野本信正議員の(公務員給与引き下げ)議案への討論

 
2002年12月13日

議案第149号〜157号についての討論

 人事院は8月8日、2002年度の国家公務員一般給与について、行政職で平均2.03%、月額7,770 円引き下げるよう国会と内閣に勧告しました。これは、1948年に勧告制度がはじまって以来初の引き下げであります。これを受けて、千葉市人事委員会は9月6日、人事院に追随し勧告制度がはじまって以来初めて、一般職員の給料月額の改定、賃下げを行う勧告をしました。財政危機の中で、公務員がガマンすることも必要であります。そのため千葉市は、今まで期末手当てを、3年間連続引き下げてきました。日本共産党市議団も、やむを得ないと賛成してきました。しかし、今回は史上初の給与引き下げであり、様々な問題がありますので賛成できません。その理由について、以下明らかにいたします。
 第1に、市長は、職員の生活を守ることも大事な仕事であることです。市長は、人事委員会の勧告を受けて、千葉市職員の給与引き下げを行う事を提案しました。この賃金引き下げで、1人当たり年平均約15万8,000円の減収となり、「1〜10級の票を示す」職員全体では、約14億57,27万円にものぼります。賃下げの対象となる職員は7,907人であります。この賃下げによって、市職員の生活設計に大きな影響を与えることになります。職員の中には、子育て真っ最中の職員、教育ローン・住宅ローン・自動車ローン  等を抱え、賃下げなど無いつもりで計画してきた訳で、7,900人の中には暮らしが大変な職員もたくさんいます。また、いま小泉内閣による医療改悪など、3兆2千億円の国民負担が市職員にも重くのしかかっています。こんな時に16万円〜20万円も削られたのでは大変です。市長は、職員の生活を守る事も大事な仕事であるのに、それを忘れているのではないでしょうか。
 第2は、「基本賃金の引き下げ」を、4月にさかのぼって実施しようとしている問題についてです。千葉市人事委員会は、「人事院勧における国家公務員の俸給表の改定傾向及び、本市職員の実情を考慮して改定する事」として、「4月からの年間給与について民間との実質的な均衡が図られるよう」との勧告を出し、市長はその通り実施したいとしております。すなわち、賃下げ分を4月にさかのぼり、来年3月の一時金で減額しようとしています。これは、「不利益不遡及」という法律の原則を無視するものであります。人勧の中には、「過去に適法で確定した金銭債券をさかのぼって不利益を与えてはならない」と明記しています。 
 法律は、「不利益不遡及」が原則であり、既得権が害されたり、法律的安定性が損なわれる事を防止するために、新たに制定されり改定された法律が、その施行以前の関係にさかのぼって起用されないと言う原則が確立しています。今年の4月にさかのぼって、給与を減額するのは違法・脱法行為であり、認めるわけには行きません。
 第3は、勧告制度の役割についてです。人事院勧告制度は、公務員が民間労働者と異なり、労働基本権が制約され、自らの勤務条件の決定に直接参加できる立場にないことから、その制約の代償として設けられている制度であります。本来「代償措置」として、労働者の利益を守る役割を持っている勧告制度が、今回のように生活を悪化させる賃下げ勧告を出すことは、その役割を放棄するものであり、到底認められません。
 第4は、市職員の給与を引き下げることによる市民への影響についてです。今日の不況の大きな原因は、消費不況です。外郭団体職員などと合わせて、千葉市人口の1%近い職員の、15億円〜16億円余もの賃金を切り下げる事により、消費の落ち込みを招き、千葉市経済に多大な影響を及します。今回の、国・地方合わせての6,590億円の賃下げは、総務省統計の家計調査で、約400億円の消費減少となり、国全体の消費への影響はおよそ6,650億円のGDPに及ぶとの試算もあります。ニッセイ基礎研究場は、公務員労働者の賃金引き下げだけで、国内総生産を0.1%から0.2%押し下げると言う試算を出しています。地域経済活性化が仕事の市長が、地域経済落ち込みを自ら作り出してはいけません。
 第5に、公務員と民間との賃金引下げ競争は、日本経済と国・地方自治体の財政危機を一層深刻にする問題です。市職員の給与引き下げは、ただちに、外郭団体職員240人の賃金引き下げに連動します。また、非常勤職員2,095人の給与にも影響するでしょう。
 さらに、公務員賃金の引き下げは、年金や生活保護費にも影響を与えると聞いています。公務員賃金を参考にしている民間の賃金に直結し、「市役所が下げたのだから」と、いまでも低い賃金を、さらに下げる原因をつくり、「公務員の側も再び、『民間が下げたので、また下げる』」と言う、賃金引き下げ競争の悪循環を招く事になります。賃金引き下げ競争の悪循環は、消費の落ち込み・税収の落ち込み・社会保障費の落ち込みなど、深刻な経済の冷え込みと、財政危機を加速させることになります。その事に気が付かないのでしょうか。気が付いているはずです。よって、賃金引き下げは中止すべきであります。議案予算の撤回を求め討論終わります。