もりた真弓議員の反対討論



2016.3.17

写真  市長提案の64議案中14議案に反対し、発議第1号が否決となったことについての討論を行います。
 反対する第1の理由は、国政に対する政治姿勢です。
 市長は、「安全保障法」いわゆる「戦争法」について「法成立を残念」とする一方で、自衛隊の南スーダンでの任務が拡大し、武器の使用まで認め、加害者・犠牲者を生む危険が迫っているにも関わらず、自衛隊募集については「適切な事務の執行に努める」と答弁しました。憲法改正を明言し、この国を戦争する国へと進める安倍政権に追随する姿勢では、首長としての姿勢が問われます。
 また、消費税の10%への増税が「市民の生活に影響があることは認識して」いるとの見解を示しながら、提案した地方創生加速化交付金など活用した子育て支援や住宅リフォーム助成制度の実施には、後ろ向きです。沖縄の新基地建設やTPPなどの問題については、地方自治の根幹を揺るがす問題と捉える認識がなく、地方自治権を堅持する姿勢が欠如していることを批判します。

 反対する第2の理由は、新年度予算が三大都心開発や海辺の活性化などを優先し、アベノミクスで疲弊する市民の暮らしに寄り添わず、福祉を切り捨てていることです。

 予算の特徴について申し上げます。
 新年度予算は、一般会計が4,004億円と初めて4千億円を突破し、前年度比102億円増の大型予算となりました。私どもはこの大型予算が、地方自治法の本旨「福祉の増進」に使われているかどうかの視点から慎重に審査しました。
 予算には、障害児通所支援事業所整備や、土木事務所予算3億3千万円増など、市民と私どもの要求が前進する事業が組まれています。
 しかし、長寿祝い金88歳廃止、国民健康保険料4.5%引き上げ、新年度4月1日に874人が保育所入所待ち児童となったままであり、小中学校普通教室へのエアコン設置拒否など、福祉を削り子どもの幸せに背を向けた予算となっています。

 一方で、千葉駅周辺活性化、蘇我副都心開発、海辺の活性化、幕張新都心国家戦略特区指定、オリンピック・パラリンピック、ロンドン視察、新庁舎整備計画などに重点を置いています。市民の福祉より、千葉都心・幕張新都心・蘇我特定地区スポーツ公園などの開発がなぜ必要なのか、なぜ急ぐのかが厳しく問われる事業がめだっています。
 市長は、必要性や緊急性を勘案して推進と言いますが、海辺の活性化で事業費41億円の旅客船桟橋から船が出てもどれだけの市民が利用するのでしょうか。費用対効果がほとんど見られない事業ではないのでしょうか。
 利用する市民が限られている蘇我スポーツ公園整備には、7億7,500万円も注ぎ込んでいます。総事業費298億円の新庁舎整備は、新年度1億2,300万円の予算で基本設計を行うといいますが、建設費や資材高騰で建設工事事業費の見通しが一番不透明なこの時期になぜ急ぐのでしょうか。市民からは「どうしても熊谷市長の下で新庁舎を建設したいのか」との声もあります。

 市長はパラリンピックを重視して、開催後「障害者との共生社会」を推進するとしています。オリンピズムの根本原則には、「オリンピック憲章の定める権利および自由は、人権・肌の色・性別・性的指向・言語・宗教・政治的またはその他の意見、国あるいは社会のルーツ、財産、その他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく確実に享受されなければならない。」とあります。「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会を奨励することを目指す」ことが目的のオリンピックに、ロンドン視察がなぜ必要なのでしょうか。
 予算審査分科会であきらかになったのは、もともと市長はリオディジャネィロに視察する予定だったけれども、議会日程と重なるために断念したことでした。視察先をロンドンに決めた日時は1月26日であったことも明らかになりました。今議会に説明したパラリンピック後のロンドンの障害者対策などのレガシーを視察するという目的は、議会開会少し前に急にロンドン行きが決められて、取って付けた理由との指摘があります。また、新聞では「来年の市長選挙のために経済界と一緒に視察」と報道しています。
 オリンピック・パラリンピックへの対策は必要ですが、千葉市のありのままを見てもらい、必要以上に経費をかけての準備は慎むべきです。リオが駄目ならロンドンへとの理由で400万円も使って視察することに市民理解は得られません。まして市長選挙対策だとするのならば、市民の税金を私的な目的に使うことであり到底認められません。 

 つぎに、安倍政権の進める「地方創生」などへの対応について指摘いたします。
 熊谷市長は、国の補正予算が決定した「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策」、「GDP600兆円」、「希望出生率1.8」、「介護離職ゼロ」を目指して千葉市も予算措置を講じたと述べています。
 補正予算の概要は、(1)オリンピック・パラリンピックにむけた多様性対応等レガシー整備(2)海辺の活性化を活用したエリアPR (3)千葉地域産品販売拡大調査・実証 (4)東京湾ツーリズム旅客船実証実験です。
 この事業が、「希望出生率1.8」、「介護離職ゼロ」などに貢献するとは到底思えません。正規雇用化、介護士や保育士の賃金引上げ、特養ホーム・保育所増設などにこそ力を入れるべきであり、目的と実態が著しく乖離しています。これが「一億総活躍」「地方創生」の実態といえます。
 これらの事業推進のため組織改正として、幕張新都心課、オリンピック・パラリンピック推進室、観光プロモーション課などを新設しています。

 以上、市民生活・福祉を削り、一方でロンドン視察等必要性の無い事業や、都心開発など必要性緊急性の乏しい事業に多額の予算を使うことには、反対です。
 日本共産党市議団が提案した、組み替え動議で明らかなように、地方自治法の本旨「福祉の増進」に努め、安倍政権による国民生活破壊の政治に対する防波堤となって市民生活を守る予算に組み替えることを、強く求めます。

 新庁舎整備についてです。
 新庁舎の位置と建物の形について、L字型を示していますが、四角、長方形の方が使い勝手もよく、経費も安いなどのメリットがあります。L字型提案の背景には余剰地の民間利用についてこだわり過ぎがあり、止めるべきです。
 建設時期について市長は「柔軟に対応」と答弁していますが、共産党市議団が提案しているように、「オリンピック・パラリンピック終了後に改めて考える」とし、それまで凍結することを求めておきます。

 格差と貧困への対策についてです。
 千葉市の実態は、市民税課税標準額の割合、納税義務者数44万2,864人のなかで、課税所得100万円以下の市民が145,506人、全体の3分の1であり、課税所得の合計は900億円です。
 課税所得2,000万円以上の市民は1,977人で、全体の0.004%になり、課税所得合計では762億円です。
 世界で貧困をなくす活動に取り組んできた「オックスファム」の指摘した、世界の僅か62人の資産が、世界人口36億人の資産と同じという格差までには遠いけれど、千葉市の納税義務者の3分の1、145,506人の課税所得が900億円なのに対して、僅か2,000人の高額所得者の課税所得合計が762億円であり、千葉市の格差社会は確実に広がり、低所得者が増えて厳しい生活を余儀なくされています。いまや65歳以上の高齢者の4人に1人が、生活保護水準を下回る収入で暮らしているとの試算もあります。
 この格差の打開のために、春闘で「働く人への大幅賃上げ」「最低賃金の引上げ」「千葉市独自にも人手不足の介護や保育などで働く人の低賃金改善への直接支援」や、「住宅リフォーム助成制度」など循環型経済政策を実施して、市民所得を引き上げる事。子どもの6人に1人が貧困と言われる社会で、貧困の連鎖を断ち切るために、市独自の奨学金制度をつくって自立の道を歩めるように、予算配分するよう求めておきます。

 つぎに、各局の指摘をいたします。
総務局について
 防災についてです。 
 自主防災組織や避難所運営委員会の熱心な活動に敬意を表します。避難所運営委員会では、「顔を見たことも無い人を避難させられるのか」など、災害時に避難困難者を誘導することや、名簿の運用が難しい問題などでご苦労をされています。
 ところが行政は、支援を求めると「共助の問題」だからと距離をおいています。避難誘導の体制や準備ができないうちに大災害があったら間に合いません。行政は市民の安全と命を守る仕事に全力を尽くすことを求めておきます。
 市民の安全を守るため耐震改修の補助事業を改善したことは評価します。しかし、首都直下地震が想定される下では、「改修が必要な戸数に対して予算化した戸数が余りにも少ないこと」「対象がS55年建築基準法改正以前の住宅にしか適用されないこと」など不十分です。その点では、わずかな費用で住宅の安全が守れる、家具転倒防止金具の取り付け制度を利用する世帯を増やすことが必要です。現在高齢者対策として保健福祉局が取り組んでいますが、防災対策として位置付け、総務局でも取り扱い、利用の拡大を求めておきます。
 国際交流、市長のモントルー訪問は、公式訪問とはいえ財政危機と福祉切り下げの下で市民理解は得られないので、取りやめるべきです。  
 職員の適正配置では、定数不足で増員が急がれている社会援護課のケースワーカーの適正配置を行うことを求めておきます。

総合政策局
 オリンピック・パラリンピックについては、市長のロンドン視察行きの中止と、幕張メッセ改修費用は県の責任で行い、市の負担は断ること。
 都市アイデンティティについては、 千葉市らしさを広げていくために 千葉氏・開府890年、加曽利貝塚、大賀ハス、海辺の4点について市民から意見をうけていくとしています。千葉市の歴史や文化、景観を広く市民に認識してもらうことについては否定しませんが、この手法は市が上から押しつけるようで適切ではありません。
 アイデンティティは市民から多様な意見・要望を自由に発信してもらい、議論するなかで、市民の中から醸成していくことであると思います。発想を転換すべきです。

財政局
 美浜区の旧高洲第二小学校跡地については、公共の学校用地を一般競争入札で処分するものです。公共用地を民間企業により高い金額で落札させ、使い道は企業任せにするあり方は問題です。まちづくりの観点から、公共用地として残す必要がありました。今後の利活用については、地元住民の意見をよく聞いて進めるよう求めておきます。

市民局
 マイナンバーは地方公共団体情報システム機構から、情報関連会社5社によるシステム構築が進められてきましたが、システムの不具合が発生し現場は疲弊しています。個人情報の漏えいを100%防ぐことはできません。コンビニ交付や金融機関などの利用拡大ではさらにその危険性が高まります。市民にメリットのないマイナンバー制度は凍結し、中止することが必要です。
 障がい者スポーツ推進やLGBT・多様性を認める共生社会、ダイバーシティづくりが求められています。LGBT(性的少数者)支援を進めるためにも、パートナーシップ宣誓書を発行するなどの取り組みを求めておきます。

保健福祉局
 特別養護老人ホームについて、1月現在の待機者は1,777人にのぼりますが、新年度も2か所の整備にとどまり、いっこうに解消できません。その上、職員の待遇が悪いため人員確保がままならず、3年間も20床空いたままの状況も見受けられます。国会でも野党が賃上げの提案をしていますが、市も独自に対策を取ること、また利用しやすいように、市独自の減免を行うよう求めます。
 亥鼻・鎌取の福祉作業所は本来市が運営していくべきものですが、今後は指定管理者が運営を続けられるよう、また、社会参加と雇用が保障されるよう、市としても支援していくよう求めておきます。
 損害賠償額の決定及び和解については、今後の再発防止のためにも事前の調査など具体的な対策を講じていくべきです。
 千葉市幸老人センターは、元々、幸町の地域には住民の方々が集まれる施設がなかったため、幸老人センターを代替え施設と使用してきました。現在は高齢者だけでなく地元の様々な世代の人たちが利用しています。自治会、住民の要望を踏まえた上で話し合いを続け、代替え施設の整備を進めるべきです。

こども未来局
 千葉市は2年連続待機児童ゼロと言いますが、現時点で、4月1日時点の保育所入所審査の不承諾者は874人にものぼります。保育所に入れず仕事を辞めざるを得ない保護者への対応が求められます。国がこの4月に退職者を出さないために「非常事態という認識で緊急対策を実施」すべきであり、公立保育所の分園設置や改修への財政支援、企業による雇止めや解雇の防止策をとるとともに、自治体の責任で公共施設を活用して緊急の保育を実施するなどの対策が必要です。
 今年度整備された保育所、保育ルームから認可保育園、小規模保育も含めると17園があるものの、園庭がある保育所は5か所のみです。木造の5か所の公立保育所はリース方式での建て替え、庭付きの保育所の整備で保育環境を整えること、同時に保育士の待遇改善と質を向上するべきです。国待ちではなく、千葉市でも「保育園落ちたの私だ!」の声に応えて、船橋市の様に市独自での保育士処遇改善策を講じて、子どもたちの健やかな発達を保障し、安心して預けられる施設にするよう自治体の保育実施義務を果たすべきです。
 子どもルームは1月時点で、低学年ルームで111人、高学年ルームには35人も入所待ち児童がいます。施設整備が追いついていないことも問題ですが、慢性的な指導員不足は深刻であり、低待遇を早急に改善しなければなりません。高学年ルームには、エアコン設置を含めた施設整備を行うべきです。 

環境局
 千葉市においても、大規模な太陽光発電設備の設置が進められていますが、地域住民への説明会を実施することなく、住宅街に設置されたケースがあります。地域との共生を目的に、事前説明会の実施義務など指導・規制する条例の制定が必要です。
 PM2.5対策については、自動車の排ガスと工場のばい煙が主な原因となっています。排ガス規制など具体的な対策を早急に進めるよう国や自治体あげて取り組むことを求めておきます。

経済農政局
 労働対策として、若者を使い捨てにする、いわゆる「ブラック企業」「ブラックバイト」対策を本格的に進めることが必要です。国や県、大学等とも連携し、そうした企業の根絶とともに、高校生からの労働法教育を具体化すべきです。
 「一億総活躍社会の実現のため」として、MICE推進、夜景観光事業、訪日外国人旅行者(インバウンド)対策が新年度の事業とされています。現在の中小零細企業や農家への支援を充実させ、地域経済や農業を応援するのが市としてやるべきことです。
 農業後継者対策の抜本的強化が求められます。新規就農者を増やし、生産から販路開拓まで進めるためには、農政センターが果たす役割は重要です。農政の予算を増やすことを求めます。

都市局
 市は、千葉中央港地区に桟橋や階段デッキなどを整備し、旅客船ターミナルのオープンを進めて来ました。しかし、千葉港周辺は工場と高層マンション、パチンコ屋、有料老人ホームなどの建築物が立ち、さらにターミナル駐車場側に新たなマンションの建設も進む一貫性のないまちづくりとなっています。
 「東京湾ツーリズム旅客船運航実証実験」や「海辺のグランドデザイン」にもとづく「海辺の活性化支援」などに「地方創生加速化交付金」をつぎ込んでも、憩いとにぎわいづくりが見込めるのかは不透明です。千葉港第2期事業の2本目の桟橋などの計画は見直し、新たな負担を増やすことはやめるべきです。
 蘇我スポーツ公園の多目的グランドは人工芝・夜間照明整備によって、プロもアマチュアも一律の使用料に統一します。2020年のオリンピックに向けスポーツ振興の観点からも、一般利用者には気軽に利用できる金額で貸し出しするよう求めておきます。
 動物公園の電動車いすの使用料について、減免対象者に対し、電動車いす、セニアカーの使用に係る使用料を減免するとのことですが、そもそも障がい者からお金を取るという考え方は改めるべきです。

建設局
 土木事務所関係予算は、新年度3億3,000万円の増額となっていますが、10年前との比較で30億円の減額となっているため、道路等の維持管理が間に合っていません。区画線等の道路標示が消え日常の通行に支障をきたす状況を急いで直すためにも、さらなる予算の増額を求めます。

消防局
 防災対策として、地震による火災を防止する感震ブレーカーの設置を普及させるため、設置への助成を検討するよう求めておきます。

教育委員会
 子どもの貧困が社会問題化するなか、就学援助の充実が急務です。現在の制度では、小学校、中学校の入学時に必要な費用が工面できません。新潟市や板橋区などの様に事前支給に変更すべきです。
 学校施設整備については、ようやく小中学校の音楽室と特別支援学級と特別支援学校のエアコン設置が進展します。しかし、市民からの切実な要望である普通教室への設置のための設計費などは計上されず、しかも音楽室設置が完了するのが5年先では、子どもの命は守れません。平成24年度における学校施設整備予算は約124億円であったものが、平成28年度の学校施設整備予算は約82億円と約40億円も減っています。中学校への普通教室エアコン設置は22億円の予算で実現できます。庁舎建設や都心整備開発事業を見直し、教育予算を増額し市民の切実な願いに応え、トイレ洋式化、老朽化対策と、普通教室へのエアコン設置も合わせて行なうべきです。

 つぎに、発議1号・千葉市墓地行政検討委員会設置条例の制定についてです。
 現在でも問題がおこっていますが、「宗教活動」と「宗教ビジネス」の見極めや「宗教活動」と「地域の景観」や「まちづくり」との折り合いなど、今後もより多くの問題が出てくることが考えられます。こうした問題に対して、専門家の方々の意見を聞きながら対策を講じていくための「検討委員会設置条例」を提案しました。賛成少数で否決されたことは誠に残念です。

 最後に、陳情1号・パーキングパーミット制度の導入を求める陳情についてです。
 パーキングパーミット制度は、身体障がい者や内部障がい者など歩行困難な人が確実に駐車場を利用できるよう、行政が利用証を交付する制度です。罰金や罰則については「制度を守ってもらいたい。」という思いで記載されていたものと考えます。障害者が使える駐車場を求めるこの制度を千葉市も導入して、周知啓発に努めるべきです。陳情が賛成少数で否決されたことは誠に遺憾であることを申し上げて、討論を終わります。