野本信正議員の意見書に対する反対討論

2009.12.16

 日本共産党市議団を代表して発議23号および24号への反対討論を行います。

 はじめに、発議24号「悉皆(しっかい)方式による「全国学力・学習状況調査」の継続を求める意見書」についてです。
 今年4月に3回目の「全国いっせい学力テスト」が実施され、その結果が8月27日に公表されました。
 公表されたことで、大阪府のように「順位を上げろ」「点数が低い」などと、学校に競争を煽るような問題が起こっています。
 学力テストの平均点を上げることが「学力向上」だと短絡的に受け止められ、それが教育の全てかのような風潮を生んでいるのです。
 文科省は「いっせいテスト」の理由を「学習指導の改善に役立てるため」と説明していましたが、具体的な改善策は見られず、学力テスト前に類似問題を繰り返し、「事前テスト」「予備テスト」をやらせ、教育内容が学力テスト対策に偏っていることが問題となっています。
 貧困と格差が広がり、子どもと教育に大きな影響を与えているもとで、58億円もの税金を使って、競争を激化させる「全国学力・学習状況調査」はもうやめて、貴重な税金は教育の充実のためにこそ使うるべきです。
 よって、「百害あって一利なし」である「全国学力・学習状況調査」の継続を求める意見書に反対いたします。

 次に、発議23号「新たな防衛計画の大綱の速やかな策定を求める意見書」について申し上げます。
 平成16年に策定された現在の防衛計画の大綱は、侵略を抑止するという戦後日本の安全保障政策を大転換し、「脅威の防止」を口実に自衛隊の海外派兵を「本来任務」としたことが、最大の特徴であります。「世界の中の日米同盟」路線のもと、地球規模での日米間の役割分担を持ち出し、米軍と自衛隊の一体化をさらに推進するものです。また大綱では、アメリカの先制攻撃論に沿い、「テロと大量破壊兵器」の二つの脅威に備える軍事力が必要だと位置付けました。
 新大綱は、日本への「本格的な侵略事態生起の可能性は低下している」と強調し、今後の安全保障の目標として、「わが国に直接脅威が及ぶことの防止」と「国際的な安全保障環境を改善し、わが国に脅威が及ばないようにする」ことを2大目標に掲げています。そして、日本にとどまって侵略を防ぐのではなく、海外に出て「新たな脅威」をおさえること基本としたものです。
 その際、日米安保体制が新たな脅威への対応でも、「重要な役割を果たしている」と強調。海外への自衛隊派兵を念頭に「日米の役割分担」をすすめるとしたものです。
 新大綱は、こうした「脅威防止」のために、自衛隊を海外派兵型に転換する、「多機能弾力的防衛力」を打ち出しました。また米国の専制攻撃戦略を支える「ミサイル防衛システム」の体制確立を大綱上、初めて位置付けました。
 こういう中で、新中防では、海外へ「迅速に部隊を派遣」するための新編、待機態勢の拡充を明記。陸上自衛隊は、敵基地攻撃能力の保有につながる戦闘機搭載型電子妨害装置の開発に莫大な予算を使っています。
 以上のような新たな防衛計画の大綱にそって進められてきた日本の防衛政策は、「海賊対処法」の強行で、任務遂行のため武器使用を認めたことや、在日米軍再編でグアムへの基地移転費用の分担が押しつけられたり、沖縄県民の悲願を顧みず、普天間基地の移転先を名護に絶対視するなど、危険な方向が強められています。
 今回、自民党市議団が提出した意見書は、自民党政権当時、現在の「防衛計画の大綱」の改定を年末に行う予定だったのに、鳩山政権が平成22年まで先送りするのを止めて、急ぎ策定することを求めています。そこで、自民党政権当時の今年8月4日、「安全保障と防衛力に関する懇談会」が、当時の麻生首相に提出した「防衛計画大綱」の改定に向けての報告書を開いてみました。
 報告書は、これからはより積極的に行動する時期だと、軍事的役割の拡大を求め「専守防衛」や、憲法に沿った平和原則「非核3原則」などを「検証する必要がある」と、見直しの動き示唆しています。これは、日米軍事同盟を絶対視した異常で危険な提言であり、絶対認められないものです。
 また報告書は、日米同盟で日本が「主体的」役割を果たすことを強調しています。これは米国からいわれる前に日本が米軍戦略に積極的に参加し、積極的な軍事的役割を果たすこと、米国と共にイラク戦争を始めたイギリスをモデルにして、日本が危険な軍事的役割を買って出ようとしていると、指摘されているところです。
 次に見過ごせないのは、「通常兵器を拡大抑止の信頼性が低下することがないように留意する」と明記していることです。「拡大抑止」とは核兵器・通常兵器の戦力で相手をせんめつするという、当時の、米国ブッシュ政権の核攻撃政策であり、H19年5月の日米合意文書に明記されています。今回の報告書は、さらに踏み込んで、日本が進んで「拡大抑止」を後押しする体制作りを目指しています。
 具体的には、日本への核兵器持ち込みを認める、「日米核密約」の維持や核攻撃を任務とする米軍機と自衛隊の合同訓練の強化も「拡大抑止」の後押しであります。
 金食い虫の、弾道ミサイル防衛システムは、「拡大抑止」を支える中核です。しかも、米国に向かうミサイルを日本が迎撃することや、公海にいるアメリカ艦船を守るといい、そのために憲法解釈の変更も要求しています。
 日本をアメリカの核攻撃態勢に組み入れるため、今までの政府見解でも憲法違反の集団自衛権の行使にふみだそうというのは、日本の平和も安全も考えない異常な事態という他ありません。このような、報告書の目指す、新たな防衛計画の大綱の速やかな策定を、平和を願う市民は望んでいません。
 報告書が、日米軍事同盟強化の理由にしているのは、世界の「脅威の拡散」です。しかし事実はイラク戦争の失敗を契機に米国の一国覇権主義は破綻し、代わって世界の平和の流れは、大きく広がっています。この平和の流れを見ずに安全保障を論ずることはできません。軍事力の行使、暴力の連鎖で、平和は実現しません。
 テロに軍事力で対応しようとすれば、かえってテロの温床を拡大する。大量破壊兵器問題でも、話し合いによる解決ではなく、戦争という手段を用いたことが、何をもたらすのかが、イラクでは一番ひどいかたちで証明されています。
 日本が国際社会の中で果たす役割は、「貧困や飢餓、環境問題など、世界で解決が求められる問題の、圧倒的多数は、非軍事の分野であります。非軍事の分野で日本がどんな役割を果たすのかが求められています。日本が憲法9条を持つ国として、国際的な進歩や平和に貢献する方法はたくさんあります。これこそが日本の果たす国際貢献であります。
 自然災害の支援に必要に応じて自衛隊が協力するのは当たり前です。意見書は国民保護法による自衛隊と自治体の活動と、自治体の有機的連携のためにも新大綱の策定は急務だとしていますが、国民保護法は有事の時、自衛隊がアメリカ軍に協力して出動する際に、自治体も住民も後方支援させるために、日頃から訓練を要求しているものです。有事とは日本の防衛に限らず、地球上何処でもアメリカ軍が戦争体制にはいれば、それが有事になって武力攻撃事態法が発動され、国民保護計画が実行されます。
 憲法9条と矛盾し、自治体も住民も巻き込まれる、国民保護計画を推進するものです。このような新大綱の改定は、平和を求める市民の願に反します。
 千葉市国民保護計画を凍結して、市民生活の安全安心を保障することこそ求められています。
 以上申し上げてきましたが、憲法9条を生かした自主・自立外交への転換こそ重要で、市民の多くはそれを強く願っています。
 千葉市民と日本、そして世界の平和は、皆の願いであります。争い事の解決を戦争に求めても暴力の連鎖で解決はできません。憲法9条の示す粘り強い話し合い、 外交渉で解決することが21世紀の流れとなりつつあります。
 また、日本は不況と財政危機で国民生活も地方自治体も深刻な事態となっています。
 こんな時に、軍備増強につながる新たな防衛計画の大綱の策定など中止して、軍事費を大幅に削り、国民生活と地方自治体支援に回すべきであります。
 以上で反対討論を終わります。