やなぎだ清議員の討論

2003.3.6
 日本共産党千葉市議団を代表して討論を行います。
 第1に、市長の基本姿勢についてです。地方自治体が政府に対して、必要なことを堂々と主張するのが本来の地方自治の対場です。しかし市長は、小泉内閣が国民に押しつけている、社会保障削減や増税など4兆4千億円の負担増の中止を求めるよう提案しのに対し、「国家予算はわが国の活力ある経済社会の実現に向け将来の発展につながるもの」と答弁しました。これは、国民の痛みを押しつける「小泉改革」を評価するもので、市民の願いに反します。
 消費税の増税を財界が要求し、政府内からも増税論が出ているときに、90万市民を代表して「増税反対」の表明を求めましたが、市長は「政府税調の今後の検討の推移を見守る」と、増税を黙認するような答弁は、とても許されるものではありません。
 平和の問題でも、イラクへの武力攻撃と憲法違反の有事3法案に反対するよう求めましたが、市長は「イラク問題は国の専管事項」「有事3法案はわが国の平和と独立並びに国の安全確保に期することを目的にしていると認識している」と、驚くべき答弁をしました。
 鶴岡市長は、「世界平和」を言いながら、イラク問題では自らの意見表明を避けて、憲法違反の有事3法案を高く評価するのでは、90万市民の平和と安全は守れないことを自ら明らかにしたと指摘しておきます。
 第2に、新年度予算が70億円の収支不足となっているもとで、蘇我臨海開発を中心に大型開発を優先し、市民生活を削る予算であり認められません。
 新年度予算の特徴と問題点を明らかにします。
 70億円の収支不足となる新年度予算は、どこを削ることになるのかが問題です。小泉「構造改革」で、痛みばかり押しつけられている市民生活の現状を正確に把握すれば、暮らし・福祉の予算を厚くして、ムダな大型開発等を減らすのは当然です。しかし実態は、歳出予算を款別に見ると、対前年比で減額されたものは、商工費がマイナス66億円で32.1%と3分の2になってしまいました。教育費は71億5,900万円17.7%のマイナスで、補正予算44億円を加えても差し引き27億6,000万円減額です。衛生費は19億円4.9%減の中で、元々わずかの予算しかなかった環境保全部の予算は、前年の15億8,000万円が14億8,000万円に、6.6%の減額となっています。
 次に、重点7分野への予算反映状況も前年と比較してみました。
 環境問題への対応では、前年46億円余だったのが67%の減額で20億円となります。高齢化社会への対応では、64億円から46億円へと30%の減額です。地域経済の活性化では、前年の200億円から145億円に48億円の大幅な減額です。 一方、「都市再生」の取り組みでは、前年の23億円から129億円余へと一気に105億円5.6倍の破格の大増額です。
 つぎに、「新5か年計画」の当初事業費と見直し後を比較してみました。
「新5か年計画」は、261億円の事業費不足で計画事業の見直しを行い、緊急性や重要性などから、前倒し・先送りなどを行ったとのことでした。
 将来像別に当初事業費と見直し後の事業費比較では、1部「緑と水辺」が23.7%の減。第7部「文化」が24.8%の減。第8部「産業」が23.5%の減。第9部「参加と協働」は50.8%と大幅な削減となっています。1部から9部までのうち、7部が減額となった中で、第5部「都市機能と表情を豊にする」は、当初事業費に81億円を加え合計1,368億円となります。これは、見直した「新5か年計画」全体の事業費6,028億円の22.6%、4分の1近くになります。この事業のほとんどが、蘇我臨海関係で、しかも「新5か年計画」の当初計画にはなかった、サッカー場建設の多額の事業費が入っています。しかし、第3部の保育所整備などが先送りされています。
 以上のように、新年度予算を款別、重点7分野、「新5か年計画」の3点を、市民のくらしを守る立場から見ると、共通しているのは、70億円の収支不足の影響が、環境・地域経済・教育などを削り、高齢者対策をはじめとした福祉が抑えられていることです。
また、行政改革の名でデフレにより物価が下がっているのに、公共料金は値上げすると言う、説明のつかない市民負担増を押しつけています。いくつか例をあげてみます。せっかく現物給付になった3才児未満の乳幼児医療費助成に、1診療200円徴収し、8,000万円の負担増です。子どもルーム利用料は6,000円を7,200円に1,200円値上げし、3,835万円の負担増です。保育料の値上げで1,700万円の負担増。介護保険料の値上げで、5億1,200万円の負担増。低所得者の訪問介護利用料を3%から6%に引き上げ、600万円の負担増。
ヤクルトの宅配をやめ、安否確認の予算を498万円削減。住宅改修費支援サービスを要介護者のみとし550万円の削減。金婚者祝い品廃止で577万円の削減。
寿大学校を有料にして300万円の負担増。ファミリーアンケートを全戸対象から個人抽出にし5,400万円削減。私立幼稚園教職員の研究費補助1人4,000円を3,000円に減らし99万円の削減。農業後継者対策63万円削減。歩道・側溝・交通安全対策は8億円の削減です。
一方、泉自然公園の用地借り上げ料を農政センター並に引上げる要求1,600万円などを拒否しました。このように、市民の身近な願いが次々と削られたり負担増となっています。ところが、3つの都心開発を中心とした、大型プロジェクト予算は大幅に増額されています。蘇我臨海およびサッカー場関係予算は、新年度予算63億円に補正予算を加えると合計96億円になります。
千葉駅西口再開発は20億3,000万円、千葉中央第6地区再開発は利払いの6億2,000万円を加えると6億2,950万円、中央港地区区画整理事業は42億7,000万円です。4事業の合計は165億4,493万円にもなっています。
 以上の予算配分を見れば、千葉市の新年度予算は、70億円の収支不足を環境・地域経済・教育等の予算を削り、福祉・暮らしを押さえるものとなっています。
市民生活向けの予算は削りながら、サッカー場建設など蘇我臨海をはじめとした、都心開発・大型プロジェクト関係の予算を大幅に増額しています。しかも、この傾向が新年度だけでなく、H16年もH17年も、更にその先も続くのは大問題です。
 予算審査の中で明らかになった千葉市の財政見通しは、歳入の根幹である市税収入が市民所得の減少・地価の下落などで、来年以降も減収となっていくこと。地方交付税は前年比48%の減収です。これ以外の歳入についても見通しは暗いなど、今後も毎年多額の収支不足が生れる見通しであることが答弁の中でもハッキリしました。
 また、借金財政も深刻で、新年度予算の借金は、決算見込みで公債費負担比率20.6%になると財政局が答えるように、とうとう警戒ラインを超し、起債制限ラインに入っています。借金の残高は、市債・債務負担の合計1兆840億円と、その利子を加えて合計1兆2,994億7,600万円、市民1人当りにすると140万円にもなります。
 このような、深刻な財政危機にある中、市長は新年度予算で大幅に増額した大型開発を、これからもどんどん行おうとしています。
 「新5か年計画」のH16年・17年分の事業費で見ると、サッカー場を含む蘇我臨海開発は130億6,100万円、中央港地区区画整理26億5,200万、H17年以後にもまたがる事業ですが、千葉駅西口再開発99億3,000万円、千葉中央第6地区再開発340億円、合計596億6,300万円にもなります。今後、2年から数年間でこんな大きな事業費が注ぎ込まれたら、市民生活予算はますます削られ、市民サービスは低下するばかりです。借金も増え続けてしまいます。いま、市民の大多数は、厳しい生活の中で「福祉や暮らしを削ってまで、サッカー場建設を急グ必要はない」と思っています。この際、サッカー場を含む蘇我臨海開発、千葉駅西口再開発、千葉中央第6地区再開発、中央港地区区画整理の各事業は凍結・見直しを行うよう、あらためて要求します。その予算を自治体本来の仕事である、市民福祉の向上に振り向けることを強く求めます。
つづいて、個別の問題について何点か指摘いたします。
その1は、市長交際費についてです。交際費2,100万円は思い切って削減し、財政危機で市民あげて我慢の予算を組んでいるときに、市長自ら交際費を大幅に削るよう求めておきます。
 その2は、総務局関係です。行政改革については、市民サービスを削減する自治体リストラは中止する。敬老祝金・乗車券廃止への検討は中止すべきです。また、個人情報保護が確立されていない、住基ネットへの接続を中止するよう求めます。
その3は、企画行政です。市町村合併は、政府の押しつけを住民に押しつけないことを求めます。
 その4は、財政局です。公共工事の発注は、地元中小企業の仕事を増やし、小規模工事の受注をしやすくすること。また、市役所駐車場の有料化はやめるよう求めます。
 その5は、市民行政です。男女共同参画条例を生かした行政を行うため、市民参画を強め、苦情処理・救済委員は男女共同参画行政に見識のある人を選ぶこと。また、市街地への防犯カメラの設置は、プライバシーの侵害を招くので再検討するよう求めます。
 その6は、保健福祉行政です。乳幼児医療費助成制度は、1診療200円の自己負担を中止し、当面4歳未満児まで実施すること。保育所の施設改修を増やすこと。子どもルームの利用料値上げは中止すること。介護保険料・利用料の引き下げ、減免制度の拡充・新設を図ること。特養ホームを増やすこと。障害者支援費制度がスタートしても、障害者の人権擁護と充分なサービスが受けられるよう、支援体制の充実と基盤整備に務めること。市立青葉病院は、公立夜間救急診療を実施し、有料の特別室を止め、病気の容態で必要な個室を確保し無料とするよう求めます。
 その7は、環境行政についてです。自動車公害対策、ディーゼル車の排出ガス規制を強め市民の健康を守ること。合わせて市内運送業者などの対象事業者への助成を強めること。家庭ごみ有料化計画は撤回すること。産廃行政を充実して、職員の安全を守り、不法投棄や野焼きを取り締まることが必要です。
 その8は、経済農政です。融資以外は4億円余しかない商工業者対策予算を増やし、元気が出るような施策を講じること。貸し渋り、貸しはがし防止条例を制定すること。また、農業後継者育成のため、新規営農希望者の生活保障を行うこと。里山保全条例を制定し、谷津田・里山を保全することが必要です。
 その9は、建設行政です。予算が約8億円削減された、歩道整備・交通安全施設整備・側溝改修など生活に密着した事業は予算を増やすことを求めます。
 その10、下水道行政では、水害対策を強めるべきです。
 その11、消防行政では、モノレールの災害対策と救急体制をいっそう充実するよう求めます。
 その12は、教育行政です。教育基本法を豊に生かした行政を行うこと。また、予算を増やして耐震工事をすすめること。少人数学級の実施を県に強く求めつつ、市独自でも最大の努力を行うことを求めます。
 なお、議員の海外視察は、財政状況の厳しい折、中止することを求めます。
 以上、主な点だけ指摘しましたが、先に提案した「予算組替え動議」で明らかにした通り、大型プロジェクトを見直せば、財源は十分あります。実施を強く求めるものです。
 補正予算については、幕張メッセ負担金6億8,000万円などの中止も求めておきます。
 なお、サラリーマンの医療費3割負担の凍結を求める意見書とイラク攻撃に反対する決議が、反対多数で上程できなかったことは遺憾であることを申し上げ、討論を終わります。