ふくなが洋議員の決算に対する不認定討論

2012.10.2

写真 日本共産党千葉市議会議員団を代表して決算議案19件中4件について不認定の立場から討論を行います。
 2011年度の決算は熊谷市長のもとで、財政健全化プランにそって編成された予算です。実質公債費比率は0.9ポイント改善し20.5%となりましたが、政令市ワーストワンです。
 市民福祉を充実して赤字になるのであれば名誉の赤字ですが、市民サービスをカットして市民負担を増やしての16億3,000万円の黒字は、不名誉の黒字決算と言わねばなりません。
 1年間の見直しで削減された市民サービスは、難病見舞金・被保護児童生徒修学旅行支度金の廃止など42件3億2,592万円です。公共料金の値上げは28件3億2,053万円になります。
 財政の目的は、古くから「国民に仕事を与え産業を興し完全雇用をめざして国民経済を推進すること」と言われます。また、財政収支は均衡であっても失業者があふれ、「多くの生産要素が遊休状態では真の健全財政とは呼べない」とされています。これは国の財政のあり方ですが、地方にも関わるものだと思います。
 こうした点から、市民サービスカット・市民負担増の決算は「財政難を理由にした福祉カットは止める」とした市長のマニフェストにも反するもので認められません。
 次に、大型公共事業継続の決算であることです。大型公共事業は、千葉駅西口開発3億500万円、蘇我特定地区整備4億3,800万円、新港横戸町線8億3,300万円など多くの予算が組まれています。市長は、可能な限り見直しを行っているとの答弁でしたが、市民生活優先というならば、不要な大型開発を大胆に切り込むことを求めます。
 次に、財政健全化最優先の決算になっていることです。千葉市の財政健全化プランは、実質公債比率25%超えないために数値目標を示しています。
 建設事業債の買い戻しの財源約20億円を発行する必要がなくなったため、190億円に見直したとの市長答弁がありました。今日、地域経済が冷え込んでいる中、市民生活に密着した公共事業を増やせば、仕事と雇用が増え、消費ものびて地域が元気になります。そのためにも、地域活性化のために210億円の建設事業費を組むべきです。
 わが会派はこれまで、住宅リフォーム助成制度、中小企業振興条例、公契約条例を提案し、地域経済の活性化のための千葉市元気サイクルの実施を求めてきました。
 地域経済を活性化するために、地域を元気にする施策を実施するべきですが、具体化されないのは問題です。
 また、国政への評価の問題です。
 平和について、広島市長が平和宣言で述べた「核と人類は共存できない」との言葉を引用して、原発を速やかにゼロにして放射能の被害から子どもの未来を守ることを質問しましたが、市長は、「原発事故が国民に甚大な被害を及ぼした」ことを認識しながら、「現実的なプロセスを経て、原子力発電への依存度を低下させていくことが重要」との答弁は、「推移を見守る」態度であり、主体性に欠けています。これでは、「ただちに原発ゼロ」を願う国民の世論に反しており、納得できません。
 「未来への視点」を政策判断の基準にしている熊谷市長は、即時原発ゼロの立場で、放射能の被害から子どもたちを守るべきであることを要求しておきます。

 社会保障と税の一体改革では消費税の増税だけが決まりました。消費税増税法と抱き合わせで強行され「社会保障制度改革推進法」が施行されました。これは、医療・介護・年金・生活保護などの大改悪を盛り込んだ法律です。市民にとっては、消費税大増税と社会保障大改悪の2つの激痛を強いられることになります。
 「社会保障の基本は『自助・自立』の『自己責任』である」として、国や地方自治体の公的責任と財政支出を大きく後退させるものです。
 ここには、社会保障の主要財源を消費税に限る「社会保障目的税化」や医療や介護の「給付重点化」「効率化」など、縮減まで明記しています。国民皆保険を突き崩し「混合診療」に道を開き、来年度の予算編成でも生活保護費をはじめとする社会保障費を圧縮するとしています。こうした大問題がある消費税の増税や社会保障改悪について、市長は「社会保障の安定財源」「社会保障制度を維持するために増税は止むを得ない」と答弁しています。
 再度申し上げますが、消費税増税と社会保障の「一体改悪」は、市民の暮らしをボロボロにして内需を冷え込ませるものです。そして、景気後退による税収不足で、財政危機をますます深刻させるものです。今求められているのは、消費税増税に頼らず、財政危機を打開し、社会保障を充実する政治です。消費税増税・社会保障改悪を容認する市長の姿勢は認められません。
 さらに一言申し上げるなら、消費税増税法には「付則」があり、このことは、ほとんど報道されていませんが、この付則には、増税分を公共事業に充てることができると盛り込んでいます。自民党は「国家強靭化法」を上程しており、大震災をチャンスに、首都直下型地震に備えるとして、10年で200億円を使う予定です。
 その財源に、消費税10%になれば約13.5兆円の税収が入りますが、このうち最大10兆円を公共事業に回すとされています。これは、問題はあるが将来の福祉のために消費税は仕方ないと思ってきた国民に対する背信行為ではないでしょうか。
 熊谷市長が就任して3年半になります。国の政治が、大増税や社会保障の改悪、雇用破壊をすすめる中で、「住民福祉の増進を図る」ことが地方自治体の役割でなくてはなりません。それは「住民が主人公」の千葉市にすることではないでしょうか。
 しかし、市長は高齢者への施策として、敬老会の補助金のカットと年齢制限、針・きゅう・マッサージ利用券をカットし、高齢者いじめの市政を実行してきました。
 また、職員給与と退職手当の大幅カットの問題です。
 財政危機のなか職員もそれ相応の我慢は求められます。「市民の幸せなくして職員の幸せはない」と言われますが、限度を超えるとモチベーションが下がり、民間給与との引き下げ競争になります。市長の改革で、人勧を大きく上回る給与カットとともに、政令市では千葉市だけの退職手当のカットなどは認められません。

 この間、市民の間で大きな関心事になっている家庭ごみ有料化の問題です。
 市長対話会は「市長の意見を押し付ける会」とも言われ、他の会派からも批判が出ています。家庭ごみの有料化で、千葉市の処理料が減少する根拠もあいまいです。
 また、北谷津清掃工場の建替え費用の節約を有料化の根拠にしていますが、建設費を誇大に見積もり、市民に示すことも許されません。
 ごみ問題は市政の重要な課題です。それを最初から有料化ありきで、ごみ減量を進める態度は根本的に間違っています。3Rに基づく減量、さらなる分別などを市民とともに進めようとする姿勢が全くないのは問題です。
 日本共産党市議団は、市民に負担増を押しつけ、一時的に減量してもリバウンドする不安定な家庭ごみ有料化の中止を求めます。そして、将来に渡って確実に焼却ごみを減らす科学的な対策として、(1)プラスチック製容器包装の再資源化で9,500トンの焼却ゴミを減量する。(2)大規模建築物に立地している事業系生ゴミの再資源化で2,000トン減らす。(3)事業系紙ゴミ分別排出で1,300トン減量を実施する。
 以上、合計1万2,800トンの減量を北谷津清掃工場停止予定のH28年度前に実施し、千葉市のゴミ問題の解決と地球温暖化防止対策を図るよう重ねて求めます。

 防災・減災は先の大震災の被害を受けた千葉市として重要な問題です。
 9月1日付の「市政だより」では、自助・共助が優先されています。この問題は、千葉市に予防原則の考えが欠けているからです。基本は予防の原則にたった防災の視点です。千葉市をはじめ多くの自治体の防災対策が、地震発生後の応急対策とその後の復旧・復興に力点が置かれ、肝心の被害を未然に防ぐという視点が欠落しているか後景におかれています。千葉市は「自助・共助」「自己責任」の考えを防災に持ちこむのではなく、予防原則に立ち、「公助」の責任を果たすべきです。

 次に、学校校舎および屋内運動場の耐震補強工事は、入札不調によって工事が遅れています。
 2012年6月末までの入札件数81件中35件、43%が不調になっていることは、重大な問題です。児童生徒の安全と避難した時の住民の安全のため、計画の前倒しをした事業が進まないことは異常であり、問題点を速やかに改善して工事をすすめるよう求めます。

 生活保護問題についてです。
 現在、全国の生活保護者数は211万人と発表されています。生活保護受給者の増加の背景には、長引く不況、弱肉強食、弱者切り捨ての社会があり、生きにくくなっていることの表れです。
 生活保護問題の解決は、まず雇用の安定と立て直しであり、働きやすい社会にすることだとされています。ここにメスを入れるべきなのに、制度を変えて自己負担や期限を定めるなど、生活保護の改悪の方向は本末転倒です。
 生活保護に至る前に、別のセーフティネットを構築し、景気や貧困対策を充実すべきです。生活保護を受けにくくするための不必要な扶養義務の強化などは、本来の生活保護制度を歪めるものです。「適正実施」の名のもとに「締め付け」を行えば、生活保護をますます受けにくくなり、新たな貧困層を生むことは間違いありません。
 千葉市は社会保障を充実させて、生活保護を受けざるを得ない人を100%救済することを強く求めるものです。
 自然エネルギー問題についてです。今回の代表質疑で蘇我の最終処分場跡地に導入する計画を明らかにしました。
 このメガソーラー問題については、これまで指摘をしてきましたがメガソーラーの拠点開発は、結局は資本力の大きな大企業と銀行の主導となり、地域経済との関係が薄くなります。地域住民はエネルギーの消費者にならざるを得ません。基本は、脱原発、再生可能エネルギー中心の社会をめざして、市民・自治体・地域主導で取り組むことです。
 それは、市民・自治体・地域で省エネやエネルギー効率の改善、住宅や建築物、施設への太陽光発電やソーラー温水器、雨水タンクの設置推進、市民共同発電所づくり、再生可能エネルギー団体への支援や参加、自治体の再生可能エネルギー普及推進、市民地域のエネルギー教育・学習の強化などを強力に推し進める立場で、メガソーラーについての基本方針とするべきです。

 各局の指摘事項について申し上げます。
 最初は財政です。
 財源確保について、負担根拠が希薄な、国直割事業負担金4億7,323万円、県事業負担金4億6,054万円の早期廃止。千葉市が不公平な扱いを受けている県事業負担金約14億円の速やかに是正することであります。

 総合政策行政について
 包括外部監査は過去に13回行い、決算額は2億5,593万円である。監査結果の活用と利用をより改善して、行政に生かすことであります。

 市民局について
 障害者スポーツの振興についてです。今年はロンドンでパラリンピックが開催され改めて「障害のある人が安心して暮らせるためにも社会参加として障害のある人がスポーツを楽しむための支援を求めるものです。
 防犯対策では街灯のLED化とともに防犯上必要な所へ速やかに設置を求めます。
 保健福祉行政について
 あんしんケアセンターについては、地域で高齢者が安心して暮らせるためにも、施設は各中学校区に1か所配置されるように求めておきます。
 特養ホームの施設建設は、一定進んでいるものの、ホテルコストがネックで入所できない状況を改善すべきです。
 障害者虐待防止は大事な施策です。障害者への虐待は絶対に認められません。市独自の条例を制定するなどして、障害者への虐待を未然に防止しなければなりません。
 高齢化社会のもとで、生涯現役を目指す人を支援して地域でボランティア活動に参加する機会をふやしていくことが求められます。
 猫や犬の殺処分については、殺処分ゼロを目標に取り組みを強化して、人間と共生できる社会づくりを進めるべきです。

 病院局について
 両市立病院の看護師不足は深刻です。全国的にも厳しい状況が続いていますが、医療事故につながらないように職員の充実を求めます。

 こども未来行政について。
 子どもの医療費助成制度について、県内では通院についても中学卒業まで助成する自治体が増えています。千葉県単独補助金の補助率を2分の1に引き上げることができれば、5億2,000万円増額します。子どもの命と健康を守るために、子ども医療費助成を中学3年生まで対象年齢を拡大するよう求めます。

 環境行政について
 放射線測定は、引き続き市が責任を持って定時定点での測定を行ない、必要な場所は除染すべきです。

 経済農政について
 千葉市地域経済活性化戦略が昨年度末、策定されました。「企業が成長し、新たな企業が集う」などとしていますが、資金力がある企業などにとっては、展望が見えるかもしれません。しかし、千葉市の事業所は2009年度、従業員数9人以下が71.1%です。この中小零細企業こそ支援すべきです。そのためにも、市長にも、責務を求める中小企業振興条例の制定こそ求められます
 農政では、平均年齢が70歳近い農業従事者の中にあって、農業後継者49人と新規就農者12人は貴重な存在です。しかし、決算額は後継者対策89万円余、新規就農者支援834万円と極めて小額となっています。予算を大幅に増やし、後継者や新規就農者が希望のもてる政策を大胆に実施することを求めます。

 都市行政について
 サービス付高齢者住宅が、千葉市ではすでに11件登録されています。管理や契約をめぐり問題が起きています。保健福祉局と連携して入居者の人権が守られるように行政指導を行うべきです。

 建設行政について
 ゲリラ豪雨対策を引き続き強化するとともに、稲毛消防署の救急車など緊急車両の出入り口の渋滞は重大な問題であり、すみやかな改善を行うべきです。

 水道行政について
 わが会派はこの9月議会で「千葉市水道あり方検討委員会の設置条例」を提案しました。残念ながら他のすべての会派の反対で否決されました。
 しかし、千葉市の水道行政が深刻な事態になっていることを否定する人はいません。水道事業運営協議会で審議をすればよいとのことであれば、今後、水道事業運営協議会を年1回ではなく、水道問題の解決に向け速やかに会議を開いて、水道行政の提言・対応策を明らかにしなければなりません。

 消防行政について
 住宅密集地では、すみやかに住民が消火活動を行なえるように地域住民と協力して環境整備するよう求めます。3.11の大震災の教訓を活かし、予防対策に力を入れるべきです。

 教育行政について
 昨年5月に起こった、若葉区の若松中学校生徒の暴行による傷害致死事件から1年以上経ちました。また、校内で暴行を受けている生徒がいたのに、目の前の先生方はただ見ているだけで、暴力をふるう生徒を止めることができなかったということからすると、あの事件から何を教訓として、いじめ対策を行なってきたのか、明確なものは示されていません。
 いじめが学校全体の問題にならない要因に、教員評価制度や学校評価制度があります。教育委員会は、この評価が「いじめを引き起こす要因となるとは考えていない」「学校運営の改善と発展に有益かつ適切であると捉えている」とのことでした。しかし、先行自治体で行なった教職員のアンケートの自由記述には、「職場に、差別と分断を持ち込む。協力して、教育を担うという最も大切な事が、失われていくような気がします」とか「評価制度そのものが客観的で適正なものになるか疑問である。教職員の意欲をそぐものになるのではないか」など、圧倒的に否定的な意見が強かったとまとめられています。
 教育委員会の答弁は、全国どこでも通じる一般論でそつないものでしたが、いじめの深刻さへの認識を深め、人間を大切にする教育を目指し、千葉市の学校からいじめをなくす対応を図ることを求めます。