やなぎだ清議員のH12年度決算に対する討論

2001年10月4日

総括的な視点と財政局所管について

 H12年度決算は、予算として計上されたとき、当時の松井市長は「特に、新年度は『第6次5か年計画』の最終年次となることから、目標達成に向け計画事業の着実な推進を図るとともに、介護保険制度の円滑な実施と少子・高齢化への適切な対応、現下の重要課題である地域経済の活性化に資する施策、21世紀への掛け橋となる施策等を推進することとした」と所信表明しました。
 これに対して日本共産党市議団は、「市長の提案した、市民福祉の向上や地域経済の活性化を図るためには、千葉駅西口再開発や中央港地区区画整理をはじめ、ムダと浪費の大型プロジェクトを抑制しないと実現できない」と、大胆な見直しを求めました。
 H12年度決算は、この指摘どおりの結果がハッキリと表われています。「第6次5か年計画」では、市民要望の最も高かった「健康福祉都市」が81.1%の到達で、教育も89.8%であります。福祉予算である民生費は、市民1人当り70,506円で、政令市平均106,905円に遠く及びません。施策の面でも、乳幼児医療費助成の窓口無料化を実施していないのは、政令市中千葉市だけです。また、国民健康保険への一般会計からの繰り入れ額や公共下水道の普及率、市営住宅の戸数など、市民生活指数は軒並み最下位クラスであります。
 経済対策の商工業経営支援事業費は、年間1億2,530万円しかありません。一方、見直しが必要な大型プロジェクトは、H12年度決算額で、千葉駅西口再開発9億9,949万円、中央港地区区画整理18億6,170万円、都市計画道路蘇我町線18億4,185万円、新港横戸町線35億7,355万円の4事業合計82億7,659万円が注ぎ込まれました。4事業とも市民利用や福祉向上につながる成果は全く上がっていません。このように成果も上がらず、予算で注ぎ込んでいる大型プロジェクト等の事業費の決算額は、160億円を超えています。
 財政指標を見ますと、深刻な事態がハッキリしています。普通会計では、実質収支が15億9,386万円で「今年も黒字だ」と当局は報告していますが、実質収支に含まれている前年度からの繰越金を差し引いた単年度収支額では、黒字額はわずか1億5,912万円しかありません。
 さらに、単年度収支に含まれている積立金と、繰上償還金の黒字要素や赤字要素である積立金取り崩し額を相殺した実質単年度収支は、マイナス2億2,612万円の赤字であります。
 このように、千葉市の実質収支は、財政調整基金を取り崩して収支を調整し、「黒字だ」としてきたわけですが、積立金の取り崩しがなかったら赤字になっている状況です。単年度収支の赤字が、H8年より12年まで4年連続しているわけです。この状況は、財政運営が危機的段階に入っていることを示しています。
 この他、経営収支比率は3年連続90%を超えていますし、公債費比率については15%を超えると財政の弾力性が阻害され、地方債の発行規模を抑制するとされている公債費比率が18.4%です。債務負担を加えると実に19.5%になっています。借金残高の決算は、市債・債務負担およびその返済利子を加えた総額は、1兆1,042億円で市民1人あたり124万円にもなっています。また、地方自治体におけるバブル経済の象徴的な存在の1つであった土地開発公社の「塩漬け土地」は7万7,893uもあり、価格が294億円となっていることは、千葉市財政を圧迫しています。しかも当局は、「塩漬け土地」の実勢価格を「掌握していない」と答弁しましたが、これは行政の怠慢であります。
 以上指摘したように、千葉市財政の硬直化と危機的状況は明白であります。しかも今後、小泉内閣がすすめる「構造改革」や不況の影響で、ますます厳しくなっていきます。H12年度決算をふまえ、千葉市財政の基本的姿勢と財政運営の基本を、千葉都心、幕張新都心、蘇我副都心開発など、ムダと浪費の大型プロジェクトを大胆に見直し、市民福祉の向上と市民生活優先へと市政の転換が強く求められていることを指摘しておきます。
 つづいて、各局部の施策について、いくつかの指摘をいたします。

総務局所管について

 情報公開については、墨塗りをやめて、手数料を無料にすることを早期に実現すべきであります。12政令市中、閲覧手数料を徴収しているのは北九州市と千葉市だけです。このままでは千葉市は、市民に対する情報公開が最も遅れた都市になってしまいます。
 市長交際費については、思い切って節約をしていくことが必要であります。「行政改革」と言って、市民サービスを削っているときです。市長が率先して自らの交際費を「節約」するのは当然ではないでしょうか。また、ホームページ上で市長交際費の内容を、月々市民に公開していくよう求めておきます。
 行政改革について、安易な公共料金の値上げは中止すべきであります。平和公園の墓地使用料は、3年ごとに25%値上げされ、50万円だったのが625,000円にもなってしまいました。このまま3年ごとに25%値上げすると、H15年には781,250円になってしまいます。
 また、行革で職員の削減を行なっていますが、その一方で外郭団体の職員をふやしています。アルバイトの雇用はH11年1,884人だったものがH12年には1,936人と52人増えています。市民サービスに必要な職員は、正しく配置すべきであります。

市民局所管について

 まず、防犯街灯の整備です。この事業は、町内・自治会の申請・管理のもとに補助金が交付されている事業ですが、防犯街灯はいまや社会的な必需施設になっているもとで、毎年の決算審査で指摘されてきた項目であります。市が責任を持って整備する時代にきているのではないでしょうか。
 つぎに、自転車駐車場の整備です。現在、44駅95か所で駐輪場を管理しているとのことですが、どこの駅周辺でも放置自転車が後をたたず、「歩くことが難しい」と市民からの苦情が続いており、一層の駐輪場整備・拡充が求められています。
 昨年度も24,688台の放置自転車を移動したようですが、緊急雇用対策事業で配置された指導員を、ひきつづき配置することが必要であります。
 つぎは、労働対策です。完全失業者が、連続2か月つづけて5%を超え、史上最悪になっています。その上、自動車産業・電気産業・NTTなど大手30社だけでも、新たに16万人以上のリストラ・人減らしが進められようとしています。このような時、リストラに関する相談件数が年間わずか20件では、時代に即応した対応とはとてもいえません。リストラ110番などを開設して、ふさわしい職員を配置し、市民の相談に十分応えられるよう体制をとるべきであります。

福祉局所管について

 介護保険実施後1年半がたち、この間、市のアンケート調査の結果からも、保険料の支払いに対する負担が「大きい、やや大きい」と感じている人が全体の52.2%になっています。
 私たち、党市議団は以前から保険料の減免を行なうよう求めてきました。10月より、保険料の第2段階の減免が一部実施されるようになったことは一歩前進ですが、サービスの利用が少ないため、介護給付費を国に5億4,000万円返還しているのですから、お金の心配をしないでサービスの利用ができるようにすべきです。
 介護保険は、国からの指示通りに行なうのみではなく、独自で保険料や利用料の減免制度を実施する自治体が増えてきています。利用料も減免するようにすべきです。また、施設等の基盤整備についても、希望者にあった整備計画になっておらず、特別養護老人ホームの入所希望者は増える一方です。
 市の「新5か年計画」では、特養ホームの整備は16年度1,734人で、希望者と計画を差し引きすると、今でも854人分が不足してしまいます。基盤整備計画を早急に見直しすべきです。

環境局所管について

 「資源循環型社会をめざす」とされながら、市全体のゴミ量が84%も焼却されていることは問題です。5分別にとどまることなく、その他紙類・プラスチック類や布類など、分別と再資源化の徹底を図っていくことが必要です。また、容器包装リサイクル法については、これを確実に実施していくなら、消費者や自治体の負担は重くなるばかりで、真のゴミ減量とはなりえません。製造者の責任を明確にした法の整備を国に求めることが必要であります。
 また、ダイオキシン類や環境ホルモンの調査か所を増やし、対策を強めることやジーゼル車対策も早急にすすめることが必要です。「京都議定書」を尊重する立場から、環境行政をすすめることを求めるものです。

経済・農政局所管について

 幕張メッセの負担金6億8,000万円は、到底認めることはできません。長びく不況のもと、中小企業は仕事がなく金融面であえいでいます。こうした中、金融対策では融資枠がいっぱいでそれ以上借りられない人や、返済できずに借りられない人が増えています。中小企業資金貸付制度に、返済一時凍結制度や借り換え制度を設けることが必要であります。
 中小企業・商店対策については、中小企業対策費の中で、金融対策費を除くとわずか0.3%にしかなりません。真の支援策となる施策、例えば中小企業向けに官公需発注率を高めるための責任窓口を経済部に設けるなど、人も予算も増やすことが求められています。
 さらに、幕張新都心にカルフール・コストコ・アウトレットモールなどの、大型店出店による中小零細商店は大きな影響を受けています。これに対して、先進市では大型店に対し、独自の規制を設けて対応しているのに、千葉市は「大店立地法以上の対応はできない」と、住民本位の街づくりの視点が欠けていることは問題です。
 競輪事業は収益が減少しつづけ、一般会計への繰り入れはH8年―19億円、H9年―12億円、H10年―5億円、H11・12年はゼロとなって、実績は5億円の赤字であります。市は「宿舎と競輪場の改修費はH17年までで、それ以後は安定する」としていますが、計算通りにいくのか疑問が残ります。赤字が大きくならないうちに、廃止も含めた検討を求めるものです。
 農政についてですが、コメや野菜の輸入自由化により、コメや野菜の価格が値下がりを続けています。コメの値段は60Kgあたり15,850円にしかならず、生産費は1,3000円かかります。これでは、稲作経営はなりたちません。コメの輸入自由化に反対することやコメの下支えを国に求めるよう要望したが、やる気は見えません。農業後継者対策を積極的に行う考えも見えないのは問題です。

都市局所管について

 市営住宅は、7,001戸の管理戸数に対して空家は407戸、政策空家は308戸、計715戸もあります。全体の1割を超える空家は、市民共有の財産を無駄にしているものです。一方で、高齢者の単身入居では、競争率が最高で188倍の所もあります。ただちに、市民の要望に応じた空家対策を行なうべきです。特優賃も空家のために、これまで7億円の家賃補償をしてきました。特優賃の制度を見直す時期にきています。この特優賃を市営住宅として借り上げ、公共住宅として位置づけて、障害者・高齢者など住宅に困窮する市民に、優先的に入居を補償すべきです。
 公共交通のバリアフリー化についてですが、JR・モノレール・バスなど公共交通のバリアフリー化が法制化されました。5,000人以上が利用する駅はもちろんのこと、利用者が5,000人未満のところや既設の施設の改善と、低床・ノンステップバスの導入をさらにすすめるべきです。
 蘇我臨海部開発については、蘇我臨海部開発が急速にすすめられています。見通しのない大型開発です。地域住民に多大な影響を与え、千葉市にとっても重要な問題です。行政と関係者で決めた計画ではなく、情報公開と市民参加を保証し、行政主導の「開発ありき」の計画の推進は改めるべきです。
 都市モノレールについては、モノレールの赤字が163億円になります。過去にモノレール千葉駅の建設でJRに250億円補償し、2年間の仮設駅の建設に23億円を投入しました。
 これら合せて280億円近くの投資は、キチンとした見通しを持っていれば必要のないものでした。モノレール事業は、市民の立場から財政的見直しが求められています。

建設局所管について

 新港横戸町線は、内陸を結ぶ道路2.2Kmを700億円かけてつくられようとしており、H12年度は35億7355万円かけ、幕弁線との交差部分にブロック築造工事などが行なわれています。しかし、地域分断や環境対策が万全とはいえない事業です。
 また、新宿プロムナードはこれまでに75億円かけられ、道路は一部供用されていますが、人通りは大変少ないのに大金がかけられています。
 蘇我町線は、「蘇我臨海部開発のため」と言われている道路で、H12年度末で60%の土地買収が終わり、急いで工事が行なわれています。
 これら大型道路建設に対し、市民のための身近な道路建設は遅々としてすすみません。
 また、点字ブロックや側溝の整備、段差の解消は市民要望に見合ったものになっていません。
 身近な道路の建設、福祉型の道路改修こそ最優先されるべきではないでしょうか。
つぎは、公共下水道事業についてです。
 公共下水道の普及は、85.8%まですすんできました。しかし、政令市の中では、まだ先進市に追いついていないことに変わりはありません。さらなる整備を急ぐことが求められています。
 いま、市街化調整区域への整備がすすめられようとしていますが、市街化区域の段階でも問題として残された、私道への管渠敷設が地権者の行方不明などの原因で工事がすすまず、その地域の面整備が取り残されています。積極的な対応を求めるものです。
 また、水洗化未整備世帯への訪問指導の中で、工事費用がなく整備できない家庭も明らかになりました。工事費の補助金の引き上げおよび貸付金の返済期間を、現行の3年間から5年間に延長するなどの改善が必要であります。

消防局所管について

 自然災害が多発しています。また、先には新宿の雑居ビルで44名の死者が出ました。そのためにも、基準消防力の充実が必要です。市民の安全と財産を守るため、86.3%しかない消防職員を150人増員して、国の基準通りの体制にすべきです。

教育委員会所管について

 「わかる授業、楽しい学校」を理念に教育をすすめるとされているが、現実には1人あたりの義務教育費は、H9年には15万9,019円だったものが、H12年には13万7,950万円となり、1万1,069円も減額されています。老朽化した学校の修理を急ぐことや、ペンキ代や学校の備品を保護者会費から出費することなどは止めて、環境整備に力を入れることが必要です。
 また、免許外教科担任が全体で84人も残されていることは、「わかる授業」とは程遠い現状ではないでしょうか。東京都や他市では、免許外教科担任を解消するために、非常勤講師を独自に配置しています。30人学級を実現することとともに県へ強く求め、同時に市独自で解決することは緊急の課題であります。少子化の中で、今こそ義務教育予算を増額することを求め、討論を終わります。