野本信正議員の討論



2015.9.15

写真 日本共産党市議団を代表して、提案された19議案中、議案第117号、第110号、第120号、第121号、第126号、第127号、第130号について反対することと、発議第7号が否決されたことに対して、および請願第4号と第5号が不採択になったことへの討論を行います。

1.議案第117号、千葉市行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律に基づく個人番号の利用に関する条例の制定について、いわゆるマイナンバーについてであります。
 日本国内に住民票をもつ全員に番号を割り振り、国が情報を管理するマイナンバー制度の本格的運用に向け、条例が提案されました。
 10月5日から番号を市民に知らせる「通知カード」の郵送を開始し、個人番号の利用がH28年1月1日から開始されることになっています。
 問題点の1は、市民の理解が極めて不十分な下ですすめようしていることです。 内閣府によるマイナンバーの認知度調査によれば、内容を知っていると答えた人は43.5%であり、千葉市民の多くは制度を詳しく知らず、むしろ情報漏れへの不安を広げています。企業の対策も遅れています。
 過半数の国民、千葉市民の理解がない状態で、厳重な保管が必要な番号の通知を始めることは、個人情報を危険にさらすことになり、実施することは到底無謀だといわなければなりません。
 問題点の2は、マイナンバーの目的は、政府が国民一人一人の社会保障と保険料、税の納付状況を一体的に把握・監視して、徴税強化と社会保障の抑制、削減に活用していくことであり、国民にはデメリットばかり目立つことであります。
 市は、行政手続きが簡素化してサービスが向上すると説明しますが、公的年金の申請の際、複数の書類をそろえる手間が省けるなどの事例は、1年に1回あるかないかでしかありません。
 また国は、国民の所得・資産を効率的に把握し、「公正な社会、課税と交付」のために必要だといいますが、公正な課税とは徴税を一層強化することが目的といわれています。交付の公正とは社会保障の抑制・削減であり、改定介護保険法に見られるように、利用者負担を所得によって負担を2倍にしたり、要支援者の保険外しなど、社会保障制度をどんどん削っていくためにマイナンバーを活用するものです。
 その狙いを示しているのが、政府が財政制度審議会に提出した資料であり、そこには「マイナンバーも活用しつつ、所得だけでなく、高齢者を中心に、預貯金等の金融資産も勘案して、負担能力に応じた負担を求める」と書いてあります。
 このように、個人の金融資産を把握して、医療や介護の負担を引き上げる狙いが露骨であり、国民にはデメリットしかないことが明白であります。
 問題点の3は、情報流出のリスクが高く、流出により悪用されたり、個人のプライバシー侵害の危険が大きくなることです。
 第1に、現在は年金や税金、住民票などの個人情報は、公的機関ごとにそれぞれ管理されていますが、マイナンバーで各情報を一本に結び付けることが可能になります。行政側からすれば、国民の所得、社会保障給付の状況を効率よく把握することができます。しかし、国民にとっては、分散していた個人情報の収集を容易にするマイナンバー情報が、ひとたび外部に漏れだせば、悪用され、個人のプライバシーが侵害される危険が飛躍的に大きくなることです。
 10月からの番号通知後、来年1月からの税金事務、雇用保険などの事務で使用する計画です。顔写真入りの「個人カード」を希望者に発行し、身分証明書として使えるとか、改定法は、健康情報や銀行口座などとマイナンバーを結び付ける民間分野への拡大か盛り込まれています。報道されている消費税率10%の還元は、買い物のたびに持ち歩くことになり、他人には見せてならないマイナンバーを持ち歩くことは、情報漏れリスクを高めることになります。置き忘れや紛失の心配もあります。
 年金情報漏れ発覚後、政府が地方自治体を緊急調査したところ、情報保全措置が不十分な自治体が発覚しましたが、マイナンバー運用まで間に合う保障はありません。マイナンバー情報が流失した場合、被害の大きさと深刻さは計り知れません。情報漏れに対して、「万全とか絶対安全」ということはありえません。
 第2に、成りすまし被害の問題です。
 市は、マイナンバー情報は厳格に管理されているから安全と言いますが、制度上成りすましが付け込む隙間が幾つもあることです。
 特定個人情報の開示・訂正・利用停止請求に係る代理人について、法定代理人又は任意代理人の制度があります。近年、認知症の患者など自分で申請できない人が増えています。任意代理人は税理士など公的資格を有し、委任状と身分を証明する免許証などが必要になっていますが、そういうシステムをくぐり抜けての情報漏れは少なくありません。
 自宅のパソコンから行政機関のマイナンバーの付いた自分の情報を確認できる「マイナポータル」も隙間の一つです。
 市は、セキュリティ対策としてログイン方法採用といいますが、住基ネットでは4年間で226件、なりすまし103件の被害が確認されています。
 問題点の4は、民間企業は大変です。
 従業員や家族のマイナンバーを集め、罰則付きで厳格に管理することが求められている民間企業で、対応できるのは大企業など一部であり、中小企業や零細企業は業務の煩雑さや出費の重さ、厳罰化などに頭を抱えています。
 ちなみに、千葉市の企業数は17,260社で、うち大企業は0.3%、残りは中小企業です。そのうち個人経営は7,769社で約45%であり、マイナンバーへの対応は困難の極みであります。
 問題点の5は、費用対効果についてであります。
 マイナンバーに係る千葉市の費用は16億円と答えています。
 国全体では3,000億円といわれて、情報産業は3兆円の市場だと言っているそうです。マイナンバー情報で国が国民を監視して、課税強化と社会保障を削減し、さらに国民は、プライバシー侵害の危険を負わされることになるのです。3,000億円の費用負担は、市民の利益に反する投資であり、費用対効果は無く、無駄使いであります。しかも、情報産業の利益を保障するようなことは許されません。
 次に、住基ネットとの関係です。
 マイナンバー開始で住基カードは廃止されますが、千葉市が住基ネットに使った費用は3億円、カードの交付実績は市民の7.3%でしかありません。
 国の場合390億9,300万円、平行して130億円の交付税措置で合計530億円も使って短期間で廃止する、効果のない、大変な無駄遣いだと指摘しておきます。
 最後に、過半数の国民、千葉市民の理解がない状態で、厳重な保管が必要な番号の通知を始めることは、個人情報を危険にさらすことになり、実施することは到底無謀だといわなければなりません。
 政府が、国民一人一人の社会保障と保険料、税の納付状況を一体的に把握・監視して、徴税強化と社会保障の抑制、削減に活用していくことであり、国民にはデメリットばかり目立つことであります。
 情報流出のリスクが高く、流出により悪用されたり、個人のプライバシー侵害の危険が大きくなることです。
 通知カードの郵送を見送り、来年度からの実施を中止するよう強く求めます。

2.議案第118号、千葉市個人情報保護条例の一部改正については、
 マイナンバーの目的外利用で、本人の同意を得ることが困難である場合の規定及び、任意代理人については、なりすましの隙間をつくる懸念があるため賛成しかねます。

3.議案第120号、市税条例の一部改正については、
 税金の申告に、マイナンバーの個人番号を記載することの規定であり、情報漏れのリスクを広げることになるので反対です。

4.議案第121号、千葉市老人福祉センター及び老人ディサービスセンター設置管理条例の一部改正については、
 運営を市直営から外郭団体に移行することによって、コストカットを計ることが目的であり賛成できません。当初の目的どおり、公的運営を行い、老人ディサービスセンターのサービスを維持・向上することを求めます。

5.議案第126号、新たに生じた土地の確認、及び127号、町の区域の変更についてです。
 本件は、中央港地区に旅客船桟橋を建設するための埋め立てによるものであります。中央港地区が、オフィスビルが立ち並ぶ当初計画から大きく変更されて、老人ホームとマンション、パチンコ店が雑多に林立する街になってしまい、旅客船桟橋建設は立地条件が不具合であることと、旅客船入港の展望もありません。
 こんな事業に40億円以上の大金を注ぎ込むことは無駄使いであり、この事業の一部である本件には賛成できません。

6.議案第130号および131号、工事請負契約について(旧千葉市立磯辺第一小学校解体工事)
 旧千葉市立磯辺第一小学校解体工事を行った後に、用地を千葉県企業庁に返還するとの説明でありますが納得できません。
 学校跡地に対して、地元からは、高齢者施設や子育て施設の設置要望が、市と議会に提出された経緯もあります。にもかかわらず、市は「活用計画なし」として、返還することは住民無視であります。
 また、美浜区は埋め立てでできた街であり、今後、公共的な土地利用が生じた時に求める土地はありません。千葉市の街作りの立場からも、学校跡地を返還すべきではありません。
 工事請負契約については、不自然な入札であることを指摘しておきます。
 両議案とも、応札者は同じであり、落札者以外、1社は予定価格の超過、1社は入札参加資格がないため無効など、およそ競争した形跡が見当たりません。
 落札者は小梛組と市原組のJVによるもので、違いは代表者の組み合わせが変わっているだけであります。当局は、「競争の結果である」と説明していますが、両議案は工事請負契約で求められている「競争性、透明性」に著しく欠けることは明白で、いわゆる「出来レース」の感が濃厚であり、極めて不自然な入札であることを指摘しておきます。

 発議7号・心身障害者の医療費の助成に関する条例の一部改正について
 医療費の助成が償還払いから現物給付に変更されたことは、そのために一貫して努力してきた関係者等の努力の結果であります。しかし、現物給付になったことにより手数料が課せられ、負担増を押しつけることは医療費無料化に矛盾し、理念に反します。条例の一部改正は、この矛盾を解消することであり、障害者の利益を尊重する人ならば誰でも理解できるものであります。まして、障害者の立場をもっとも理解しているはずの市議会員が、同意するのは当然であると思います。
 発議に反対することはやめて、障害者の期待に応えるよう強く求めるものです。

 請願第4号・小中学校の普通教室にエアコンの設置、老朽校舎・トイレ改修を求める請願の不採択に対して意見を申し上げます。
 6月議会に続いてエアコンの設置を求める請願が出されました。意見陳述の方から、「授業中に倒れた子どもがいた。エアコンのある図書室で授業を受けさせている実態もある」と現場の悲鳴の声が聞かれました。教育委員会では、熱中症予防の対策は講じているものの、そうした実態などの把握を詳細に行なっていないことが明らかになりました。ところが千葉市では、学校の老朽化やトイレの洋式化などの施設整備を強調し、エアコンについては音楽室や特別支援学級や特別支援学校への設置に留まり、実施しようとしていません。
 未来民主ちばは、「生徒さんも大変だが老朽化も大変かかる」と言い反対、無所属の会は、「エアコンの必要性はある」としながらも、予算の問題で反対、公明党は、「4千を超える署名を受け止める、緊急性は高い。昨年の請願の採択重く受け止めるべき」と言いながら、反対、自民党は、「昨年の請願は全会派賛成している。市はどう受け止めているのか」と教育委員会に迫っていますが、「同じものを出していることで問題がある」として反対し、共産党、市民ネット以外の反対で不採択となったのは、極めて遺憾です。
 子どもたちの健康と命を最優先し、本庁舎建設を急ぐよりもエアコン設置を早急に実施すべきです。

 請願第5号・「放射性物質を含む指定廃棄物処分場の選定の撤回を求める請願」が不採択になったことについてです。
 請願に対して、市民ネットは賛成しましたが、他会派の各委員からは「再協議を求めているので請願には反対」、「『再協議』決議を自民・公明・未来民主で出しており、分散管理を求めている立場なので賛成しかねる」などの理由で反対したことは、大変遺憾です。
 千葉市も議会の決議と同様に、国に対して「指定廃棄物を排出自治体内で保管を行うための再協議を求めている」、「申し入れに対する回答があった場合は、その内容を踏まえ、議会と相談しながら市民の安全を第一に判断する」との立場です。
 しかし、市民の願いは明確です。千葉市町内自治会連絡協議会は7月29日、「選定反対」を表明しました。そして、選定方法・評価基準の設け方、いずれも妥当ではなく、候補地の選定は白紙に戻し、選定方法を改めた上で再選定し直すよう、環境省に申し入れること。今後、地域住民の意見をよく聞くとともに、前面に立って国と交渉することを市に要望しています。市連協はもとより、どの住民説明会でも市民は「選定に反対」「白紙撤回」を求めているのです。
 栃木県塩谷町が町ぐるみで「白紙撤回」を求めているように、市民、議会、市長が一体となって「白紙撤回」を求めることが、国の計画を変更させる力となるのです。あらためて、議会は民意に従い「白紙撤回」の立場に立つよう求めます。

 最後に、台風17号・18号による被害についてであります。
 記録的な豪雨により、鬼怒川の決壊で大変な被害を受けられた、茨城県常総市の皆さんや全国の被災者の皆さんに、心からのお見舞いを申し上げます。国や関係自治体が全力を挙げて救助と復興を行うことを願うものです。
 千葉市では、6日に発生した突風による被害で、中央区今井地域の皆さんなどが大きな被害を受けられました。心からのお見舞いを申し上げます。
 千葉市は、関係職員が住民の皆さんの要望に応えて、献身的な救援活動を行なってきたことに、敬意を表します。今後は、家屋などの復旧に公的支援ができるよう、あらゆる可能性を追求して、住民の期待に沿えるための努力を期待します。