必要だ。公害防止条例を改定して、自動車交通の総量規制やロードプライシング、ディーゼル車規制を条例で実施すべきだが、消極的なのは残念だ。21世紀は環境の時代と言われ、公害規制から自然環境保護まで環境行政の充実が求められている。しかし、環境保全部の予算は15億4,841万円で、前年比14.7%のマイナス。H7年は22億8,514円だから大幅な減額で、これでは環境の世紀に向かっての予算とは言えない。大幅な増額と環境行政の充実をはかるべきだ。エコロジーパーク構想の策定については、蘇我臨海部開発基本構想に位置づけられ、その実現に向けて調査研究を行なうものであり、川鉄が開発した廃棄物の処理施設に深く関係する施策だ。この施設が、一般廃棄物も産業廃棄物も何でも燃やす方向であり、ゴミ対策としてのリサイクルに逆行するものだ。また、臨海部開発そのものが不透明な中で、エコロジーパーク構想の促進は問題がある。

 その3は、総務市民行政についてだ。各種審議会への女性の参加をすすめるとともに、青年の声を反映させるため、積極的な参加を保障すべきだ。住民基本台帳ネットワークシステムの構築は、新年度1億9,400万円の予算が組まれている。なぜ、全国の市町村をネットワーク化し、区域を越えて住民票の交付を行なうシステムが必要なのか。個人情報は保護されるのか。などの疑問を指摘しておく。女性行政では、実効性のある「男女平等推進条例」の制定が求められている。また、消費生活センター・計量検査所建設のPFI導入については、議会での質問に当局は、「PFI事業は破綻に陥るケースは少ない」と破綻もありうることを認めている。民間企業への丸投げで、他の民活事業と比べてもリスクは大きく、完全な情報公開と長期的な事業評価が必要だ。千葉市としての公共性・公的責任の面からも、十分な検討が必要だ。PFIは、コストを半減したとか、リスクも負わずサービスも低下しない根拠はなにかを質したが、明快な回答はなかった。千葉市が、全国に先駆けて安易に取り入れることに対して、慎重に研究・検討すべきことを求める。

 その4は、土木費のなかで市民が安全に生活するための施策についてだ。側溝の新設・改良、歩道の整備、交通安全、施設整備などの4つの事業の合計は、67億円余と昨年に比べ、8億円も減額している。市民の安全を守る事業こそ思い切って増額すべきだ。そのことで地元の中小業者に仕事が回り、経済の活性化にもつながる。

 その5は、教育行政についてだ。「授業がわからない」と答える生徒が増えている。学習内容を発達段階にそくした系統的なものにし、基礎的・基本的な事項は十分な時間を取ってすべての子どもがわかるまで教える教育への改革が必要だ。そのためにも、30人学級・少人数学級が求められている。新年度では「小人数学習」が小学1年生に行なわれるが、2年生以上にも配置すべきだ。35人学級を実施した場合、およそ13億8,000万円で可能だから、千葉市独自に早期に実施すべきだ。新指導要領や新教育課程には、「わかる授業が求められているのに、反対に詰め込み教育を押し付けている」との批判がある。文部科学省に改善を求めるべきだ。トイレの改善を文部科学省が補助事業としたことは一歩前進だ。さらにスピードを上げるべきだ。教育予算のうち義務教育費は、新年度165億8,400万円で、年々予算が減らされている。21世紀をになう子どもたちが楽しく成長していけるよう、もっと予算を増額すべきだ。

 市長が重点施策の2番目に掲げる、地域経済活性化についてだが、「公共事業の事業費を1,193億円確保した」と言うが、その執行方法が変わらなければ地元経済の活性化にはつながらない。日本共産党市議団は、中小企業向けの官公需契約が、H11年度49.5%で前年比10%も落ち込んでいることを示し、新年度では増やすことを求めた。また、福祉関係の公共事業を増やすこと。小規模修繕事業を簡易入札制度で発注すること。住宅リフォーム制度の制定を求めた。しかし、「中小企業向けの発注を数字で求めるのは適当でない」とか、簡易入札制度も住宅リフォーム制度もつくらないと答えている。これでは、従来となんら変らず、公共事業を本気で地元経済活性化に役立てようとする姿勢がない。

 商工業者への支援で「産業振興財団」の設立を目玉にしている。しかし、財団をつくる前に市が直接責任を持って支援をすべきだ。いま、商工業者がピンチなのは、長引く不況と大型店の無秩序な出店、大企業の下請けいじめなどによるものだ。行政に求められている支援は,個々の商店街の実態を正確に把握し、適切な対策を行なうことであり、商店街が担う地域社会での役割を評価し、それが果たせる「地域振興条例」を制定することだ。新年度の商工業振興費118億円は、金融や財団設立に偏り、商店街対策費はわずか1億8,800万円にすぎない。増額して実効性のある施策を行なうべきだ。融資額を8,000万円へ引き上げることより、200万・300万の融資が必要な中小零細業者へ、今までの枠を越えて融資できる制度をつくるべきだ。

 雇用についてだが、緊急地域雇用特別交付金は、総額7億7,000万円で、1,725人の雇用を促進した。半年間の限定で問題はあるが、これだけの予算で効果が上がるのだから、委託中心ではなく自治体が発注し、6か月の雇用期限をはずすなど、市独自に予算を組み、雇用対策を行なうよう求めたが、明快な答弁がなかった。雇用対策を言うのなら、私どもの提案に応え実効ある施策を推進すべきだ。

 市長の重点施策の3番目に掲げている行政改革についてだ。市長は「行革推進計画に基づき事務事業の見直しで、31項目11億8,500万円の成果を上げる」と言っている。しかし、市民サービスを低下させる行革は本物ではない。公共料金の値上げは4年間で、60種類24億5,257万円も行なわれ、市民生活に重大な影響を与えている。新年度も、13件1億6,442万円の値上げだ。安易な値上げは中止すべきだ。

 「定員管理の適正化」と職員を減らし、H9年から13年で145人削減されている。一方、外郭団体の職員は同じ5か年で99人増やされている。市民サービスを外郭団体にゆだねる民間委託は問題がある。福祉・教育はじめ必要な職場には必要な職員を増やし、市民サービス向上に努めるべきだ。県事業負担金は、大阪・神戸・札幌など政令市では支出していない。千葉市も千葉港整備やメッセ建設など9項目の負担金17億7,000万円は中止すべきだ。

 市町村合併に関する基礎調査についてだが、今回の市町村合併は政府・自治省が旗を振り、合併特例交付金まで出す異常な事態の中で進んでいる。合併はあくまで、市町村の住民が自らの意思で選択するものであり、上からの押し付けなどは論外だ。地方分権にも反する。それを新年度で予算化して調査を行なうなどは認められない。

 以上、市政の転換を求め、個別の施策への指摘と提案を行なった。新年度予算を、市民生活優先に切り換えるためには、日本共産党市議団が提案した予算の組み替えを行なうよう求めて、討論を終わる。