中村きみえ議員の意見書に対する反対討論

2012.9.20

写真 公明党市議団提出の発議第20号「税制全体の抜本改革を確実に実施するよう求める意見書」及び自民党市議団提出の発議第23号「消費税率引き上げに伴う低所得者対策に関する意見書」および発議第22号「生活保護の適正実施に関する意見書」に対する反対の意見表明を行ないます。
 まず初めに8月10日、民主・自民・公明3党の賛成で、消費税10%への増税法を強行成立させたことに、強く抗議するものです。
 成立からおよそ1か月半、国民の反対する声は収まるどころか、さらに高まっています。国民は何に怒っているのでしょうか。
 1つは、民主党が先の総選挙で「4年間の任期中は消費税の増税はしません」と公約したにもかかわらず、野田首相は「命がけで」公約違反を行なったのです。マニフェストに対する不信、自民・公明政権からの脱却を期待し、支持した有権者に対する裏切りへの怒りです。
 2つは、「消費税を増税すれば日本経済をどん底に突き落とす」「一体改革は社会保障の切り捨てだ」という国民の不安や疑問は、「毎日新聞」の世論調査でも「今国会での成立は望まない」が61%、「成立を望む」が33%となって表れていたにもかかわらず、民主・自民・公明3党の密室談合で強行されたことへの怒りです。
 3つは、3党の談合によって「一体改革」に盛り込んだ内容が、年金給付の削減、年金支給開始年齢の引き上げの検討、医療・介護の負担増などが入り、「増税法案」には、法人税の一層の引き下げを検討する条項も入りました。さらには、消費税による増収分を大型公共事業に投入する条項まで入れ込みました。「消費税増税は社会保障の充実のため」「消費税の税収は全て社会保障に充てる」との説明がウソだったことへの怒りなのです。
 これ程、世論を無視した大義も道理もない消費税増税の成立に対し、国民の評価はどうかと言えば。これも「毎日新聞」の世論調査によると、暮らしに「多いに影響する」「ある程度影響する」と答えた人が92%にも達しています。3党談合による消費税の増税は、国民にはかり知れない不安と怒りを呼び起こし、政治への信頼を失わせているのです。
 その世論に押されたかのように、公明党市議団と自民党市議団から「複数税率の導入」とか「税制の抜本改革」などを求める意見書が提出されましたが、言いかえれば、それほど重大な欠陥をかかえた法律だったことを、自ら証明したものだと言わざるを得ません。
 そもそも消費税は、低所得者ほど負担が重いという逆進性が根本的な問題なのです。民主党政権も、この欠点を認めざるを得ず、「低所得者に配慮した再配分に関する総合的な施策を導入する」としていたのに、3党談合では「施策を導入する」から「検討する」にまで格下げし、「複数税率」などの実施も何ら具体化されない、先送り状態となったのです。低所得者に重い負担を強要する税制なのに、肝心の軽減策は後回し、何がなんでも「消費税増税ありき」だったことは明らかです。
 もう1つ消費税の重大な根本欠陥である、中小企業の「損税」「自腹負担」も何ら解消されていません。今でさえ販売価格に消費税分を転嫁できず、身銭を切って納付する実態が広く明らかになっていました。「消費税が8%、10%になったらとても負担できない」「もう廃業するしかない」との切実な声にも、具体的な対応策を示すことができないままです。
 私ども日本共産党は、消費税の増税は「低所得者ほど負担が重く、中小零細業者の経営を困難にし、日本経済をどん底に突き落として、税収が落ち込み、財政再建をさらに困難にする最悪の行為だと指摘し続けました。
 そして、消費税の増税に頼らずに社会保障の充実と財政再建への道として、1に、必要性のない大型公共事業や軍事費、政党助成金などの無駄遣いを一掃する。2に、大企業や富裕層への行き過ぎた減税をやめて応分の負担を求める。3に、「応能負担原則」に基づく税制改革を実施することを示してきました。
 今議会への公明党市議団と自民党市議団の消費増税に関するそれぞれの意見書は、消費税の根本的な欠陥を何ら解消するものではなく、「市民の批判をそらすためのもの」と言わなければなりません。
 いま必要なのは、消費税増税の実施そのものの中止を求めることです。したがって、日本共産党市議団は、公明党市議団提出の「税制全体の抜本改革を確実に実施するよう求める意見書」及び自民党市議団提出の「消費税率引き上げに伴う低所得者対策に関する意見書」に反対いたします。

 続いて、発議第22号「生活保護の適正実施に関する意見書」に対して申し上げます。
 日本共産党市議団は、議会運営委員会において、「憲法第25条に基づいた生活保護制度の充実を求める意見書」の提案をしました。
 生活保護は憲法第25条に規定されている生存権を保障する制度です。我が国の生活保護利用者は210万人を超え、過去最多ですが、所得が生活保護基準を下回るとされる705万世帯のうち、生活保護受給世帯の割合は、わずか15%にすぎません。
 ところが、「不正受給」や「生活保護に対する不公平感」など、マスコミ報道も利用し、厚生労働省は「生活支援戦略」の「中間まとめ」を国家戦略会議に提出し、生活保護制度の本格的改定を図ろうとしています。
 その内容は、親族の扶養義務を強化し、扶養可能な親族には「保護費の返還を求める」仕組みをねらうという驚くべきものです。その根底には、米倉弘昌経団連会長が強調してきた「自助・自立を基本とする生活保護の適正化」があり、親族だけに扶養の義務を押しつける前近代的な生活保護制度に変質させるものです。現在の生活保護法は1950年に、「親族の扶養を強調することは封建的な時代錯誤である」との認識から、それまでの扶養義務を保護の要件から除外した法改正を行ったものであり、60年も前に引き戻そうとする暴論です。また、「就労自立」のため「正当な理由なく就労しない場合に厳格に対処する」として保護の打ち切りを主張し、たとえ短期派遣で将来の見通しのない仕事でも就労させようとするもので、徹底的な生活保護費の削減が図られようとしています。生活保護利用者が、かつてないほどに増大した最大の原因は、財界主導の「構造改革」路線によるリストラと非正規雇用への移行、賃金引き下げが大規模に行われた結果によるものです。国家財政の莫大な借金は、無謀な公共事業を続け財界・大企業の利益を優先した結果です。
 国と財界が、国の財政を危機に陥れ、人々を貧困に突き落としながら、セーフティーネットとしての生活保護制度を、さらに改悪することは断じて許されるものではありません。
 生活保護制度に対する国民の視線がかつてないほど厳しいものとなっているのは、雇用が破壊される中で、生保世帯以下で生活している人が急増し、捕捉率が異常に低いことを解決することこそ求められており、不正受給対策は必要ですが、憲法第25条に基づいた生活保護制度を守り、さらに充実させるよう強く求め、この意見書には賛同できないことを表明し反対討論といたします。