中村きみえ議員の「意見書案」への反対討論

2015.12.16

写真 共産党千葉市議団の中村きみえです。会派を代表して、発議第16号「国会における憲法論議の推進と国民的議論の喚起を求める意見書案」への反対討論を行ないます。 この意見書案は、自民党から出されました。私どもは、憲法を議論することに異論はありませんが、今回議会運営委員会の中で、なぜ議論をするのか聞いたところ、委員から日本の近海における問題もある、そのために憲法議論をしていかなければならないと説明がありました。
 自民党は改憲を党是としており、自民党が既に発表している日本国憲法改憲草案には、憲法9条を改定し、自衛隊を国防軍にするとともに、集団的自衛権を認め、交戦権の否認も取り払うものです。また、基本的人権は侵されないとしている現行憲法の97条を廃止し、憲法改定を発議する要件を定める96条は、国会議員の3分の2から過半数に引き下げます。これらは権力を縛る憲法の立憲主義そのものを踏みにじる内容です。
しかし、朝日新聞の11月30日に結党60年を迎えた自民党員への意識調査を行なった中では、自民が党是としていた憲法改正を「早く実現した方が良い」と答えたのは、34%で、「急ぐ必要はない」の57%を上回りました。安倍首相が改憲に強い意欲を示していることと意識の違いも示されています。
 そもそも、今回の意見書採択には、大変危険な政治的背景があります。あたらしい憲法の制定を目指す「日本会議」を支援する日本会議国会議員懇談会は、2013年12月3日の決議で「憲法発議の環境を整えるため、国会において早急に国民投票法改正案を成立させるとともに地方議会での『国会に憲法改正の国民投票実現を求める意見書』決議の推進を各党の方針として明記すること」を政府および各党に対して強く要請しました。これを受けて自民党本部から地方議会で意見書を採択するよう要請があり、その結果、憲法改正の早期実現を求める内容の意見書が全国各地の県議会で採択され、千葉県議会でも今年第1回定例会で「憲法改正の早期実現を求める意見書」が採択されるなど、来年7月の参院選挙後に憲法改正の国民投票実施を目指す流れに沿ったものと考えられます。
 こうしたことを見ても、今議会の意見書は、改憲をめざす憲法議論であり、結果的に戦争する国づくりにつながることは明白です。必ずしも憲法問題について同じ立場でない公明党も賛成することは、市民に理解されるでしょうか。
 今年は、戦後70年の節目の年です。70年前、アジア・太平洋戦争によって日本人310万人以上、アジアの人々2,000万人を超す命を奪い、国土を荒廃させた戦争の傷痕は、消えてなくなるものではありません。日本国憲法前文には、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」中略し、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と誓い、戦争放棄を述べています。
 第2次世界大戦後、発足した国際連合がその憲章で「我らの一生のうちに2度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い」と明記するように、戦争の惨禍を繰り返さないことは戦後の国際社会の原点です。
 とりわけ日本は、自ら引き起こした侵略戦争の責任を認め、憲法9条で世界に先駆けてあらゆる戦争を放棄し、あらゆる戦力は持たないと決めました。そのもとで、再軍備や日米軍事同盟強化の企てはあっても、戦後、日本は一人の戦死者も出さず、他国の国民も殺していません。アジアや中東諸国で日本が信頼されたのも、自衛隊がその国の住民を殺していないからです。安倍政権が、進める改憲は、こうした戦後日本の在り方を根本から転換するものです。
 すでに、昨年7月1日に集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、安保法制、いわゆる戦争法は、史上空前の反対の世論が、巻き起こりました。シールズなどの学生をはじめ、パパ、ママや大学教授、法曹界も含めた広範な各界、各層の圧倒的反対の世論がありながら、9月19日には自公政権が、数の力で押し通すなど憲法違反の戦争法まで強行してしまいました。安保法制いわゆる戦争法については、9月19から21日の毎日新聞、朝日新聞、共同通信の世論調査でも過半数が憲法違反だと答えており、国民の世論は、憲法に基づいた政治、立憲主義を取り戻すことを求めています。
 安保法制によって、アメリカが戦争し、「戦闘地域」に自衛隊を戦地に送り、日本に対する直接の武力攻撃がなくても、アメリカなど他国に対する攻撃で、「日本の存立が脅かされる」などの理由で、海外で「戦争しない」という原則がひっくり返され、日本が「戦争する国」として、「殺し、殺される国」になるのは明らかです。
 パリでの同時多発テロや北朝鮮や中国などの脅威をマスコミ、政府があおっていますが、安保法制が実施され、アメリカの大義のない戦争に日本が、加担することになれば、憎しみが憎しみを生み、日本がテロの標的になりかねません。
 憲法に戦争放棄を明記させ、戦後70年戦争する国を阻止してきたのは、国民です。今行うべきことは、テロ対策への不安から、武力を増強するのではなく、憲法9条を活かして、平和外交を進め話し合いで解決する平和の枠組みを北東アジアにも構築すべきと考えます。そして、戦争法廃止の一点での共同の取組みも広がっています。多くの国民が、この法の廃止を望んでいます。議会の数の力に任せて、解釈改憲にとどまることなく、明文改憲へと突き進もうとすることは、世論を顧みないものです。
 本来、憲法は、国民主権であり、国会議員は、憲法第99条に憲法尊重の義務を果たさなければならないことが明記されており、そのための努力を払うことが求められています。
 以上を指摘し、実質、改憲を求める意見書の採択に反対を表明し、討論とします。