中村きみえ議員の議案討論

2005.9.22
 議案49号中、121号、122号、124号から128号、132号、134号、135号、139号から142号、144号から146号、148号、149号、151号、152号、158号から161号までの25件について反対し、発議9号が否決されたことに対して、討論を行います。
 今回の議案は、指定管理者制度の導入にかかわり、党市議団の指定管理者に対する考え方について討論します。
 公の施設の管理を民間企業が行えば、(1)サービス内容の商業主義化、(2)情報公開や住民参加の後退、個人情報保護の漏洩の危険性、(3)選定段階での癒着、(4)施設労働者のパート・派遣職員化、などの懸念があります。
 自治体リストラとなる指定管理者制度が、市民にとってサービスを向上できるものにつながるのか。先の質疑や常任委員会を通して、問題点を明らかにしてきましたが、サービス向上とコスト削減は相容れないもので、公的な施設を民間企業に市場を開放し、利益を追及する場になるという不安は、拭うことができません。
 委員会の審査では民間でサービス向上というが答弁は抽象的で具体的にはなんら説明がつきません。民間のノウハウを使ってきめ細かなサービスということは、以前外廓団体に委託するときと理由が同じです。指定管理者に管理させるメリットもなく説得力がありません。
 またコスト削減は人件費の削減でその分、市民サービスを低下させる心配と、外廓団体職員も含めて生活権の破壊につながります。
 今回の指定管理者制度では、事業者を「公募」にするものや「非公募」とするものがありました。選定段階から「非公募」とする、それぞれの理由については、これまでの市民のサービスを維持し、改善することができると判断し、賛成しますが、「公募」の場合は、先に申し上げた4点の問題があり、同意できません。
 以下、それぞれの議案の特徴点について指摘します。

 議案第121号・千葉市コミュニティセンター設置管理条例の一部改正と、122号・千葉市土気あすみが丘プラザ設置管理条例の一部改正についてです。
 今まで、公的な施設は市の職員が行ってきたため、個人情報を守り、市とのパイプとしての役割を果たしてきました。また、議会案件として提案する以前の問題として、老朽化した施設の早急な建て替え計画を出していくことが必要です。
 市は、指定管理者制度を導入すれば、利用者アンケートの実施などで要望を把握し、市民の満足度を高めることでサービス向上できると言っていますが、今現在でも、このような努力はできるのではないでしょうか。

 次に議案第125号・千葉市民会館設置管理条例の一部改正について及び、126号・千葉市文化センター設置管理条例の一部改正についてと、127号・千葉市若葉文化ホール設置管理条例の一部改正についてです。
 当局は、「文化は公共の財産であり、コスト削減で文化が後退してはならない」と答弁しましたが、経費を削減することは、住民の平等利用や利用者の人権保障が守れるのかどうか心配です。また、市民会館の使用料についても、冷暖房費を加算して料金を決定し、使用しない時期にも費用を多く徴収するというのは、事実上の値上げとなり、問題です。

 次に、議案第132号・千葉市養護老人ホーム、特別養護老人ホーム等設置管理条例の一部改正についてです。
 福祉施設の和陽園を公募で民間に委ねることは、問題です。福祉は、職員の質が問われているのに、指定管理者制度の導入によって、一斉に職員が替わると入所者に混乱をきたします。公の責任で福祉の向上を果たさなければならないのに、コスト削減、効率性を導入する民間では、従来どおりの福祉サービス提供が出来ないのではないでしょうか。
 また、介護保険法改正によってホテルコストが適用され、10月から利用料金の増大となります。低所得者に配慮したといいますが、月に1万5千円から3万円の負担増となるのに、市独自の軽減策を取らないことは問題です。

 議案第134号・千葉市老人福祉センター及び老人デイサービスセンター設置管理条例の一部改正について、135号・千葉市いきいきセンター設置管理条例の一部改正についてです。
 都賀いきいきセンターを設置することは賛成ですが、福祉部門で公募するのは施設の性質からなじみません。コスト削減が予想され、職員の雇用が不安定となり質の低下が心配です。

 次に、議案第139号・千葉市小規模通所授産施設設置管理条例の一部改正についてです。昨日召集された特別国会で、廃案になった障害者の自立支援法案を再提出する動きもあります。福祉作業所では、すでに収益も得られず、人件費の保障も不十分なまま運営がなされているのは、市当局もご承知の通りです。指定管理者制度は、小規模通所施設にはなじまないものです。

 議案第140号・千葉市ユース・ホステル設置管理条例の一部改正についてです。
ユース・ホステルの稼働率が約2割であり、経営実態を改善することが必要ですが、施設整備をしないまま、管理運営だけ民間に任せても、経営の改善とならないのではないでしょうか。

 議案第141号・千葉市ポートタワー設置管理条例の一部改正についてです。
 市の観光協会との連携も工夫し、来場者を増やす工夫が先決です。民間に任せればサービスが向上し、コスト削減できるというのは疑問です。

 議案第142号・千葉市ふるさと農園設置管理条例の一部改正についてです。
 市民に親しまれる場所を民間に任せて、コストを削減しようとすれば、職員の削減につながり、市民サービスは保障されるのか心配です。

 議案第144号・千葉市生涯学習センター設置管理条例の一部改正について、及び議案第145号・千葉市民ギャラリー・いなげ設置管理条例の一部改正について、及び議案第146号・千葉市美術館条例の一部改正についてです。
 これらの文化的な施設では、サービス向上とコスト削減が同時に成り立つのでしょうか。学芸員など専門家が、これまで蓄積してきた仕事に対しての評価もせず、効率性を目的とする民間が行おうとするのは、文化行政を進める上で矛盾することになることを指摘します。
 美術館についても、当局は「市民参加型で生涯学習機能を備えたものになる」といいますが、現状でも改善することにより、民間に委託しなくても実施可能ではないでしょうか。市民が望まない美術館の指定管理者制度の導入は止めるべきです。

 議案第148号・千葉ポートアリーナ設置管理条例の一部改正について、及び議案第149号・千葉市体育施設設置管理条例の一部改正についてです。
 市民のスポーツ施設利用が平等に保障されるのかどうか、疑問が残ります。

 議案第152号・千葉市都市公園条例の一部改正についてです。
 みどりの協会が行う施設などは、非公募で行う予定となっていますが、他の施設については公募とされており、市民利用の制限がされないのか。公共性が保たれるのかどうかが不透明です。

 次に、議案第151号・千葉市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部改正についてです。
 この計画は、蘇我臨海の開発を進める一環として行われている条例です。巨額投資をする経済効果については、発表されないまま未解明です。ホテルなどの設置もできるようになるとのことですが、大気汚染や土壌汚染など、抜本的な対策がなされない限り、住民の環境は守れず、計画が進められても市民の健康は守れません。

 議案第159号・蘇我スポーツ公園区域内既存施設除却工事の工事請負契約について、工場の除去費用は、すべて国と市の負担としていますが、JFEに応分の負担をするように求めることは、行政の責任ではないですか。落札率も96.76%と高率で問題です。

 議案第158号・新港横戸町線3工区下水道施設移設工事の工事請負契約についてです。今回の契約も前回に引き続いて、奥村組との随意契約で96.31%と高く、前回から継続するために、他社と比較すると3,300万円軽減し、実質88%になったとのことですが、もっと経費削減の努力が行えたのではないでしょうか。
 この間、この事業で市内業者が受注できたのは、たったの3%しか占めておりません。特殊な工事とはいえ、身近な公共事業は削減され、市内業者に仕事が回らず、経済活性化にはつながりません。費用対効果の面からも、環境負荷の点からも、見直すことが必要な事業です。

 議案第160号と議案第161号は、こども科学館の製造委託契約についてです。
落札率が99.54%ときわめて高く、約20億円もの展示物の事業について、専門家が入らない審査委員会となっていますが、問題です。また、計画段階から市民参加の保障が不十分です。
 子どもたちの、科学への探究心を育む機会となるこども科学館は、そのものを否定するものではありませんが、厳しい財政状況の元での大型公共施設建設は、市民の十分な理解が必要です。リピーターの確保、維持管理も含めた課題でも、他市の例からも懸念されます。

 最後に、発議第9号「介護サービス質向上委員会設置条例」の制定について申し上げます。
 介護保険制度が発足して5年、この間、高齢者や利用者からいろいろな苦情や相談が寄せられています。党市議団は、こうした市民の要望に応えて、今回の「介護サービス質向上委員会」設置条例を提案したものです。
 保健下水委員会では、「提案の考え方や介護保険を運営する上で重要である」との意見も示されましたが、「相談には市当局が対応している」とか「県の動きを見たい」という、消極的な意見の中で、日本共産党と市民ネット以外の会派が反対して、否決されたのは大変残念です。
 高齢化社会が進行している今日、千葉市の介護保険制度をよりよいものにするために、専門家や市民参加を含めた「サービス向上委員会」の設置は、どうしても必要だということを申し上げ、討論を終わります。