中村きみえ議員の決算討論



2015.10.1

 写真会派を代表して2014年度決算議案22件中12件について不認定の立場から反対討論を行います。
 H26年度決算審査に当たり私どもが基本とした視点は、地方自治法の本旨である住民福祉の増進が図られた決算であるのかないのかです。
 第一の理由は、安倍政権の暴走政治への防波堤としての役割が果たせていないことです。安保法制、いわゆる戦争法が、強行可決され、消費税増税、年金が引き下がり、医療費改悪、介護保険の制度改悪や、TPP推進による農業破壊や原発の再稼働を進めるなどあらゆる分野で暴走政治が行われています。
 決算質疑で熊谷市長は、戦争法案の今国会での成立を懸念していましたが、恒久平和を願い、市民の命を守る立場の市長ならば、今後は国に毅然とした主張をするべきです。
 市民の暮らしは、ますます苦しくなるばかりですが、こうした国の暴走政治に地方自治体として住民の暮らし、福祉を守る防波堤としての役割を果たすよう求めておきます。
 第二の理由は市民負担増、福祉カットの決算だからです。
 見直しと称して市民福祉を削った事業の決算は、11件1億3,800万円で、H22年度からの合計は111件17億8,200万円にもなります。
 また、公共料金値上げなど市民負担増の決算は、国民健康保険料や下水道使用料など64件19億3,500万円で、H22年からの合計は117件83億4,600万円になります。
 このように、福祉カットの26年度決算合計は20億7,298万円で、熊谷市政5年間の合計は101億2,872万円となります。
 さらに、H22年度国民健康保険特別会計への繰入金、約40億円カット分を加えると、合計141億2,872万円の福祉カットが行われました。
 一方、大型開発事業の決算は21億7,800万円で、H22年度からの合計は、227億100万円になります。
 以上、明らかなように26年度決算は、福祉を削る一方で、大型開発に多額の事業費を注ぎ込むものであり、地方自治法の本旨「住民福祉の増進」とは全く逆方向の決算を認定することはできません。そして、熊谷市政5年間が、市民に背を向けた市政運営を続けてきたことに対して、厳しく批判するものです。
 第三の理由は、引き続き財政危機でありながら本庁舎整備などを急ぐ決算だからです。一般会計では、実質収支29億7,200万円の黒字ですが、実質公債費比率は18.4%で前年と変わらず、将来負担比率も政令市ワーストのままです。
 脱財政危機宣言の取り組みで財政健全化が「道半ば」まで到達して、ある程度の改善が進んだという財政を、今まで削減してきた福祉の向上に使わず、本庁舎整備などに注ぎ込むことは市民の願いに反することです。
 市は、「早期健全化団体」転落を回避した。財政状況の改善について「6年ぶりに
連結実質赤字比率が解消」「4年連続で市債残高を100億円以上改善」「実質公債費比率が最も高かった21.4ポイントに対して、3ポイントの減」などを示し、「財政健全化が道半ば」と評価しています。
 財政健全化が「道半ば」まで改善した背景には、徹底した歳出削減があり、先ほど述べたように、この5年間で市民福祉を141億2,872万円も削ったことや国民健康保険事業への繰入金約40億円カットなどによるものです。また、職員給与カットは5年間で70億8,000万円になっています。
 このように、財政健全化は、市民と職員の犠牲の上に改善しているのが実態です。 ある程度改善したのなら、その財源で一番にすることは、我慢と負担を押しつけた市
民の福祉向上に踏み出すことです。
 ところが、熊谷市政は27年度も引き続き、国民健康保険料の引上げ、介護保険の
利用料引上げなど、福祉カットを進めていることに強く抗議します。
 財政健全化が「道半ば」と説明しますが、千葉市の財政状況は全国ワーストであり、厳しい状況は今後も続きます。財政見通しのない、旅客船桟橋事業に40億円も注ぎ込み、耐震補強で維持が可能な本庁舎に298億円で建て替え計画を急ぐなど、大型開発への執着を転換するよう求めます。そして、子どもたちの健康を守るため、小中学校へのエアコン設置など、緊急課題にこそ取り組むべきです。
 なお、税収の確保や地域経済の活性化については、特養ホーム建設・住宅リフォーム助成制度創設など、福祉型・地域密着の事業を展開して、町場の仕事と雇用を増やし、福祉を向上させ、税収も増加する循環型経済への転換を強く求めておきます。
 本庁舎整備については、財政危機のもとで急ぐ必要はありません。
 千葉市と同じか、もっと古くIS値がクリアされていなくても、建て替えできない自治体はたくさんあります。千葉市民の財産をもっと大切に使うべきです。
 先般視察した京都市は、築82年の本庁舎を建て替えではなく、地下一階を免震構造に改修して、100年以上も大切に使用するとしています。
 築82年の京都に比べ、築45年の千葉市が「何がなんでも建て替える」と言うことは、財政の不適切な支出であり、市民の理解も得られません。耐震改修で引き続き活用するよう重ねて求めておきます。
 放射性物質を含む指定廃棄物の最終処分場の問題についても、市民は圧倒的多数が白紙撤回を求めているのに、排出自治体で保管を強く求める立場を主張し、市長自ら白紙撤回を求めようとしません。東電と政府の責任を明確にし、市民参加、情報公開、説明責任を果たし、白紙撤回を主張すべきです。
 マイナンバーではシステム改修などで2億3700万円の経費となり、10月から、各家庭にマイナンバー通知カードが発送されますが、社会保障費の削減と税の徴収強化をすすめ、プライバシー侵害や犯罪の恐れのあるマイナンバー制度については、今からでも中止すべきです。
 次に、各局への指摘を行ないます。

総務局
 防災について、台風や土砂災害への対応について決算では、先の台風17号、18号と関連する大雨災害への予防対策として、急傾斜地関係者への避難勧告の発信など行ったことが報告されました。
 また、審査の中で中央区今井地域の突風被害に関する発言もありました。この際、自然災害による被災者への公的支援や見舞金などが、国や県の制度では該当しない実態を改善して、千葉市独自の公的支援制度を早急に実現することを強く求めます。
 職員については、職員のやる気を引き出し、能力を発揮できる職場環境にしていくこと。適正配置では、忙しい職場への増員や社会援護課ケースーカーのように、定数がありながら充足していない職場を急いで改善すること。女性の活躍を広げていくことなどを求めておきます。
 行政改革についてですが、市が進める行政改革は、主に市民サービスカット、負担増によって歳出を抑え、福祉を後退させていることを「行革効果」とするものであり、認めるわけにはいきません。行政改革は、無駄と浪費を削り、簡素で効率的な行財政運営を行うものであり、財政危機のもとで、多額の財政を注ぎ込む大型開発を見直すことです。また、千葉市水道事業の赤字補填に、一般会計から毎年8億円余を繰り入れて、累積赤字は170億円を超し、今後も増え続ける深刻な事態を改革すべきです。

総合政策局
 都市アイデンティティ調査について、当局は千葉氏や加曽利貝塚、大賀ハスなど千葉市のブランドとして、市民のアイデンティティを醸成していくことを強調しています。 アイデンティティの醸成は、地域資源を中心とした取り組みだけでなく、市民の多様な意見、様々な魅力を豊かに発展させることが必要です。
 幕張新都心、IRカジノ調査500万円についてですが、市長は「幕張新都心の魅力向上にIRが必要」「経済効果も大きい」とのべています。しかし、カジノは刑法で禁止されている賭博であり、負けた人のお金を当てにする不健全な考え方です。
 リスクは大きく、実施している国の実態を見れば、ギャンブル依存症、マネーロンダリング、青少年への悪影響など極めて深刻な事態が広がっています。
 幕張新都心のコンセプトの中心は「健全な新都心」であり、ギャンブルは絶対必要ありません。カジノ解禁法案の行方も不透明であり、500万円の 調査費は無駄遣いであり、IR・カジノの取り組みはきっぱり中止すべきです。
 県市間協議については、不公平な扱いを受けている県単独事業補助金の是正に、真剣に取り組むことを求めておきます。

市民局
 平和行政について、今年は戦後70年という節目の年です。戦争の悲惨さや平和の尊さを市民の中に広げていくとともに、憲法遵守義務のある自治体として、平和啓発パンフレット「考えよう平和の大切さ」や、毎年行われている千葉空襲パネル展などの取り組みに、日本国憲法の前文掲載や戦争の教訓について明記することを求めておきます。
 性的マイノリティへの誤解や偏見が根強く存在します。そのもとで、自分の自然な性的指向や性自認を否定的にとらえ、強い疎外感や社会不信、自己否定の気持ちにかられる人もいます。こうした人たちも、同じ一人の人間として、堂々と「自分らしさ」を主張でき、個性豊かに暮らせる社会をつくることが求められています。
 専門相談窓口設置や体制を構築するなど、市の対応を求めておきます。

保健福祉局
 民生委員は、地域福祉において重要な役割を果たしています。地域福祉増進のため、民生委員の負担軽減を進めるよう求めます。
 障がい者の就労移行については、強制とならないように、一人ひとりの状況を踏まえた上で、援助・支援を進めるべきです。その際、心身ともに健全となることに重きを置いて指導に当たることを求めます。
 千葉市精神保健福祉審議会は、精神障害者の自立を促していくことが重要だと考えます。そのためにも、当事者も委員に入れた委員構成になるよう改善を求めます。
 特養ホームは、約2千人の待機者が依然として続いています。施設の配置バランスも考えて設置するよう求めます。
 介護保険制度の改定により、サービスを受けられない高齢者の増加が考えられます。市として独自の支援と対策をするように求めます。
 生活保護受給者は度重なる生活扶助費等の削減で、切り詰めた生活を強いられています。さらなる不安と負担を押し付ける住宅扶助費削減は許せません。経過措置を最大限活用し、自立助長にならない転居を一律に指導しないよう求めておきます。

子ども未来局
 保育所の待機児童解消のために、小規模保育も含め庭のない環境での整備が目立ちます。保育士の待遇改善を図るとともに、保育の質向上を行なうべきです。
 子どもルームについては、高学年ルームのおやつ提供がされず、エアコンのない教室での保育、台風で閉所する運営方針に保護者から不満が寄せられています。待機児童を抱える学校に、さらなる専用ルーム増設や保育環境改善が求められます。指導員不足も深刻化し、経験給の導入含め、国の支援金を活用して待遇改善を図り、本来の子どもの学童保育健全育成の観点にたった運用計画策定を求めます。
 子ども医療費助成については、千葉市では中3まで通院医療費負担が500円で受診できるよう拡充されたものの、政令市では9市は上限を設定し、無料化している自治体もあります。保護者負担軽減のために、無料化すべきです。
 ひとり親家庭支援について、必要な世帯が必要な支援を受け、社会的、経済的な自立ができるよう周知と相談体制のさらなる充実改善を求めます。

環境局
 再生可能エネルギーの導入・普及は、一層の推進が求められています。エネルギー効率の引き上げや省エネの徹底を図ることが必要です。太陽光発電設備設置の事業者と周辺住民の間で軋轢や紛争が起こることは望ましくありません。地域住民や周辺環境に配慮した対策が求められます。

経済農政局
 昨年度、先行実施されたプレミアム付き商品券など、本来必要とする低所得者層への対応がなされませんでした。今年度も同様です。今後、実施予定はないとのことですが、地域経済の活性化につなげるのであれば、これからの活性化事業は、生活保護世帯や低所得者への対策を優先的に検討することが必要です。
 昨年6月、小規模企業の活力発揮の必要性が増大していることから、小企業者を含む小規模企業について、事業の持続的な発展を図ることを位置づけ、小企業者の円滑かつ着実な事業の運営を適切に支援することを定める小規模企業振興基本法が制定されました。小規模企業では、「労働力の確保」「公共料金の引き下げ」「単価の引き上げ」などが求められています。悉皆調査を行なって、事業者の実態や要望を把握し、地域経済振興につなげていくことを求めておきます。
 農政については、農政センターの役割である指導・相談体制、センターの職員体制を確立し、新規就農者対策や農業後継者対策予算を増額など農政全体の予算を増額するよう求めておきます。

都市局
 千葉駅西口地区再開発は、A工区にすでに746億円、B工区は今後整備する計画です。巨額を投資して集客とにぎわいを創出することについては、その効果について十分な検証が必要です。JR千葉駅の建て替えに伴いモノレール駅改札とのバリアフリー化が進められていますが、集客を千葉駅周辺でのみ完結させることなく街全体の活性化につなげるため、地元商店街の意見を十分に反映させ、今後の計画に活かすことが不可欠です。
 市営住宅については、貧困と格差が広がる中、低所得者層を含めて受け皿となる公営住宅の役割はますます大きくなっています。困窮する入居者の状況をよくつかみ、良好で安定した住環境の整備に努めることを求めます。

建設局
 1時間あたり53.4ミリメートルを超えるゲリラ豪雨がめずらしくない事態となっています。低い土地への浸水被害を最小限にするため、公園や学校の敷地等を利用した貯留施設を整備し、一気に流れ込まないような対策をとること。また、各家庭の対策である防水版の設置にかかる補助金の負担を少なくして、普及に努めるよう求めておきます。
 土木事務所では、道路等の生活環境に関する要望が、ちばレポを含めて1万3千件を超えて寄せられており、より一層、十分な予算と職員体制をもって対応を図る必要があります。
 自転車走行環境整備については、道路交通法の改正により自転車が車道を走ることによる安全対策が課題となっています。「ちばチャリ・すいすいプラン」で計画的に自転車レーンの整備を進めるとのことですが、危険性の認められる箇所については、優先的に整備を行なうよう求めておきます。

消防局
 複雑多様化する消防需要に対応するため、女性消防職員の増員、職場環境の充実とともに、日中、地域にいる中学生に防災の協力を呼びかけるなど、救急現場で活躍する人材の幅を広げることを求めます。

水道局
 H26年度決算額で、一般会計からの繰り入れは、収益的収支7億9,500万円、資本的収支1,300万円で、合計8億800万円です。昭和44年度の旧土気町との合併から、平成26年度までの一般会計繰入金の累計額は176億円、企業債未償還金残高は206億円であり、合計額は382億円となります。
 一般会計からの繰入金は多大な赤字経営が問題となっています。給水原価に対する負担解消のための協議等引き続き行ない、過大な水需要の計画見直しを求めておきます。

病院局
 両市立病院は、自治体病院倫理綱領に基づいた運営に務め、公立病院としての役割を担わなければなりません。医師・看護師不足及び職場環境の改善を図り、職員の負担軽減を進めるように求めます。

教育委員会
 学校へのエアコン設置については、子どもが授業中に倒れる、図書室で授業せざるを得ない、保健室で通わざるを得ない実態について把握せずエアコン設置をしようとしないのは問題です。そもそも一人当たりの教育費では千葉市は下から2番目であり、教育費の抜本的増額をし、学校の老朽化、トイレの洋式化と併せてエアコン設置を強く求めておきます。
 小中学校において、いじめ、不登校や発達障害等様々な支援を必要とする児童生徒が増加しています。現場職員への研修強化はじめ、指導員派遣の要望を満たしきれてない現状もあることから、更なる指導員の増員をはかることを求めます。
 幼稚園就園奨励費は、消費税増税等の影響や、保育料値上げなど保護者負担が増すため、支払い方の改善と更なる増額を求めます。
 学校の統廃合については、この間、小学校7校、中学校3校が統合し、売却済み、予定が4校で、活用予定もいまだに未定の学校もあります。県に返還するよりも、地域住民に還元できるような跡地の活用を有効に行なうことを求めておきます。

選挙管理委員会
 投票率向上について、全国の先進的な取り組みに学ぶとともに、若者の選挙への参加や、体が動かないため選挙にいきたくても行けない高齢者の投票率向上に、投票所を増やすことや、期日前投票の改善を行うこと。国に対して郵便投票の改善を強力に行うよう求めておきます。

農業委員会
 農業委員会法が改悪され、議会や団体推薦の農業委員が新任では選任されないようになります。議会選出以外は女性の農業委員は、選出されず、多様な声を反映しにくくなります。農業の今後についてより活性化できるような取り組みの強化が求められます。