中村きみえ議員の条例提案理由説明


2004年2月23日
 発議第1号 高齢者虐待防止条例の提案理由の説明を行います。
 この条例は高齢者の虐待を防止し、早期発見により、対応の迅速化を図り高齢者の人権を尊重し、自立した生活が送れるような環境を築く事が目的です。 
 今年1月末に石川県加賀市のパチンコ店で遊んでいた息子が、寝たきりの母親を放置し、保護責任者遺棄容疑で逮捕される事件が発生しました。母親は3日間放置され、死因は凍死で、しかも収入は母親の年金だけという悲惨な事件です。この事件は、全国に大きな衝撃を与え、関係者から早急に法整備を求める声が出ています。
 介護保険が施行されましたが、公的な介護の不足を、家族介護で補い、介護者が身体的、経済的に、精神的に疲弊し、その結果、虐待を招くケースも少なくありません。
 高齢者に対して身体的な暴力のほか、年金や資産を奪われたり、その一方で高齢者自身が被害を受けた認識がない場合もあります。痴呆への理解不足から家族やその周囲による被害も起こっています。
 このような虐待問題の解決は、虐待者を加害者として追及するのではなく、介護負担を軽減することや、地域住民も含めて正しい知識を持つことが必要です。
 それには担当者だけが問題を抱え、個別対応の解決では限界があります。集団的にケース検討をし、対策を立てることも必要です。
 また現在、千葉市には虐待の相談窓口もありません。虐待問題について検討する組織や規則などが定められていないからです。
 アメリカ、スウェーデン、ドイツなどでは、法律で高齢者への虐待を禁止しています。デンマークでは高齢者が家族に頼らず生きていける支援と訪問活動で虐待を防いでいます。
 日本では児童虐待防止法や夫婦間暴力防止いわゆるDV法など家族の間での暴力を防ぐ法律が作られました。しかし高齢者虐待は現在、被害者に対して人権擁護する手立てが系統的に行われていません。
 虐待は一刻を争う場合もあり、行政が命に関わる緊急課題としていく必要があります。また、未然に防止するために広く市民、事業者に呼びかけることが求められています。
 厚生労働省は高齢者の虐待問題の全国調査を今年度中にまとめるとしています。
 地方自治体での独自の取り組みとして条例化が望まれており、すでに秋田県鷹巣町では高齢者安心条例で高齢者の人権を守る先進的な自治体もあります。
 私ども日本共産党市議団はこのような深刻な問題について相談を受けており、実態を改善するためには市独自の条例化の必要性を痛感し、今回提案することと致しました。 
 高齢者の虐待の定義についてですが、専門家や学会等で広く知られている以下に掲げる家庭内や施設内の行為をすることを指します。
1つに身体的な暴力や拘束も含めた不適切な行動の制限をすること
2つに合意のない性的接触をおこなうこと
3つに精神的苦痛を与える言動を行うこと
4つに介護等の日常生活上の世話など行うべきことを拒否したり不十分な場合
5つに高齢者の所持する資産を不法に、また不適切に使用すること
とします。
  条例の中での市の責務は
1つに虐待を早期発見し、すみやかに関係機関と連携を取り、対応できるようにするとともに、虐待防止のための必要な体制整備に努めていくこと
2つに市は虐待を受けた高齢者、虐待者に対し、専門知識にもとづく保護やカウンセリングが受けられるよう関係職員の人材確保と、資質向上のための研修などをおこなうこと
3つに虐待防止のために介護保険制度や成年後見制度について、必要な広報や啓発活動を行うこと
としています。
 また、相談窓口を設置し、関係する職員が立場を自覚し、早期発見に努め、すみやかに通告し、被害者の安全を確保のため、必要に応じ一時保護するとしています。
 立ち入り調査についても虐待の恐れがあると市長が認めたときに民生委員や職員が必要な調査、質問を行うことが出来るとしています。
 今回介護を自宅で、または施設で行う者に対して高齢者の人権に配慮し適切な介護、サービスが行えるように定めています。
 一日も早くこの条例を制定し、高齢者虐待の未然防止が図れるよう新年度から周知徹底し、半年後の10月から施行できるよう提案するものです。同僚議員の賛同をお願いし、条例の提案理由の説明を終わります。