中村きみえ議員の反対討論

2009.7.16

写真 会派を代表して、議案第62号、65号に反対し、議案63号・平成21年度千葉市一般会計補正予算について意見を申し上げ、発議10号・千葉市父子家庭等支援手当支給条例の制定についてが否決され、請願第1号・千葉市社会福祉協議会の「居宅介護等事業」の存続を求める請願が不採択となったことについて討論を行います。

議案第62号・国保会計補正予算の専決処分について

 まず、議案第62号・平成21年度千葉市国民健康保険事業特別会計補正予算の専決処分についてです。
 国保の会計で18億4,914万円の収支不足が生じ、08年度の収支不足に繰り上げ充用するとのことですが、議案質疑でも明らかになったように国・県の負担金は、5年間の国庫支出金、26億1,500万円も削減、08年度は国庫負担金が予算に比べ15億2,700万円減っていることが大きな要因です。
 1984年から国は国庫負担割合を引き下げ続けてきたことが、国民健康保険事業が困難になっている最大の問題なのです。6月24日の代表者会議において副市長が、この議案について「制度疲労を起こしている」と発言しましたが、主な要因はここにあり、その結果、年々国保料が引き上げられてきたのです。
 また、保険料が高くて納められない人が増加し、そのため収入が予定より見込めなかったとされています。
 ところが、千葉市では私どもが繰り返し、保険料が高くて納められず滞納者の約7割は年間所得が200万円未満です。払える保険料に切り替えなければならないことが明らかになっていますが、千葉市がやろうとしていることは、来年度から保険料を値上げし、徴収対策を強化するという方針ではないですか。
 現時点で、保険証の取り上げ率が政令市でトップでありながら、保険証の取り上げが続くのでは、ますます医療にかかれなくなる人を増やすだけです。
 国に政令市として財源を求めていくと言うだけでは取り組み方としては弱いと思います。市長自らこの問題では市民の命と健康を守り、国保会計の健全化のために率先して求めていくべきではないでしょうか。

議案65号・地区計画区域内の建築物制限条例の一部改正について

 議案65号・千葉市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部改正についてです。蘇我臨海地区の地区計画で都市計画決定されたC2ゾーンを定めるものですが、今後はこの地域でどの様なまちづくりを進めていくのか、将来どんな事が予想され、その為に何をすべきかビジョンが見えてきません。人口規模は、1万1千人といいますが、人口が増えれば、当然保育所や学校など将来に備えて対応しなければならない課題についていつ頃、居住地として利用できるかはわからないとして、何も考えられておりません。
 「副都心」という位置づけで、高さ制限もなく土地の持ち主であるJFEの意向でこの地域のまちづくりが進められてしまうのです。
 埋め立て地域を千葉市がただより安く売り渡し、今度は、土地の価値があがったものをJFEの意向で進め、市民からの要望、声は、9年前の再編整備懇談会で求められたのみです。これで市民の声は反映されたとはいえません。
 蘇我臨海開発総事業費1,601億円のうち、すでに666億円の事業費が費やされており、国・県・市が415億円も負担していることから考えても市としてこの地域でのまちづくりに市民の声をしっかりと取り入れるべきではないでしょうか。
 土壌については六価クロムを除去しても、現在の土壌汚染対策法では土地周辺への影響がどうなるのか考慮はされず、土壌汚染被害を未然に防止できるものにはなっていません。なにより、この間、JFEの水質汚濁防止法違反事件やJFE建材習志野工場での土壌・地下水汚染問題は、市民に多大なショックを与えました。企業の隠蔽体質など、企業の社会的責任が厳しく問われています。かつては喘息患者が多く発症し、川鉄公害裁判が行われた経過があります。住宅地として果たして本当に安全なのか、疑問が払拭できません。環境面でも万全の対策が講じられなければ住まいとしてふさわしいとは言えないのではないでしょうか。もっと地域の声を聞くべきです。
 この議案に、自民党から、「学校や福祉施設はどうなのか」などの疑問は出されたものの、日本共産党以外のすべての賛成で可決された事は残念です。

議案63号補正予算について

 議案63号補正予算についてですが、経済危機対策臨時交付金では内閣府から活用事例として保育園等の冷房設置、学校トイレの洋式化、危険な公園遊具の更新、学校への机、いす、給食用漆器など地元産の購入など、ソフト事業でもプレミアム商品券や準要保護児童生徒への就学援助拡充、幼稚園就園負担軽減助成の拡充なども示されています。
 貧困と格差が拡大しているこの時に、真に地域経済活性化につながる施策を取り込むことが求められています。事業を選択する上で、自治体の主体性が問われているのです。
 特に自治体独自で雇用拡大に取り組むべきですが、千葉市では雇用が68人ほどです。同じ政令市でも京都市では310人の雇用と比べても不十分ではないでしょうか。毎日約600人、1か月1万4千人もの方が職探しに必死になっている現状を考えるとこの雇用対策はあまりにも実態とかけ離れているのと指摘せざるを得ません。
 福岡市の学校体育館の耐震化工事や保育所緊急整備、横浜市での介護職員の定着を促進する事業、名古屋市の高校入学準備金の貸与者数の拡大など地元の地域経済に直接反映できるような事業をもっと取り入れるべきです。
 「電子黒板よりも学校の先生を増やして欲しい」の声にこたえ、安全な学校のための耐震化補強を今すぐ取り組むことを求めておきます。
 文部科学省ではスクールニューディール構想の推進に関するお願いで「スクールニューディール構想など経済危機対策の推進に当たっては、地域の中小企業の受注機会の増大に努めるとともに、迅速かつ柔軟な発注を行い、地域の活性化に資するよう、よろしくお願いいたします。」とこう記述されています。
 しかし、大手電機メーカーばかりに受注されるような使い方ではこうした要望にこたえていないことになる矛盾があることを指摘しておきます。

発議10号・千葉市父子家庭等支援手当支給条例の制定について

 次に発議10号・千葉市父子家庭等支援手当支給条例の制定についてです。
 子どもを一人で育てる大変さは母子家庭も父子家庭も変わりません。父子家庭に児童扶養手当が支給されないことに合理的理由はありません。
 国でも児童扶養手当法を改正して、父子家庭も支給対象とする動きはありますが、成立にはまだ時間を要するようです。
 国連子ども権利条約では父母及び法定保護者が児童の養育について責任の遂行にあたり、これらのものに対して適切な援助を与えることを締約国の政府に求めています。このような世界の流れに逆行してはなりません。
 父子家庭も安心して子育てできるには、経済的な支援が欠かせません。「国の動向を見守りたい」とする対応よりも、いま生活に困っている父子家庭にこそ一刻も早く支援策を講ずる必要性を訴えましたが、自民・公明が反対し否決となったのは極めて残念です。

請願第1号・社会福祉協議会の居宅介護等事業存続を求める請願について

 最後に、請願第1号・千葉市社会福祉協議会の居宅介護等事業の存続を求める請願について申し上げます。
 関係者が必死に集めた2,322名の署名が提出された請願です。議会や常任委員会に車椅子や白い杖で傍聴された方々を思うと胸が痛みます。
 高齢者や障害者にとって、千葉市社協のヘルパー派遣は、きめ細かなサービスが提供され、深い信頼関係のもとで行なわれていた事業でした。特に、障害のある方の受入は報酬単価が低いため、採算重視の民間ではできないサービスを、公的役割として担ってきたことが高く評価されていただけに、「採算性」「経営が厳しい」との理由で撤退することは、到底認められません。
 なんの根拠もなく「民間へ移行できる」とか「やむを得ない」などと請願に反対した自民党・公明党そして民主党の対応は、「高齢者・障害者の深刻で切実な願いにそむくもの」であることを、厳しく指摘しておきます。