中村きみえ議員の討論

2011.6.24

議案第114号、議案第115号

 議案第114号・千葉市一般会計補正予算および、議案第115号・千葉市下水道事業会計補正予算総額96億円は、大震災の被害復旧の予算であり、日本共産党市議団はこれに賛成し、早期復旧を強く求めるものです。以下意見を申しあげます。

 補正予算中道路・下水道など公共インフラについては、液状化被害の美浜区はもとより、老朽化が進んでいる市内下水道の総点検を急ぎ、災害に備える事が課題となっています。学校・保育所・公園など公共施設の復旧は、子どもたちが、長い時間活動する場所ですから、速やかな復旧が必要です。災害時には市民の避難場所にもなりますので、耐震化率73.8%の学校校舎や屋内運動場などの思い切った前倒しを行うべきです。

 復旧工事は、速やかな発注と品質の確保、速やかな竣工に努め、地元業者がまんべんなく工事受注ができるようにして、地元経済の向上にも貢献するよう望みます。

 被災者生活再建支援については、千葉市独自の支援を行っていません。液状化による家屋の被害は深刻で、その再建には多額の費用を要するため、浦安市や船橋市が独自の支援を行っている事は評価されるとりくみです。これに対して熊谷市長は、「自治体間に救済の格差が生じることは適切ではない、残念だ」との発言をしたようですが、独自に努力している自治体を非難するような発言は適切ではありません。

 鳥取県で2000年10月の鳥取県西部地震発生後、被災者の住宅再建を初めて創設したことは皆さんもご承知のとおりです。翌日から被害調査に現地に入り、災害にあった人たちに本当に必要なものは何だろうかと把握しようと考え、住宅が被災地を復旧する一番のキーワードなんだと学んだそうです。役場の女性職員が、目の前の被災者さんの生活を救えない無力感に涙を流し、その話を聞いていた片山知事も思わず涙したという話は、行政の長としての使命感、人としての温かさを感じます。被災者に寄り添って、住宅再建のために支援策を講じた首長としてのあり方に学ぶことが多いのではないかと考えます。

 とりわけ、県庁所在地の市長の発言が及ぼす影響をよく考えて、発言していただきいと思います。熊谷市長が、神戸で被災した経験を生かし、千葉市独自の被災者生活再建支援に力を入れて、千葉県内の自治体をリードする役割が求められているということを念頭に入れていただきたいと改めて、強調しておきます。

 なお、議案審議を通じて明らかになった、液状化、津波、防災無線、避難場所、帰宅困難者対策など災害対策、市民の安全を守る様々な課題に、積極的に取り組むよう求めておきます。

 原子力発電所の事故による放射線被害に、市民の不安は広がっています。千葉市も学校・保育所・幼稚園・公園などの一部で放射線量の測定を行いましたが、測定範囲を広げ、定期的に行い、市民の安心・安全のため公開・公表を強く求めます。

議案第112号専決処分

 議案第112号専決処分「国民健康保険事業特別会計補正予算」については、承認できません。反対の理由を申し上げます。

 繰上充用の専决処分の原因について、当局は、制度的に財政基盤が脆弱であり、法定外の一般会計繰入金で収支不足を補填してきましたが、一般会計の財政状況も厳しいために、H21年度、22年度の繰入を見送ってきました。また、保険料の収納率が予算の見込みを下回ったからと説明しています。

 保険料の収納率が予算の見込みを下回り、滞納が増えた要因は、不安定雇用、派遣切り、収入の激しい落ち込み、自営業者の営業不振、退職後の職がなく、収入の少ない人が増加したなど、披保険者の所得が大きく減収していることにあります。このことは、千葉市だけでなく社会現象であり、大震災の影響から、ますます厳しいものになると思われます。また、高すぎる保険料が払いたくても払えない原因となっています。千葉市の2人世帯の保険料は、医療分・支援金分・介護分を含めて、年間所得200万円の世帯の保険料は23万8,380円。年間所得300万円の世帯では、333,780円。年間所得400万円の世帯では保険料は429,180円となります。所得の13%前後の保険料は、市民にとって絶えきれなく重い負担であり、滞納が増える原因となっており、適正な保険料への引き下げが必要です。ちなみに、国民健康保険では、保険料23万8,380円を支払う世帯の年間所得は200万円ですが、共済健康保険の場合、同じ保険料の市職員の年間所得は390万円です。所得に2倍近い差があります。収入が低下する中、所得の13%前後の保険料は、払いたくても払えない。高すぎる保険料であると認識し、保険料の引き下げや、減免制度の充実が必要であることを強調しておきます。

 法定外の一般会計繰入金で収支不足を補填してきましたが、一般会計の財政状況も厳しいために、2年間繰入を見送られてきました。H21年度、22年度各40億円で合計80億円が国保会計の歳入となっていれば、119億円余の収支不足は39億円になっていたはずです。国民健康保険が市民の医療と命を守る社会保障の根幹であるとの認識に基づいていれば、厳しい財政状況の下であっても繰入ができたはずです。そのように改善を求めます。繰上充用額の累積収支不足119億7,000万円は、決算の健全化判断比率の中で、連結実質赤字比率を上昇させています。千葉市は、実質公債費比率と、将来負担比率の2つの指標で、政令市ワースト1ですが、加えて連結実質赤字比率が発生したことによって、財政悪化を加速させ、全国に千葉市の財政の深刻な事態が発信されてしまいました。日本共産党市議団は、国民健康保険を維持していくために、実質公債費比率が多少アップしても、一般会計からの繰入金をH20年度並みに繰り入れるべきです。その結果、連結実質赤字比率の解消へと進むことが、財政健全化にとっても必要なことだと思います。

 最後に政府に国保制度の、抜本的改善を求めることについてです。市町村国保の運営が困難に陥っている最大の原因は、国がその責任を果たしていないからです。市町村国保に対する国庫負担医療費への定率国庫負担は、1984年に45%から38.5%に下げられたことが最大の原因なのです。

 医療費国庫負担率を1984年の水準45%で計算した時の特別会計の収支は、現在の1.67倍の国庫負担歳入増となり、1年間で68億5,400万円となって、国保会計は維持できます。市長は国に国保の抜本的改正を求めるとしていますが、広域化では被保険者の負担が増え、国の責任が大幅に後退します。憲法25条には生存権が示され、社会保障の根幹である国民健康保険は、国民健康保険法第1条及び第4条に沿って、医療費への定率国庫負担を45%に戻すことを柱とした抜本的改正を国に求めます。

議案第119号千葉市基本計画

 議案第119号千葉市基本計画については、以下3点の理由から反対します。

 第一に、3.11東日本大震災を踏まえての見直しが盛り込まれた計画になっていないことです。計画には大震災の経過についての記述はありますが、その対策が極めて不十分です。液状化や津波対策、防災無線の整備、帰宅困難者対策、被災者支援対策、地域防災計画の見直しなどと、原子力発電所の事故による放射能被害が拡散している時、その対策と市民の安全を守る方針や計画をどう取組み、今後10年間、災害に強い千葉市をどうつくるのかが明確になっていません。また、災害に強い街づくりと、福祉の充実は一体であることを計画に反映することが必要ですが、不十分です。

 その原因は計画全体が、3.11東日本大震災以前に完成し、その後市民・関係者、審議会や市議会の協議を踏まえた意見の集約を計画に反映することが省かれたまま、事務局による若干の手直しで済ませているからではないかと思います。

 未曾有の大震災と千葉市でも多くの被害が発生した直後の基本計画は、災害対策が何ページか記述され市民が納得する計画にすべきです。

 第二に、大型開発の抜本的見直しをしないままの計画になっていることです。千葉市の財政危機に対して市長は、政令市移行に伴う基盤整備など大規模プロジェクトなどを進めてきた結果であると述べています。しかし計画は、千葉都心、幕張新都心、蘇我副都心と三都心開発の継続を位置付けており、基本構想等に盛り込まれている業務核都市、都市再生推進開発など国の上位計画を忠実に実行するものとなっています。

 進行中の大型開発の現状は、蘇我臨海開発が総事業費1,601億円のうち、残りの事業が886億円あります。そのうち市が事業計画で示している事業は、蘇我スポーツ公園整備140億円と蘇我駅周辺整備151億円です。千葉駅西口再開発は172億円が予定されていて、この合計は約463億円です。財政危機と言って市民福祉を削りながら、約463億円の莫大な事業費を注ぎ込む計画は、大胆に見直すべきです。

 政令市ワースト1の財政危機に陥った主な原因である大型開発の抜本的見直しなくして、計画の理念、ビジョンは実現しません。このことを明らかにしておきます。

 第三に、千葉市で、はじめて議会が基本計画策定に関わることになり、審査してきた新基本計画策定調査特別委員会の審査機会が保障されなかったことです。

 特別委員会は計画案を3月に審査し、その意見を計画に反映する予定になっていました。3月11日に発生した大震災のため特別委員会が開催できなかったことは仕方ありませんが、6月議会で十分審査し、その内容を計画に反映させて、9月議会で議決することが、議会の審査を保障することになります。現に6月14日に開催した特別委員会では、大震災に関わるたくさんの意見が出されましたが、当局は聞きおくだけで計画の加筆や修正はされません。「議決先にありき」の議会への対応は、議会軽視であり日本共産党市議団は、大震災で開会できなかった議会の審査を保障するため、当局に対して議案の提出を9月議会まで継続するよう求めました。そして特別委員会で、継続審査を主張しましたが、他の会派が反対したため、賛成多数で可決されたことは遺憾です。

発議第6号千葉市公契約条例制定検討委員会設置条例の制定

 発議第6号千葉市公契約条例制定検討委員会設置条例の制定についてです。この条例は、市が行なう契約において適正な労働条件を確保し、事業の質の向上を図ることを目的とする条例の制定について調査検討を行なうため、検討委員会を置くものです。総務常任委員会の提案理由の説明では、今述べた主旨とともに、野田市、川崎市の条例が成果を上げている事例も説明しました。

 質疑に際して各委員から、(1)契約制度の見直しが行われない中での賃金の引き上げが下請け事業者に与える負担、(2)労働者の賃金引き上げを行なう中で、工事、サービスの質を担保する手法について、(3)下請け契約の適正性の確認方法について、(4)国に公契約に関する法令の制定を働きかけられたい、(5)公契約条例の制定を検討する付属機関の設置には賛成、(6)事業者の経費削減は限界にきているため、その実態を把握するとともに下請事業者に過度な負担が与えられることのないよう入札方法の見直しを、(7)公契約条例を制定している両市において、条例の対象となる契約は限定されており、すべての契約を対象とすべき、(8)政令市の大半で公契約条例制定を制定していない状況や千葉市が条例制定に、など様々な意見が出されました。提案者は、そのひとつひとつ丁寧に答えながらこのような意見を出し合い、調査検討するための検討委員会の設置を求めているので、賛成をと呼びかけました。民主とネットは賛成ですが、「時期尚早」等の理由で反対多数で否決されたことは極めて残念です。

 官製ワーキングプアー問題の解決など適正な労働条件を確保し、品質の確保・向上のために同条例案を検討する場としての「委員会」の設置は急がなければならないことを指摘しておきます。

請願第3号、請願第4号

 なお、請願第3号「業者の住宅開発により住民が受けるいわれない不利益の抜本的改善をめざし、両者の話し合いを開始することを求める請願」及び請願第4号「500平方メートル未満の小分け開発」により住民にいわれない不利益が生じないよう「開発行為に関する審査基準」の改訂を求める請願については、都市建設常任委員会で不採択となったことについて申し上げます。

 3号は、花見川区作新台のテニスコート跡地5,000平方メートルの土地に、32戸の戸建て住宅を11期4年に分けて建設されようとするものです。住民への説明なしに、アスファルトの解体工事を行ない騒音、振動、土ぼこりなどで狭い一方通行の道路を大型ダンプが走行し、住民の環境を脅かしています。住環境の改善と、今後そこに住む住民にとっても住みやすい環境を求めて、道路の拡幅、日照、工事への対策などを求め、具体的な問題解決のために業者との話し合いを行なえるように求めているものです。

 行政側が、業者に対して、行政手続法の下で強制することはできないとしても住民の住環境を良好に保つことができるように働きかけをしていくことが重要です。業者が住民と話し合いが成り立たないのでは、事態の進展は難しくなります。

 4号は、そもそもこの5,000平方メートルの土地を500平方メートル未満に分けて申請をし、開発行為に関する審査基準の適用を免れたままで、開発がおこなわれることについて、審査基準そのものを改訂してこうした乱開発ができないように求めているものです。

 連続して開発を行ない結果として500平方メートルはおろか、5,000平方メートルの土地を一体にして開発することについて、小分けに出来てしまう今の現状を打開できるようにしていかなければ、いつまでたっても住民と業者との争いが絶えません。国の動向を見たり先進市の状況の推移を見守るのではなく、住民にとって住環境が良好な状況を保てるようにこうした基準そのものを市独自で改訂できるようにしていく工夫が求められます。

 他の委員から、「連続性のあるエリアを小分けにするのは住民感情からしても納得いかないのはごもっとも」「業者と地元で十分話し合いをもって解決すべき」など住民の環境を改善するために求めていながら反対多数で、不採択となったことは極めて遺憾です。