「千葉市大規模公共事業
見直し委員会設置条例」の提案理由


2004.12.2
 日本共産党のやなぎだ清です。ただいま上程されました、発議22号「千葉市大規模公共事業見直し委員会条例」の制定について、提案理由の説明をいたします。
 今日、大型開発事業に対する国民の批判が高まるなかで、自治体での具体的な見直しが全国各地で始まっています。
 今回、提案しました「千葉市大規模公共事業見直し委員会条例」は、事業負担が10億円以上の公共事業について、客観的視点から将来にわたる公共事業のあり方について、優れた見識を有する人々が専門的に委員会を設置して、その見直し方法を検討し、本市の財政の健全化を図ろうとするものであり、かつ必要な事項を定めたものです。
 公共事業の見直しは、(1)事業の必要性・緊急性、(2)事業の採算性、(3)環境への影響などの視点から行うことが必要です。
 これまで、各地で取り組んでいる例を紹介しますと、長野県では、知事が「脱ダム宣言」を行い、環境に多大な負担を強いるコンクリートダムは、できる限りつくらず、造林事業や河川の改修事業に力を入れる方針を打ち出しています。そして、これまでの大型開発事業を見直し、その予算を30人学級の実現や認可外保育所への認可保育所並の助成をしたり、若者のための就業サポートセンターの国基準を上回る設置や身体・知的・精神の3障害すべてに対応できる総合支援センターを県内10か所に整備するなど、県民の福祉・教育・環境・雇用のための予算を充実させています。
 高知県では、県財政の危機から1997年に、公共事業の本格的な見直しに着手し、見直しの観点を「総額の削減、効率的・効果的、透明性と客観性」としてまとめています。
 無駄な事業、そして時代にそぐわない事業を見直す制度として、事業の開始から5年が経過した事業は原則として廃止する「タイムリミット制」を実施したほか、県独自に公共事業の評価制度を開発・研究しており、まだ部分的な実施にもかかわらず、2003年度の普通建設事業費の総額をピーク時の半分に抑えています。
 また、広島市では、市長が「計画策定時に、経済状況・財政状況・人口の動向・市民の意識の変化・環境や都市景観への配慮などが織り込まれていないものは見直す必要があるというのが時代の要請である」として、昨年「公共事業見直し検討委員会」を設置しています。
 委員会の構成は、専門的な知識・経験を有し、公正かつ客観的な評価ができる7人の大学教授などに委嘱しています。同委員会は、これまで事業規模が、10億円以上の大型公共事業164事業のうち5事業を中止、22事業を一旦中止すること。また「実施が適当」とした事業の大半も、見直しの条件を付ける等の答申を出しています。
 広島市長は、この答申を尊重して、大型公共事業見直しの方向を打ち出した予算を提案し、大型公共事業の削減を財政再建の中心に据えた結果、政令指定都市になって初めて、市債残高を減少させています。
 こうして広島市では、市民生活に関連する予算を増やし、例えば、乳幼児医療費助成の通院分を就学前まで拡大したり、小中学校の講師の増員、市営住宅の空き室修繕費を500戸分から900戸分に拡大するなどしています。また、総合リハビリセンター建設に着手したり、地元の中小企業が受注できる生活密着型の公共事業費は前年度並みに確保するなど、大型公共事業費を大幅にカットする中で、市民の暮らしを潤す施策を行っています。
 さて、千葉市では、新5か年計画に沿って街づくりを進めていますが、その全体像は、総額6,028億円のうち63.3%を占める3,814億円が地方債と債務負担であり、今日の千葉市の借金残高1兆3,312億円という事態からすれば、将来の見通しはまったく立たないのが現状です。
 現在、千葉市の10億円以上の公共事業は98件が進行中ですが、先に述べたように、(1)事業の必要性・緊急性、(2)事業の採算性、(3)環境への影響などの視点を明確にして、事業を見直すことが必要になっています。
 千葉市では今、各種施策について事務事業評価制度の導入や独自の行政改革大綱に沿った見直しを進めています。しかし、こうした大型公共事業については、その対象から除外しており、これまで見直しに着手しようとしていません。広島市のような、第三者による「見直し委員会」を設置し、検討することが今こそ必要となっているのではないでしょうか。
 先に紹介した先進例に学んで、千葉市財政の健全化を図り、市民の暮らしと経済を守る取り組みに着手することを求めて提案理由といたします。