やなぎだ清議員の反対討論

2007.3.8
写真 日本共産党市議会議員団のやなぎだ清です。提案されました議案71件中21議案に反対し、発議1号が不採択になりましたので、討論をおこないます。

 新年度予算は、大変厳しい財政状況の元で編成されたことが、予算審議の随所で明らかにされ、市長は「就任以来最も厳しい予算」と言及しています。
 私どもも、千葉市は厳しい財政危機状態にあって、その改革が急がれていると認識しています。
 改善・改革にあたっては、財政危機の原因を取り除かなければなりません。原因は大きく2点あると思われます。
 原因の1は、政府の構造改革、三位一体改革などによって、国庫支出金などが大幅に減額され、地方交付税が未交付になったことにより、千葉市の影響は、年間約233億円減収したことであります。
 原因の2は、千葉市が大型開発優先の街づくりを進め、大規模プロジェクトに多額の予算を注ぎ込んでいることであります。新年度、わすが4件の大規模プロジェクトに、合計約262億円を投入しています。
 以上2点の財政危機の原因を取り除くために努力することが、財政危機を転換し、市民生活・市民福祉を向上させる予算へ近づけることができると思います。
 よって、次の2点の改革を速やかに行うことが必要です。
 1は、国の地方財政を切り下げる「構造改革」に反対して、地方の税財源確保と真の地方分権を求めていくこと。
 2は、千葉市の大型開発優先の街づくりを大胆に見直して、市民生活優先の予算に組み替えることです。
 そこで、新年度予算の特徴および問題点は何か、少し掘り下げてみますと、政府の構造改革、地方改革などによって、国からの歳入がどの程度減ったのかを見ると、新年度での廃止等は、所得譲与税55億円、減税補てん債18億円、地方特例交付金34億円の合計107億円です。昨年までの三位一体改革による減額の126億円と合わせれば、合計233億円になります。
 千葉市は、政府の構造改革、地方改革などによって、国からの歳入が年間233億円減額されていることになります。それなのに、市長が「必要な改革」だと肯定していることは認められません。

 次に、歳入予算が250億円増額しましたが、その実態についてです。
 1に、市税収入は150億円9%の増ですが、税源委譲によるものなどのほかに、定率減税廃止分が27億円になります。この27億円は増税により負担増となった市民などへ還元すべきです。
 2に、収支不足をカバーするため借金が増大しました。市債・債務負担(一般会計)の合計765億円は、前年比167億円の増額です。
 3に、中央第6関係の新年度市債の合計は145億円、新港横戸町線13億円、この2事業だけで、新年度市債の増額分107億円を大きく上回っています。 
 4に、実質公債費比率は、3か年平均17年度23.0%、18年度決算見込24.
7%、単年度では17年度26.0%、18年度決算見込25.5%で、起債が制限される25%を超えそうな状況です。
 5に、H19度末の借金(市債・債務負担・償還利子含)残高見込みは、1兆3,685億円、市民一人当たり147万円であり、毎年増え続けています。
 以上、大型開発優先が千葉市の借金を増大させて、財政危機を作り出していることは明白です。

 続いて、歳出は250億円増額しましたが、その予算配分の問題についてです。 
 1は、貧困と格差をさらに広げる予算となっています。
 社会的問題である貧困と格差の軽減に、地方自治体はその役割を果たすことが求められています。しかし、新年度予算では、市民税大増税や保険料など負担増に苦しむ市民への対策は皆無です。68歳・69歳の老人医療費助成制度の廃止や生保家庭への入院慰問金廃止など、逆に貧困と格差を広げる予算となっています。
 2は、相変わらず大型開発優先の予算となっています。
 大規模プロジェクト関係4事業、千葉駅西口地区市街地再開発約28億円、中央第6地区市街地再開発約170億円、蘇我特定地区整備約26億円、新港横戸町線整備約38億円、合計約262億円、新年度増額分の250億円を全部使ってしまっています。
 普通建設事業費の730億円中36%が大規模プロジェクト関係4事業で、残りの64%468億円(前年比マイナス10%)で大規模プロジェクト関係4事業以外の全事業を実施することになるため、必要事業が制約されています。 

 次に、款別の歳出で市民生活関連予算が、どの程度削られているかについてです。
 1に、民生費は前年比63億円の増で、そのうち扶助費は27億円です。中央第6開発関係40億円で合計67億円。以上の2件で増額分を上回っているため、これ以外の福祉予算は減っています。
 2に、環境保全費10億円は、5年前の15億円の3分の2に減額です。地球温暖化対策など環境の世紀といわれる事業が削られているのです。
 3に、商工費は前年比62億円の増ですが、その内訳は、中央第6関係21億円、企業立地3億円、金融増額33億円で合計57億円。他の事業の伸はなく、商店街対策などは3億6,000万円しかありません。
 4に、公園整備費の71億円は、4年前の115億円の61%に激減です。これでは、身近な公園整備が進まないのは当然です。
 5に、土木事務所の予算62億円は、H14年度90億円の68.8%で、生活道路や側溝、交通安全施設の整備など市民の切実な要望に応えられていません。
 6に、教育費のうち小中学校費142億円(教育費に占める割合33.1%)は、H17度の173億円(教育費に占める割合45.4%)と比べて減額しています。これでは、少人数学級や学校耐震化などは進みません。
 以上、大型開発に多額の予算を配分したため、市民生活・福祉にかかわる予算とその事業は、大きく削られていることがはっきりしています。それにもかかわらず、市長は「大型開発は将来の街づくりに必要」「雇用の増加と税の涵養に資する」と述べていますが、費用対効果は極めて薄いし、市民生活予算を大幅に削ってまで急ぐことではありません。
 貧困と格差是正について、市長は「公正・公平な社会の実現に向けて努力する」旨の答弁で、質問をかわしていますが、貧困と格差の広がりによって苦しめられている、市民生活の実態を全く把握していないか、把握していても対策を取ろうとしない冷たい姿勢と言えます。
 市民生活への予算が削られたことについては、「市民生活への支障がないように、工夫して効率的に運用していく」などと答えていることは、到底認められるものではありません。
 日本共産党議員団が、ただ今提案した予算組み替えの動議に沿って、市民生活優先の予算に転換することを強く求めます。

 続いて、各部局の問題点について指摘します。
 1は、総務行政についてです。
 指定管理者制度がさらに拡大されていきますが、これまでに移行された施設での、サービスの低下が利用者から指摘されているように、あってはならないことがおきています。それぞれ5年間の契約になっていますが、この間、指定管理者に任せるだけでなく、千葉市の公の施設として、市民の利用しやすい施設にすることが大切です。
 また、団塊世代の大勢の職員の退職を迎える時代になりまして、今年は266人、来年293人、再来年は335人になるとのことですが、再任用制度があるとはいえ、これまでの経験や技術を継承していくことは、重要な課題となっています。系統的に研修などを促進して、市民へのしわよせにならないよう求めます。

 次に、企画行政についてです。
 シティセールスなど新しい施策をすすめようとしていますが、都市間競争のなかで、千葉市を売り込むためのもののようです。もっと市民の要望に根ざした施策をすすめることが重要ではないでしょうか。また、バリアフリー基本構想などは、高齢者や障害者などが参加し、要望が取り入れられた住みやすい地域づくりが大切であり、それらに応える行政を求めておきます。

 次に、財政局です。
 定率減税廃止によって昨年に続いて市民税が増税されます。昨年は、2週間で1万人を超える市民が区役所などへ苦情と説明を求めました。今年は事前の周知を徹底していると答えていますが、広報などで市民に知らせている内容では不十分です。
 市民税が増税される原因は、定率減税廃止や老年者控除廃止、年金の課税最低限引き下げであって、これは自民党・公明党政府が実施した事であり、千葉市には責任がありません。したがって税務当局は、説明を求めた市民に対して、その事実を正確に伝えるべきです。

 次は、市民行政についてです。
 平和行政については、戦後62年が経過する中で、戦争を知らない世代が増加しており、再び戦争への道を歩むことのないように、次の世代に継承していくことは、今日の大切な課題となっています。平和資料集や平和ビデオなどが製作されているようですが、系統的な普及や上映会の開催が待たれています。
 消費生活センターは、今日の世相を反映して相談活動が増大しているようですが、携帯詐欺など、今や手の込んだ詐欺行為がさらに広がっています。市民がそうした被害に遭わないために、相談員が増員されたことは評価するものですが、特に、高齢者などへの相談活動やPRを一層強めることを求めておきます。

 次に、保健福祉行政についてです。
 千葉県後期高齢者医療広域連合では、後期高齢者の保険料は、年金が月1万5千円以上の人は天引きする。滞納すれば資格証明書を発行する。診療報酬は一般とは別立てとなり、高齢者医療が差別化されるなど、高齢者への医療負担をさらに増大するものです。
 生活保護は、貧困と格差が拡大される中で、保護率が平成18年12月で13‰となり、全国でも100万世帯を超えました。今こそ、心の通う保護行政が求められます。「法定外援助」の慰問金が廃止されるなど、生保世帯の生活は深刻です。憲法25条で定められた「健康的で文化的な生活が保障される」ためにも、千葉市は当面援助を継続すべきではないでしょうか。
 国民健康保険条例の一部改正は、賦課限度額を53万円から56万円に引き上げるものであり、また、37年間つづけてきた68歳、69歳の医療費の助成を廃止するものは、国の医療制度改悪に便乗して、市民や高齢者への負担増を強いる条例の廃止は、認めるわけにはいきません。
 母子生活支援施設は、保護者と児童の福祉向上を図ることを目的とした施設であり、母子家庭が増える中で、重要な施設となっています。民間の施設が改築され、定員が40世帯になったので、市の施設を廃止する理由にしていますが、市内の約7,800世帯が母子家庭であり、児童扶養手当の削減やワーキングプアが問題となっている中での廃止は、認められません。
 保育所については、二人目の出産に当っては、保育所への入所が確実でなければ、安心して産むことができませんし、働くこともできません。効果的な少子化対策や女性の社会参画のためにも、コスト優先で民営化するのではなく、公的な保育所の充実を図るべきです。
 乳幼児医療費助成制度は、小学校の卒業まで拡大し、窓口での200円負担はなくすよう求めます。

 次に、環境行政についてです。
 清掃工場の「3工場から2工場体制に」は時代の流れです。それは、地球温暖化防止と同時に費用の節減にもなるものです。ごみ袋の有料化など市民に経済的な負担を求める方向ではなく、ごみの削減の年次ごとの数値目標を決め、全庁あげて市民の協力を得て進めるべきです。

 次に、経済農政についてです。
 蘇我臨海開発では、雇用が予測をうわまわり「2,800人に拡大をされた」としていますが、正規雇用は20%しかありません。市長公約で「現市長だからできた、経済波及効果年間約1,600億円、市の税収効果年間約40億円」と、開発理由を宣伝しておきながら、その費用対効果については一切検証されずに、更に税金を投入するのは問題です。雇用と税収の実態を明らかにすることを強く求めます。

 次に、都市行政についてです。
 花のあふれるまちづくりがこの間強められてきましたが、花作りが市からの押し付けのような状況があり、市民が本当に望む「花のあふれるまち」にはなっていなかったのではないか。トピアリーの製作は終了したようですが、今後、市民の本来の協力が得られる方向で、花のまちづくりがすすむことが必要ではないでしょうか。
 市営住宅の応募倍率は24.6倍となり、毎回多くの市民が市営住宅への入居を希望しています。先の決算審査特別委員会の指摘事項の「市民の住宅需要に対し迅速に対応されたい」ということに、事務手続きの改善に努力する旨の回答がされていますが、これは的外れの答弁で、市営住宅が不足しているから応募倍率が高いわけを認識すべきで、市営住宅を増やすために、空家になっている千葉県職員住宅などの払い下げを受けるなど、市営住宅を増やして市民の要望に応えることを求めます。
 また、入居者は高齢者が38.9%になり、年金受給者が30%近くになっています。家賃についてもそれぞれの入居者に応じた減免制度を生かして納入をすすめることや、火災警報器の設置にあたっては国の積算基準のみに頼らず、取り付け料なども含めて適切な設置料にすることが必要です。
 市内各地にマンション建設がすすむ中で、地域住民との紛争が起き、市議会にも請願や陳情がたびたび提出されています。市は斡旋をすすめてはいますが、開発にともなう法律が改正されて規制が緩和された経過もあり、マンション建設が急増されています。マンション建設によって地域の環境や市民の利益が損なわれないように、市のまちづくり条例が必要です。
 モノレール事業は、利用者を増やすのに何が必要なのかが求められています。混雑を緩和するために車両編成の変更や終電時間の延長などがすすめられていますが、市民が利用しやすくするために、バリアフリーの促進や更なるサービスの改善、乗車料金の引き下げが求められています。
 蘇我スポーツ公園区域内既存施設除去工事請負契約は、先の議会にも同様な工事請負契約が提案されましたが、これは旧川崎製鉄の工場を解体する工事で、本来引き渡す工場側が解体して更地にすべきであり、前回は31.28%で落札されたが、今回は応募した会社は1社のみで、予定価格に近い価格での契約は不自然であり、納得できるものではありません。

 次に、建設行政についてです。
 椿森陸橋交差点の歩行者横断道路に監視カメラを設置することについては、管理責任、肖像権、プライバシー権侵害が問題となります。いたずらに不安をあおり、監視社会になることは認められません。
 段差の解消、側溝の改良、点字ブロックの敷設など、生活道路改善の予算を大幅に減額し、市民の要望に応えられないのは「安全・安心の街づくり」に逆行しています。経済波及効果の面からも増額することを求めます。

 次に、下水道行政についてです。
 下水道の普及率が97%になろうとしていますが、まだ接続しない世帯が12,500世帯あるとのことですが、下水道事業の効率化のためにも接続率を高めるのは重要な施策です。
 浸水対策は、地球温暖化が懸念されている今日、これまでの10年に1回あるかないかの50ミリ対応は見直すことが必要になっており、各地の被害実態に見合う対策を急ぐべきです。

 次に、水道行政についてです。
 県内水道経営検討委員会の提言が出されましたが、市民にとって、水は命の支えであり、市民生活や営業に欠かせないものです。
 県内水道の統合問題や水道事業のあり方については、関係者が十分に論議に参加し、すべての情報を公開すること。市民の自由な論議を保障することが求められています。

 次に、教育行政についてです。
 全国一斉学力テストは、子どもの学力向上のためではなく、学校や子どもどうしを競争させ、序列化をもたらすものです。さらに、受験産業と国が、全国の子どもの個人情報を把握することになる重大な問題もあり、「特段問題がない」とする教育委員会の態度は認められません。
 中高一貫教育は、一部のエリートを育成するための教育となり、教育格差を助長する問題があります。30人学級の実現などで、すべての子どもに対し、行き届いた教育環境を保障すべきです。格差と貧困の広がりから教育格差も生じています。その中で、就学援助は大切な制度です。制度が利用しやすくなるよう、収入基準を知らせることを求めましたが、収入基準は提示しないとの答弁は、就学援助を受けにくくするものであり、このことは、子どもの等しく教育を受ける権利への侵害となるものです。
 教師の残業時間については、「自宅に持ち帰るなどがあるので、把握しにくい」とされていますが、残業時間を把握しないで、教師の数が適正か否かの判断は不可能ではないでしょうか。行き届いた教育を進めるためにも、教師の残業時間を把握するよう求めます。

 次に、発議第1号・千葉市下水道あり方検討委員会設置条例が、否決されたことについてです。
 今日、下水道事業の企業債残高は2,730億円にものぼり、もはや市民参加で納得できる事業展開を図るべき時期に来ています。市では、行政側の一方的な計画である「下水道事業の中間経営計画」を進めていますが、他市では、そのあり方について、すでに3市が条例を7市が要綱を持ち、学識経験者や市民が参加した審議会等を設けています。自民党、新政五月会、公明党は「現状のままで十分」とする反対意見がありましたが、市民参加はどの分野でも求められているものであり、より一層の健全化効率化を進めるために、必須であることを強く指摘したいと思います。
 
 なお、政務調査費の交付に関する条例の改正についての請願が12月議会に続いて継続審査となり、事実上廃案になったことは遺憾であります。東京の目黒区や品川区議会の政務調査費に不正使用が大きな問題になって、不正分を返還する事件が発生したり、同じようなことが広島市など、全国各地で問題になっています。本市議会も市民団体から出されたこの請願を真摯に受け止め、領収書の添付など、直ちに対応すべきではないでしょうか。
 
 以上で討論を終わります。
 
 最後に、一言ご挨拶をさせていただきます。
 私は、長い間お世話になりましたが、今期をもちまして、議員を引退することになりました。先輩、同僚議員のみなさん、市執行部のみなさんをはじめ、職員のみなさんには長い間、大変お世話になりました。ありがとうございます。
 今後は、一市民として、これまでの経験を生かして市政に参加させていただきます。本当にありがとうございました。