佐々木ゆうき議員の決算不認定討論

2010.9.17

写真 日本共産党市議団の佐々木ゆうきです。会派を代表して、決算議案19件中7件に不認定の立場から討論を行います。
 2009度決算は前市長が予算を策定し、途中から熊谷市長が執行したものです。決算の特徴は、政令市ワースト1の財政危機という深刻な事態が進んでいることであります。健全化判断比率では、実質公債費比率ワースト1、将来負担比率ワースト1に加え、京都に続いて千葉市だけが、連結実質赤字比率0.44%となりました。
 深刻な財政危機の原因は、全国自治体共通の三位一体改革に伴う国庫支出金や地方交付税の大幅削減が千葉市にも重くのしかかったと同時に、千葉市独自には市長も認めているところの「政令市移行にともなう都市基盤整備」を進めてきたことであります。その中でも大型開発、財政局資料で示している大規模プロジェクト5事業、蘇我特定地区整備、千葉中央港地区土地区画整理、中央第6地区市街地再開発、千葉駅西口市街地再開発、新港横戸町線は、莫大な投資と借金を重ねてきました。
 5事業の09年度決算額合計約70億円は、普通建設費388億円に占める比率が13.3%で、実質公債費比率への影響は3ヵ年平均で1.8ポイントとなっています。
 また大規模プロジェクト5事業をはじめ千葉市は身の丈を上回る大型開発を進めてきた過程で、用地買収を行ってきた土地開発公社の問題点は重大です。公社の保有土地は、99年度の31万1,402平方メートルのうち、長期保有土地いわゆる塩漬け土地が、66%簿価314億円余りで、買収した用地の中には決算に付された弁天公共用地のように目的が不明であったり、初めから使い道のない土地など情実的な買収の色が濃いなど多くの問題があります。
 市は破綻した土地開発公社の整理を進めるため、2010年度推定面積4万6,554平方メートル、簿価132億円余りと示しています。
 整理すれば、この11年間に30万2,258平方メートル、182億円の買い戻しをしましたが、その中身は、弁天公共用地をはじめとした使い道のない土地を税金で買い戻しをして貴重な市財政を持ち出しています。
 さらに土地開発公社を解散するのには債権放棄が必要なため、第3セクター改革推進債の発行を示唆しているため、残りの債権132億円余りと利息の新たな借金が増え、実質公債費比率にも影響すること。さらに使い道のない土地を抱えて、千葉市の財政危機を一層深刻にするものです。
 以上、大規模プロジェクト5事業をはじめとした大型開発の見直しを一貫して求めた我が党の指摘を無視し、ズサンとも言える土地開発公社による用地買収を続けてきたことなどが、千葉市財政を政令市ワースト1の深刻な財政危機にした大きな原因であります。09年度の決算で一層明らかになった原因に深い反省と教訓を学ぶことが財政危機打開の道を開くものであります。熊谷市長が引き続き蘇我臨海開発や千葉駅西口再開発をすすめ、数年間に多額の財政支出を行うことは、市民の利益に反するのですから、大胆な見直しをするよう求めるものであります。

 次に、財政健全化の取り組みと事務事業見直しについてであります。熊谷市長が行った外部有識者による事業仕分けのヒヤリングは、長い間市民に定着してきた事務事業を大胆に見直すことの結論を出し、市長はそれに基づいて新年度予算で52億円をカットしました。主な事業では、難病見舞金カット、マッサージ券の削減をはじめ市民サービス120項目と、国保料など公共料金値上げで約31億7,000万円の削減を強行しました。
 私どもは、外部委員が新鮮な目で事業評価することは必要と思いますが、行政がそのまま取り入れることは余りにも乱暴であります。それぞれの事業には作られた理由や経過と効果があり、利用者や市民の声も聞いて見直しをすることは当然のことであります。その手続きをしないまま切り捨てる熊谷市長のやり方は、市民理解を得られないし、民主主義の手続きからみても問題があります。今年の第1回定例会では、関係市民や団体からも批判が相次ぎ、千葉市議会で初めて予算が否決されたわけです。
 財政健全化は厳しい仕事であり多くの困難がありますが、「予算がないから市民サービスを削る」という手法には知恵も工夫も感じられません。長引く不況や貧困と格差の拡大で苦しんでいる市民生活を守り、市民サービスを維持しながら財政再建に取り組むことを強く要求しておきます。
 その中で福祉型公共事業の推進を求めたところ市長は、「特別養護老人ホームの整備や公共施設の耐震化など地域経済の活性化への投資をする公共事業は、重点的に配分して参ります」と答えました。福祉の維持向上と雇用の拡大、地域経済の活性化につながる福祉型公共事業の促進が、いま千葉市に最も求められていることを重ねて明らかにしておきます。
 民生費中、高齢者福祉費の削減が、高齢者の安全安心を大きく後退させていることについてであります。高齢者福祉費の09年度決算額は約36億円で、5年前の04年度約57億円に比べて約20億円が削減されています。その結果、老人医療費助成の廃止、敬老祝い金と乗車券の廃止、乳酸菌飲料配布による安否確認廃止、要介護者へのおむつ支給事業の縮減など高齢者福祉が大幅に後退して、高齢者に冷たい市政となっています。このことがいま社会問題となっている高齢者の行方不明解決にマイナス要因となっています。
 過去には敬老の日に合わせて、敬老祝い金もしくは乗車券を届けることによって、喜んで頂き、また、乳酸菌飲料配布によって1週間に1〜2回は安否確認ができました。高齢者に喜ばれていた各種事業がありました。その千葉市を取り戻すことが求められていると思います。

 次に、各局の指摘事項を申し上げます。
 最初に、財政についてです。
 公契約についてですが、公契約条例の制定を求める質問に対する答弁は「国の法制化の動向を見ていく」との答弁から一歩も前へ出ないことは残念です。公共事業が激減し低入札価格の落札が多くなり、その結果下請価格や労務賃金にしわよせされているし、品質の補償も懸念されています。また市有施設や駐車場を管理する労務賃金が年収200万円以下のワーキングプアの状態にあると報告されています。各会派からも要望が出された公契約条例の制定を千葉市が率先して実現することを求めるものです。
 また官公需の発注は地元業者最優先を貫き、小規模工事発注制度制定を急ぎ町場の業者の仕事確保を進めるよう求めます。

 次に、総務行政についてです。
 千葉国体の安全のため開会式に予定されているブルーインパルスの飛行中止に市長が努力することを求めましたが、「千葉県に伝えた。県の動向を注視していく」の答弁は遺憾であります。競技参加者と市民の安全のため熊谷市長は飛行行中止のため全力を尽くすべきであります。

 次に総合政策行政についてです。
 テレビの地上波デジタル対策について、低所得者への無償チューナー配布の対象世帯拡大を国に求める質問に「国の動向を注視する」との答弁でした。情報通信審議会からの答申「行政の果たすべき役割」をふまえ、現状ではテレビ難民が多数出てしまう状況を認識して、2011年 7月移行の延期を国に求めるべきであります。
 指定管理者制度について、来年度104施設の大規模な契約更新にあたっては、市民サービスを優先し、市民参加・情報公開・説明責任を徹底すること、選定委員会には、住民代表を加えることを求めます。また現在行われている指定管理者の市民サービスの実態を正確に評価するため、指定管理者評価シートやアンケートの活用も必要なことですが、現場を直接見て利用者及び職員の声も直接聞くべきであります。
 次に、外郭団体が指定管理者となっている施設は非公募として、プロパー職員の雇用を守ることを改めて要求します。また働いている職員の待遇を正確に把握して妥当な賃金の支払いが行われるよう指導することです。
 自民党の議員からは、「安ければよいという契約では貧困ビジネスになり、大企業ばかり仕事を取ることになる」「外郭団体も仕事を失うことになる」と発言があったように広く議会から指摘されていることを、重く受け止めるよう求めます。

 次に、市民行政についてです
 コミュニティセンターの管理・運営についてです。コミュニティセンターの有料化が進められようとしています。それに伴い、利用については2時間刻みで予約する提案がされています。これは、利用する団体やサークルの利用実態に即していないものであり、3時間の利用では2コマ分を取らなければならず、4時間分の利用料を払うことになります。団体・サークルの利用状況を把握し、利用しやすいように改善をするべきです。

 次に、保健福祉行政についてです。
 介護施設の整備についてですが、介護保険が施行され10年が経ちます。介護保険料や利用者負担は重い負担となっており、市内の特別養護老人ホーム待機者は、7月1日現在で2,017人となっています。高齢化社会を迎えるにあたり、特別養護老人ホームなどの介護施設の整備を急ぐべきです。また、ホテルコストと食事代で、月額14万円の負担となります。経済的に負担が厳しい低所得者への負担軽減を図るよう求めておきます。
 国民健康保険事業特別会計についてですが、国保法が改正された84年当時に比べ、市民一人当たりの保険料負担は2倍以上です。所得の1割を超える保険料はもう限界です。国庫負担の削減で、自治体の国保会計は「制度疲労を起こしている」と言われています。これまで、国保会計への繰り出しを行なっていましたが、09年度初めて繰り出しを行なわなかったことは、今後、ますます国保会計を厳しくものであり、遺憾であります。国庫負担を引き上げるよう市として求めるべきであり、市民の命と健康を守るため、一般会計からの繰り入れを増やし、保険料を引き下げるべきです。
 無料低額宿泊施設についてですが、生活困難者の自立を支援するどころか、生活保護制度を食い物にしている状況があります。国に対して法的整備をするよう強く求めるべきです。また多忙化するケースワーカーが、訪問・調査や受給者からの相談にきめ細かく対応できるよう、国が示す配置基準までケースワーカーを増員するよう求めます。

 次に、こども未来行政についてです。
 こども未来行政は次代を担う子どもたちの健やかな成長と幸せのため、3局にまたがっていた行政を一元化し総合的に取り組むものと説明しています。今議会では代表質疑ではすべての会派が、決算分科会、一般質問を通じて合計16人の議員が50項目の質問をしましたが、子どもの貧困、保育所、子どもルーム、児童相談所、幼稚園、医療費の助成、児童虐待、成人式など多岐にわたる質問があったように、こども未来行政は注目され期待されています。それに相応しい予算と体制を整えることを求めます。
 児童相談所の相談内容と件数は、2000年度の合計3,004件のうち虐待128件に対して、09年度の合計3,510件のうち虐待360件で、中でも心理的虐待が増加していると報告されました。この結果は、9年間で相談件数が500件、虐待が2.8倍の232件も増えています。
 対応する38人の職員は昼夜にわたっての激務であり、児童福祉司1人あたりの担当は206ケースで、全国平均107ケースの2倍にもなっています。絶対的な人員不足の中で職員の増員や勤務状態の改善、ストレスの中で苦しみメンタルな面でくじけそうな職員を支えるスーパーバイザーの増員が急がれています。市は区役所での相談も行い対応を強めていますが、児童相談所が体制整備を行って、一人親家庭や経済的困難など虐待のリスクを抱える子育て世帯への支援強化を求めます。

 次に環境行政についてです。
 ごみの減量の問題では、昨年10月から可燃ごみの収集回数を3回から2回へ減らしました。また、来年度から新たに排出ルールを守らない者への過料を科すことになります。減量や分別などのごみ問題は、ごみを排出する当事者である市民の理解がなければ進みません。また、排出抑制のためには「ごみの発生しにくい社会」に向けた拡大生産者責任を企業に徹底することも必要です。
 新港清掃工場のスーパーごみ発電は、約20億円もかけて導入しました。08年度6,700万円の赤字、09年度は6,600万円の赤字となっています。2年連続で赤字となったことは重要な問題と捉えなければなりません。ガスを燃やして売電することは環境に反しています。スーパーごみ発電については、中止をするべきです。
 高齢者の見守りという観点から、粗大ごみだけでなく、家庭ごみについても、保健福祉局と連携して、ごみの収集体制を構築するよう求めておきます。
 羽田空港再拡張問題については、この10月からD滑走路が供用開始となることから、飛行ルートの変更がされます。再拡張に伴う騒音問題への対策など、市民の生活への不安に応えるために対策を求めるものです。

 次に、経済農政についてです。
 経済行政について、商工費決算は、制度融資の貸出枠が伸びています。一方、街の商店数は2002年6,093軒から、2007年には5,476軒へと617軒が減少しています。また、7年前に122あった商店街の数は、94に減っているなど軒並み苦戦をしています。
 市は商店街活性化対策事業に取り組んでいますが、決算額は2,807万円で、商工費総額の0.09%しかなく、一商店あたり5,126円です。分科会で一商店あたりの年間納税額を質問したら150万円との回答でしたが、もっと魅力ある制度をつくり、納税額に見合った予算措置をしないと商店の衰退は止められません。
 商店街街路灯電気代補助金50%を防犯街灯並みに90%への引き上げを求めていますが、分科会では自民党の議員からも引き上げが要求されたことにも鑑み、実現を強く求めます。
 農政についてです。
 千葉市農業は都市近郊農業の利点を生かして新鮮で安心な農産物を供給し、直売や地産地消の役割を担っています。しかし農水省の発表によれば農業人口は05年比で減少率22.4%、75万人も減少しました。この20年間で半分になってしまい、平均年齢は65.8歳です。千葉市の決算も同様の数値であり、今や農業は存亡の危機を迎えているといっても過言ではありません。
 加えて米の価格は暴落し、畑の野菜は干ばつ被害で、例年の50%以下の減収と報告されました。市は緊急の対策として、国に余剰米の買い上げを要求し、干ばつ被害を救済するあらゆる手立てを行うべきです。そして農業者の声をよく聞いて、限られた予算の有効な活用と配置された職員の力を結集して千葉市農政の存続と活性化を図ることを真剣に取り組むことを求めます。

 次に、都市行政についてです。
 千葉駅西口再開発事業についてですが、深刻な財政難に陥った原因の一つであり、現事業計画では、2011年度17億3,700万円、2012年度74億4,000万円、2013年度77億3,800万円で、4年間の合計が172億4千万円もの多額の事業費を注ぎこもうとしています。西口再開発全体の損失額は、これまで377億円にものぼります。
 市民生活が厳しいときに、これだけの事業費を投入しなければならない理由はありません。当分の間凍結をして、対応すべきであります。
 市営住宅についてです。09年度の募集戸数272戸に対して、応募者は6,519人です。08年度に続き23.9倍という高い倍率です。経済・雇用状況の悪化により、申し込んでも入居できない希望者が多いことが明らかになっています。絶対数が少ないのです。建て替えとともに住戸数を早急に増やし、入居者の希望に応えるべきです。

 次に、建設行政についてです。
 集中豪雨・ゲリラ豪雨などへの対策についてです。先日の台風9号から変化した熱帯低気圧により、市内に記録的な大雨を降らして、特に稲毛区では、草野水路が溢れ、床上浸水を引き起こすという被害が出ました。引っ越しを余儀なくされた方もいます。こうした大雨に対応するために、狭隘な水路等の改善を含めた水防計画の見直しを図るべきです。
 市民生活に身近な道路の整備・改善や、橋梁の維持管理は、市民の安全のために必要であり、特に土木事務所の予算確保が求められます。09年度は前年度よりも5億円余り予算が減らされましたが、2010年度予算では増額となりました。しかし、市民から寄せられる要望に応えられるものとなっていません。市内の道路や橋梁の維持管理に必要な予算を確保するよう求めます。
 国道357号線・道路直轄事業負担金について、09年度決算では、26億3千万円です。国が管理する国道の整備に対する直轄事業負担金の中止をすることは時代の流れであり、国が維持管理費などの負担を自治体に押しつけることについては、ただちにやめるよう求めるべきであります。

 次に、水道行政についてです。
 09年度決算で房総導水路建設事業負担金が5億6,500万円、霞ヶ浦開発事業負担金が5億6,300万円、合計11億2,800万円となりました。水道事業というのは、市民の命にかかわる重要な事業ではあります。しかし、水需要計画が当初の計画と乖離しており、ダムを水源とした企業団方式や都道府県水道への統合を進めた結果であり、各自治体に過大な受水量が押し付けられたことに原因があります。両負担金の総額は約187億円であり、将来需要を含めた見直しが必要です。千葉市の見通しある水道事業の確立が急務です。

 次に、教育行政についてです。
 学校適正配置は12クラスの適正配置基準で進められていますが、文部科学省の教職員定数改善計画は、1クラスの人数を小学校1〜2年生は30人、3年生以上では35人に見直す方針です。教育委員会は、新しい基準で試算するとH28年度に小規模となる小学校は6校減、中学校も6校減と答えています。そして地元代表協議会が12クラス以下の選択をした場合、市は「合意された結果を尊重します」とも答えました。この際、教育委員会側から地元代表協議会および関係する学校の父母に対して、「12クラス以下の選択もある」ことを知らせるべきであります。
 そして全小中学校の少人数学級を促進して行き届いた教育へ前進することを求めておきます。
 就学援助の受給率の決算は、従来と変化がありません。長引く不況と収入減、貧困と格差が拡大する中で、親の収入の多少によって教育を受ける権利が損なわれることがあってはなりません。就学援助の周知と利用しやすい制度への改善を図り、先進自治体に近づくことを望みます。
 普通教室へのエアコンの設置についてですが、先の一般質問で、わが会派のもりた真弓議員が、子どもたちの学ぶ環境の改善について求めましたが、エアコンの設置は校舎等の耐震化を最優先に推進しているから設置は考えていないとのことでした。広島市では耐震改修の際に、あわせてエアコンの設置を位置づけて、コスト縮減を図り計画的に設置を行なっています。子どもの命にかかわる問題ですから、千葉市でも小中学校の普通教室のエアコン設置に取り組むよう強く求めるものです。
 以上で、討論を終わります。