中村きみえ議員の反対討論



2014.3.18

写真 会派を代表して市長提案の66議案中、28議案に反対し、発議第1号が否決され、請願第1から4号が不採択となったことに対する討論を行います。

 反対する第一の理由は、安倍政権の暴走の防波堤としての役割が果たせていないことです。

安倍自民党・公明党政権が、消費税増税、年金の引き下げ、70歳からの医療費窓口負担2割に、介護保険の要支援者外しをする改悪、TPP推進による農業破壊、原発事故後、生活再建もままならない状況であるのに原発再稼働を進めようとし、憲法まで改悪しようとする暴走政治が行われています。

 また、地方財政の削減や社会保障の最低基準を定めた「義務付け・枠づけ」の見直しなどによって、自治体が住民の福祉機関としての機能が弱体化し、住民の福祉と暮らしを破壊し、地域経済の衰退を加速させ、地方自治の危機が進行しています。そうした状況のもとで市民生活への影響は深刻であり、こういう時だからこそ、地方自治体として、防波堤の役割を果たさなければなりません。ところが、消費税の増税には反対せず、社会保障の切り捨てへの批判もせず、TPPは、推進する立場を取っています。原発を直ちになくす立場には立っておらず、自然エネルギーへの本格的な導入には至っておりません。さらに、憲法改定についても、憲法改正の議論をしたうえで国民の判断を仰ぐと、憲法を変えるべきではないという指摘すらしていません。このように国の暴走政治に対して、地方自治体の長として、警鐘を鳴らす立場、市民のくらしを守る立場に立っていないからです。

 第二の理由は、市民生活優先の予算になっていないことです。新年度予算の一般会計は、3,753億円と過去最大で前年度比158億円増の予算を市民本位に振り向けるべきです。

 新年度予算では、中学3年生までの通院医療費無料化、家具転倒防止金具の所得制限撤廃、地域経済活性化プレミアム商品券発行、障害者スポーツの推進、保育所の待機児解消策や、特別養護老人ホームの整備、予防接種の充実、認知症対策など、市民のくらし、福祉の面で前進した内容も含まれています。しかし、アベノミクスの経済対策も、GDPの伸びも年率で1%にとどまっており、行き詰まりは、明白です。

 市長提案の予算の特徴の1つは、国保料では、年間1人平均約6千円もの値上げで、10億3,400万、下水道使用料3億5千万円など、公共料金の値上げは、合計14億400万円になります。消費税増税3%分を転嫁したものは6億8,000万円に及びます。家庭ごみ有料化の7億6,600万円で、合計すると28億5千万円の負担増となります。これは、市民生活を直撃する予算であり、中止すべきです。

 2つは、未来への投資を優先させて、高齢福祉や市民生活を削減していることです。未来への投資、マニフェストに関する取り組みは38件28億8,600万円、未来への投資は11件31億円余り、グランドデザインに係る事業は、4件で1億5,600万円に上り、合計60億円となります。新規事業108件、30億円中、高齢者福祉事業には4件1億5,600万円に過ぎません。高齢者福祉や市民生活を犠牲にして進めるのでなく、むしろ、高齢福祉市民生活の向上を図りながら、未来、将来への投資を行うべきです。

 3つは、急がなくてもよい大型開発や本庁舎建替え、IR調査費が計上されている問題です。

 千葉駅西口の再開発では、A棟ビルの入居の見通しも立たない中、ホテルの下にパチンコ店が入るというお粗末なまちづくりには、各会派からも批判の声が多く寄せられていました。その上、B棟建設を進めようというのは、あまりにも拙速です。

 蘇我スポーツ公園整備7億8千万円は、厳しい財政状況と市民生活を考えれば、緊急性のない事業です。

 そして、本庁舎建替え問題です。私どもは、庁舎建設が新庁舎で整備することに異論はありません。しかし、政令市ワーストの財政状況を理由に福祉を削り、市民に我慢を強いる一方で、耐震性確保のために22億5千万円あれば、市庁舎積立金で賄うことが出来る、まずは、耐震補強をして延命化を図るべきだと、主張してきた私どもの意見には全く耳を貸さず、市民には、275億円もの建設費を投入する是非を問うことすらせず、新築ありきで、進めようとすることは極めて問題です。その上、資材や人手不足で、建設費用もオリンピック需要と重なり、300億から400億円へと膨らむことも十分に予想されます。建設が進むことを前提にして、4ヘクタールの敷地の半分は民間を活用して複合施設にしていくような計画も浮上してきました。実施される前に、市民に情報公開を行い、整備にあたっては、結論だけを押し付けるやり方は見直すべきです。

 IR調査費500万円で、千葉市にカジノの誘致をする可能性について調査するものです。刑法で禁じられているカジノで税収をはかろうとすることや幕張新都心の目玉にしたいとの構想自体が問題です。自治体の本旨である「住民の福祉の向上」を賭博にかけることはやめるべきです。

 以上の様に問題の多い事業ばかりであり、これらの予算を、市民生活に必要な事業に振り向けるようにすべきです。

 4つは、県との関係での補助金の問題についてです。

 子どもの医療費助成事業を中学3年生まで無料にするため、新年度で増額する予算は4億7,700万円です。県内自治体で千葉市だけが不公平な扱いを受けている県単独事業補助金は、直近のデータで28種類15億円余にのぼります。子ども医療費助成が、現行制度の補助率1/4が他市町村と同じ1/2に是正されれば、5億500万円の増収となり、千葉市が新年度中学3年生までの無料化に必要な4億7,700万円を上回ることとなり、積極的な対策を講じることが必要です。

 代表質疑でも、野本議員が、県単独事業補助金の適正化で毎年15億円余の補助金が確保されて28種類の福祉事業が充実することを指摘し、市長が、県への働きかけをしていない問題について厳しく批判しました。しかし、「首都圏の政令市と協力して是正を図る」と答弁して以降、市が県に働きかえてもいないのは、首長として財源確保をしようという市民の代表、責任者としての対応が著しく欠如しているのではありませんか。

 補正予算中、幕張メッセ建設事業負担金は2億2,000万円が計上されています。幕張メッセ建設時の起債償還のために、県と市が「覚書」によって負担額の上限が決められ、毎年補正予算を組んでいます。平成40年度までの負担となっていて、今後も33億円の負担をしなければなりません。今後の老朽化への対応が不透明であることと、千葉市の財政状況を考えた時に、その負担のあり方が問われます。覚書に基づくものであり、負担をやめるべきです。

 5つは、東日本大震災から3年経過しましたが、災害復興では液状化の被害が著しい美浜区では、磯辺の地域で地下水位低下工法の実証実験が行われ、今後進めていくとされますが、埋め立て地の土の層によって、工法は様々ですし、上限200万円の2分の1の補助では、費用負担がネックで遅々として進まないのではないかと思われます。市が補助する額を引き上げて、いつ起こるかわからない地震に備えて、被災者生活再建支援制度の創設など早急な対策を講じることが必要です。

 6つは、家庭ごみの有料化についてです。2月1日から市民の声に傾けずに6倍もの値上げとなる家庭ごみ手数料徴収制度が強行されました。紙おむつを出す家庭の希望を聞いて、袋の大きさは20?だけではなく柔軟な対応をすべきです。排出したごみの監視役は自治会任せでは、プライバシーの侵害との指摘もあります。ごみ出し困難な高齢者や障がい者へのゴミだし支援事業は、46人であり、不十分です。徴収した7億6,600万円を活用して、プラスチックの分別に充てて、ごみ減量を行うべきです。

 日本共産党千葉市議団は、予算組み替え動議を提出しました。その内容は、

 第1に、住民福祉の増進を図ることを基本とする地方自治法の本旨に沿って、市民生活を向上させること。

 第2に、新年度予算一般会計前年度比158億円増や建設事業債増額などの予算を生かして市民の願いを予算化すること。

 第3に、国直轄事業負担金及び県事業負担金の早期解消を図り、千葉市が不公平な扱いを受けている県単独事業補助金が公平に支出されるまでの間、地方財政法27条による県事業負担金の負担を中止すること。

 第4に、未来・将来への投資を優先し、高齢福祉や市民生活を犠牲にすることを改め、マニフェストに関する取り組み、未来への投資、グランドデザインなどの予算を見直して、未来・将来と高齢者福祉や市民生活向上を同時に図ること。

 第5に急がなくて良い大型開発や千葉駅西口再開発、蘇我スポーツ公園整備、本庁舎建替え、IR調査費などを見直すこと。

 第6に、予算の重点を、市民生活の安定のために次の項目に重点を置くことです。

 福祉の維持向上を図ること、防災・減災対策など、安心・安全の街づくり、行き届いた教育、生活密着・循環型事業で元気な千葉市、情報公開・説明責任・市民参加の徹底。という以上の基本方針に基づいて新年度予算を見直し、事業の復活のために予算の組み替えを行なうというものです。

次に各局についての指摘を述べさせていただきます。

<総務局>

 まず、総務局についてです。

 防災の面では、マンホールトイレが、60箇所予算化されましたが、学校への設置を急いで実施するとともに、公民館やコミュニティセンターなど重点的な避難所には非常用井戸と電源を確保したマンホールトイレの設置をすべきです。

 職員の給与カットの問題です。課長級の職員で約31万円、係長級の職員で約12万円、全職員平均で約11万円の減額となり、退職手当の水準引き下げによる影響を含めると約18億4千万円もの影響額に及びます。市長のトップダウンは、組織としての在り方に支障をきたすものです。職員、組織を大事にした上での対応を求めておきます。

<市民局>

 市民局についてです。住民記録オンラインシステムほか改修は、共通番号制度いわゆるマイナンバー制度であり、「行政の効率化」の名によって個人情報を番号で照会できることになります。最高裁は「情報統合」しないことを前提に合憲判決出しています。税や年金、社会保障などの個人情報の「情報統合」ができるマイナンバー制度は、徴税強化や社会保障削減の手段とされかねない制度であり、情報漏えいの危険性もあり、導入中止を求めます。

 高原千葉村については、「施設が老朽化して改修にお金がかかること」や「行政が保養施設を運営するのはどうか」という理由で、みなかみ町に譲渡する方針です。建設時には新治(にいはる)村と地権者、村民の協力のもと整備されて、地元の雇用にも大きく貢献してきました。継続を望む地元住民の声や意見を聞き、必要な改修は市が責任を持って行ない、今後も継続するよう求めます。

<保健福祉局>

 保健福祉局についてです。

 千葉市和陽園については、建物の無償譲渡というには千葉市が十分責任を果たしているとは言えませんが、今後も高齢者の虐待の相談など引き続き取り組むようですので、こうした事業は市が責任を持って積極的に進めていただくよう求めます。

 介護保険制度は、要支援者を保険給付から外し地域支援事業に移行することや、特別養護老人ホームの入居要件が要介護3以上になるなどの改悪が進められようとしています。老老介護や認知症などで在宅生活が困難でも、必要な介護サービスを受けられなくなる深刻な状況です。一人一人の生活実態に十分配慮して対応することが求められます。

<こども未来局>

 こども未来局についてです。

 子ども子育て支援新制度について、2015年4月からの本格的な実施を受けて、自治体として保育の公的責任を果たすことがますます重要になってきます。

 千葉市は、待機児解消を掲げてはいますが、庭のない保育所、鉄道の高架下の保育所整備など、環境面も、また認可外を認可として認めていく在り方では、株式会社が、増大し、保育の質の低下も懸念されます。新児童福祉法第24条1項で、市町村の保育の責務が定められており、公立保育所を認定こども園への移行は避けるべきです。各小学校区単位などで、区域を設定することを求めます。

 子どもルームについても、慢性的な指導員不足で、職員の待遇改善は急務です。施設の増設はしていますが、大規模なルームばかりで「第二の家庭」というには程遠い状況となっています。小学生全体が利用できるようにしていくには、人も財源も確保しなければなりません。

<環境局>

 環境局についてです。再生可能エネルギーの導入の推進について、千葉市は太陽光・太陽熱・地中熱利用としていますが、再生可能エネルギー設備の技術開発も今後進みます。地域固有のエネルギー源を活用し、市民、事業者の協力のもと、地元経済の活性化につなげるよう求めておきます。

 PM2.5対策では、測定体制の整備とともに、発生要因とされている工場や自動車の排ガスなどの原因物質を取り除く対策が必要です。また、ナノ粒子による人体への影響への対応が求められています。

<経済農政局>

 経済農政局についてです。企業立地助成については、千葉市に立地した企業へヒヤリングなどでは、「立地の決め手」は「交通アクセス」「事業展開のしやすさ」「助成内容」となっています。立地企業には、地元貢献や地元雇用、地域との共生が必要です。商店街や中小企業の振興にこそ力を入れるべきで、商店街・中小企業対策費を抜本的に増やすよう求めます。

 農政については、農政センターの指導体制を確立し、新規就農者や農業後継者対策予算を増額することとあわせて、価値のある農産物を生産し、付加価値をつけて販売までつなげる6次産業化に向けて、農政センターの役割は重要になっています。農政予算についても予算を増額するよう求めておきます。

<都市局>

 都市局についてです。

 大地震の起こる確率が、県庁所在地の中で千葉市は最高の77%であり、耐震化への対策は、充実することが求められています。ところが、耐震診断、改修助成を、昨年度より助成枠が100戸から50戸に削減したのは昨年の実績から決めたようですが、積極的な普及目標を設定し、予算を増やすなど抜本的な強化を求めます。

 市営住宅過大徴収家賃等返還についてですが、調査の現状では、郵送が戻ったもの147件、送り先不明168件、計315件が不明となっており、重大なミスであることを自覚し、その教訓を学び、再発防止を求めるとともに、最後の一人まで返還するよう指摘しておきます。

<建設局>

 建設局についてです。

 急傾斜地崩壊対策についてですが、補助制度があっても工事金額が大きく、個人負担5〜4%とはいっても60〜80万円にもなるため、長期間実施できずにいる地域もあります。補助の充実を求めます。

 防水板補助制度については、昨年、台風で水害が多発していながら、予算の削減は問題です。増額を求めます。

 また、引き続き土木事務所予算の大幅な増額も求めておきます。

<水道局>

 水道事業については、水需要を過大に見積もり今後人口増が見込めず、一人当たりの水需要も減っている中で、霞ヶ浦開発事業と房総導水路事業に負担金を払うことは問題です。専門家や市民を交えた委員会をつくり、抜本的に見直すよう求めます。

<教育委員会>

 教育委員会についてです。

 教育委員会制度についてです。安倍政権では、教育行政を首長が決定するような方針をだし、教育への政治介入が押し付けられようとしています。沖縄県竹富町の公民教科書の採用をめぐる問題で国が圧力をかける事態も発生しています。教育が不当な支配とならないよう開かれた民主的、自主的かつ専門的な権限と機能を持った教育委員会としての役割が求められます。

 学校施設は、耐震化の目途はつきましたが、老朽化対策は30年間で740億円が必要と言われており、前倒しで予算化することが必要です。夏場、エアコンの整備は、政令市20市中8市で実施し、新年度福岡市でも実施予定です。千葉市でも早期の実施を求めます。

 わかる授業、きめ細かい教育を行い、いじめをなくしていくためにも教職員を大幅に増員し、負担を軽減し、特別支援については、正規の教員配置の改善を求めます。

 こてはしの給食センターをPFIで導入しても、アレルギー児への対応は行われません。対策を講じるよう求めます。

 発議1号千葉市福祉の心に基づくプログラム検討委員会設置条例の制定について

 この条例は生活保護受給者などが、自立ができるように福祉の心でプログラムを検討すべきだと提案したものです。「福祉の心は大事で否定するものではない」と他会派の委員からの意見がありながら、条例の制定に至らず残念です。今後、千葉市でも福祉現場の職員に先進自治体の取り組みを学び人間としての尊厳を基本にした福祉行政に活かすことを求めておきます。

 請願第1号就学援助制度の充実を求める請願は、経済的に困窮している家庭のために所得基準を生活保護基準の1.2倍以上に引き上げることや申請窓口を市役所や区役所にもつくることが要望されています。

 20市中、1.1倍以上が13市あり、千葉市は低いままです。申請窓口についても、大阪の吹田市では、4月に本庁で、申し込みの月間を設け、書類提出も可能としており、学校代行手続きという制度を作り、申請漏れをなくす等現場への負担を軽減するように実施しています。千葉市は、学校を窓口にしているのは14市、学校、区役所、教育委員会が窓口は6市であり、学校外が少ないから実施しないというのは、道理がありません。「義務教育は無償」の立場で対策を講じるべきです。

 公明党は、「1.2倍には2,200万円かかる。財源確保は厳しい。教育の充実確保は必要だが総合的に判断して反対。」民主党は、学校の先生の負担軽減、検討すべき事項を指摘しつつ今すぐできる段階ではないと反対し、自民党は、昨年の6月議会と環境が変わらないので賛成しかねると反対したことは、極めて遺憾です。

 請願第2号子ども医療費助成制度に関わる請願

 新日本婦人の会から、窓口での自己負担をなくしてほしい。県に対して、中学3年生まで通院医療費を助成するように要請してほしいとの主旨でした。

 請願者からも、アンケート結果では、無料にしてほしい思いが、反映されず、経済格差が健康格差になってはならないし、群馬県での医療費無料化で重症化を抑制し、時間外受診が減少しているとの指摘はその通りです。

 市は、支払いが困難で受診できずにいる実態については把握していませんでした。

 今後自己負担の軽減策を取組むべきです。公明党や民主党の議員も、議案の審議では、県が負担を軽減するようにと指摘もありました。千葉市の子どもたちが、安心して医療にかかれるように自己負担をなくすべきです。

 請願3号・敬老会補助金制度の見直しを求める請願です。

 敬老会については、請願と陳情が一本ずつ出されました。敬老会の主催者から「開催経費が負担で、来年の実施は見送る苦渋の決断をした。」「出席者だけ補助金の対象者とすることは認められない。補助金の格差が58倍もの不公平な制度であり、元に戻すよう求める」が不採択になったことは極めて遺憾です。敬老の日が「多年にわたり社会に尽くしてきた老人を敬愛し、長寿を祝うことを趣旨としている」精神を尊重し、敬老会のあり方をもとに戻すよう求めます。

 請願4号・国民健康保険制度の充実を求める請願です。

 4月から新たに70歳になった人から、医療費の窓口負担が2割負担になり、深刻な受診抑制につながりかねません。保険料は告示方式で毎年引き上げられ市民生活を圧迫し、所得の1割を超える高い保険料こそ問題です。国に国庫負担の増額を強く求めるとともに、一般会計からの繰り入れで「払える保険料」にすることを求めておきます。