中村きみえ議員の反対討論

写真 議案第190号千葉市病院事業の設置等に関する条例の一部改正について、議案第194号千葉市路上喫煙等及び空き缶等の散乱の防止に関する条例の制定について、議案第200号千葉市土地開発公社の解散について反対し、発議第33号千葉市住宅リフォーム補助金交付条例の制定について否決されたこと、請願第19号子どもの通院医療費無料化の年齢引き上げを求める請願について不採択されたことに対して討論を行います。

 議案第190号千葉市病院事業の設置等に関する条例の一部改正についてです。

 これは病院事業について地方公営企業法をこれまでの一部適用から全部適用にする提案です。現在全国には約1000の自治体病院がありますが、「地域住民の命と健康を守る」ことを最大の目的として整備をされてきました。

 全国自治体病院協議会は「自治体病院の倫理綱領」で「地域住民によってつくられた自治体病院は、その地域に不足している医療に積極的に取り組むとともに、地域の医療機関や行政機関との連携を図りながら、公平、公正な医療を提供し、地域住民の健康の保持・増進を図り、地域の発展に貢献する」と掲げられています。

 全国的に自治体病院の経営が悪化しており、その背景として(1)1978年以降の低医療費政策の中でたび重なる診療報酬の引き下げ。(2)格差・貧困が広がるなかで、医療費の患者負担増とそれに伴う受診抑制。(3)構造改革の推進による地方交付税、開設自治体からの他会計の繰入金の減額などがあげられると思います。

 自治体病院は、年々経営の悪化で、本来の「公共の福祉の増進」の目的から「経済性、効率性」を最優先する経営形態の見直しが全国的に進められ、独立行政法人化、指定管理者制度の導入や民間移譲などが行われています。

 千葉市の両市立病院は、公営企業法の一部適用を受けており、今回の条例改正は、全部適用に移行する全国的な動きと連動するものではないでしょうか。

 全部適用の狙いは、「病院事業に民間の経営手法を導入して自治体病院を経営体として純化・強化することで経費削減」を至上課題としています。そのことは、一般会計からの繰り出し金の削減、業務の集中化、民間委託の促進、差額ベッド代や有料サービスの拡大の加速をさせ、結果として患者や利用者への負担を転嫁し、医療従事者に犠牲を強いることにならないか懸念されます。

 自治体病院事業では、採算性が低く、保健衛生、福祉行政等との関連は密接であり、公営企業として病院の自己責任での運営を求めることは、その性格上矛盾するものです。また職員の身分、待遇でも一部適用と全部適用では違ってくるという問題があります。

 一部適用の場合は地方公務員法に基づき、一般の公務員と同様の給与が条例で定められていますが、全部適用となった場合は、給与の種類と基準のみが定められ、給与の額や支給方法などは管理者の権限となります。病院経営が困難な場合は、一般行政職員と賃金の切り離しがされれば、賃下げもできてしまうのです。

 地方公営企業年鑑で一部適用、全部適用で経営の黒字、赤字の違いはほとんどないとされています。このことで明らかなように一部適用か全部適用かが問題ではありません。

 赤字病院の基本的な問題として、(1)病院の基本的な理念。(2)明確・具体的、達成可能な組織目標がない。(3)品質管理システムの欠如(4)医療と経営の一体感がないこと。(5)責任転嫁の体質などが指摘をされています。

 そして、自治体病院の経営改善には、(1)現状認識を行い問題点を明らかにする。(2)自治体病院として地域でのあり方を考えて基本理念にする。(3)病院理念を具体的で達成可能にする。職員の行動指針を提起する。(4)職員の意識改革、モチベーションの維持。(5)組織の一体化、全員参加の経営改善などが提案されています。

 こうした点に加えて、病院の経営内容の市民への公開、繰入基準の改善をし、度重なる医療改悪に反対をし、民主的な財政運営を確立し、市民が安心して良質な医療が提供できることを求めるものです。

 今両市立病院は地域にとってなくてはならない病院としての役割を果たしており、全部適用で採算性を優先させていくようなことがあってはなりません。

 議案第194号千葉市路上喫煙等及び空き缶等の散乱の防止に関する条例の制定についてです。

 この条例は、今までありました路上喫煙等の防止に関する条例と空き缶等の散乱防止に関する条例を統合するとし、その目的は歩行者等の身体及び財産の安全確保し、かつ美しい街づくりを推進し、もって市民の安全な生活環境の向上及び快適な都市環境の確保に資することとなっています。その目的は、全市域で実施するのであれば理解できますが、路上喫煙やゴミ等のポイ捨てはどこでも許されません。

 路上喫煙について罰則をもって規制することが良い方法だとは思いません。

 環境経済委員会でも喫煙による健康被害に対する取り組みは評価できますが過料の徴収ではなく喫煙者に対し、電車内などへの注意やポイ捨て防止に関して企業責任と企業努力を求めるなどの意見も出されながら、賛成多数で可決されたことは残念です。過料を科すことより市民にマナーを守るよう良心に働きかけることが本来の行政の役割ではないかと考えます。

 議案第200号千葉市土地開発公社の解散について

 土地開発公社は1992年、公共施設整備などの用地を先行取得するために「公有地の拡大の推進に関する法律」に基づき設立され、理事長には歴代の助役、副市長が就任してきました。土地取得は累計で70万平方メートル924億円です。このうちの66万平方メートル828億円は公共用地として活用されています。これまで、公社の借入金の債務保証をしてきた千葉市が代わって返済するためには、公社を存続するより、第3セクター債を活用し、解散した方が「73億円少なくて済む」としています。

 しかし、千葉市の塩漬け土地は46,000平方メートル、時価22億円と想定して、103億円の債権放棄することになります。その理由を「主に土地の下落が原因」であるかのような答弁でした。

 100億円もの債権放棄は、とても市民の納得は得られません。敬老会助成金180円カットなど、お年寄のための福祉を削っていながら、一方で多額の債権放棄は許されません。また、赤字の理由として、地価の下落を強調していますが、全国20%の土地開発公社は適正に運営されることからみても、理由にはなりません。

 さらに重大なのは、千葉市の赤字の原因は、きわめて不透明・不明朗な用地取得が行なわれことです。

 稲毛区弥生町計量検査所用地は、3億4,908万円で取得し、8,940万円で売却して、2億5,968万円の赤字です。

 臨港プロムナードポケットパークの取得は、直接プロムナードに必要ではない土地を平方メートル330万円の3億500万円で買い取りました。

 扇屋ジャスコ跡地は、当面の活用計画がないのに取得したため、事業化は10年近く遅れ、この間の利子が63億円も膨らみました。

 以上3件で、合計68億6,000万円の損失ですが、これらは政治家や特定企業に配慮した用地取得だと、当時からいわれていたものでした。

 弁天複合施設用地の966平方メートル、15億8,480万円、庁舎倉庫予定地の3億1,079万円、神明町公園予定地の6億8,727万円、土木事務所資材置き場用地の2億930万円、中央港地区公共公益施設用地の28億8,118万円、以上の合計56億7,334万円は、利用目的が不明なままの用地取得となっています。

 政治家や特定企業に配慮した用地取得と利用目的不明な用地取得によって作り出された損失額は、今指摘しただけでも合計125億3,334万円にもなります。これらが、私どもが主張してきたように、市民に情報が公開され、市民参加による的確な議論がされていたら、100億円の債権放棄どころか黒字運営さえ可能なものであり、認められません。

 市長も「用地取得の一つ一つを説明していく」と答えているように、今後、不透明・不明朗な用地取得についての検証が必要です。

 発議第33号千葉市住宅リフォーム補助金交付条例の制定についてです。これについては常任委員会、代表質問、一般質問でも取り上げてきました。市内の疲弊した経済状況を立て直し、市民の住環境が向上し住宅リフォームを行う際に、市が補助金を出せば、この機会にリフォームをしようという需要を喚起して経済波及効果があること、市にとっても市民も市内業者も喜び、市内雇用が増え、税収が上がることにつながり市にとっても、大変効果的な事業であることを示しました。

 都市建設委員会では、事業規模の予算の額の妥当性について質問がありましたが、代表質問でも述べているように国に事業として申請すれば45%の交付金を受けることもでき、市の支出も55%となります。

 人口108万人も秋田県では住宅リフォーム緊急支援事業として2010年度から工事の10%最大20万円まで補助していますが、補助金の15.5倍もの工事発注額となり雇用も増大し、今年度の予算額21億6千万円で、512億円の経済波及効果があると試算しています。

 他の委員から、高齢者や障害者のバリアフリーや太陽光発電、耐震改修助成など既存の事業があることを理由に反対していましたが、今までの既存の制度では目的に応じて助成するだけで住宅のリフォームをしたいと思っている市民のニーズに合わせて使えるものとは限らず、対象も狭いものとなっています。また、今回の条例が地域経済の活性化を協調していることからもリフォームの需要をいかに喚起し、利用しやすいものとするのかを検討して提案されました。ぜひともこの一石三鳥の効果があると言われているこの条例を、ぜひともご理解いただきますようお願いいたします。

 最後に「子どもの通院医療費無料化の年齢引き上げを求める請願」についてです。

 子どもの医療費助成制度は、この12月から千葉県で小学校3年生まで実施となり、千葉市以外の市町村では、これまでの制度に上乗せして、小学校卒業あるいは中学校卒業までの無料化が進み、千葉市だけが就学前までにとどまり大きく遅れをとる事態になりました。

 代表質問でも各会派からの指摘に、「財政が厳しいから」「県からの補助金が他の市町村に比べて少ないから」との理由で先送りしていた市長も、「千葉市でも小学校3年生までの通院医療費助成を来年度のなるべく早い時期に実施する」と答弁せざるを得ませんでした。

 常任委員会で財源不足を理由に反対した会派の態度は、市民の切実な願いに背を向けるものです。子どもの命と健康を第一に考え、小学校卒業までさらに進めるよう求めておきます。