もりた真弓議員の討論反対



2016.9.15

写真 日本共産党千葉市議団のもりた真弓です。
 会派を代表して、市長より提案されました18議案中、議案第102号、議案第109号、議案第111号、議案第112号に反対するとともに、発議第8号、発議第9号が否決されたことに対して、及び請願第1号、請願第4号が不採択になったことへの討論を行います。

 はじめに、議案第102号・平成28年度千葉市国民健康保険事業特別会計補正予算(都道府県単位化に伴う国保システムの改修)についてです。
 国保の都道府県化は「国保が抱える構造的問題を解消して事業運営の安定化を図ることで国民皆保険制度を堅持する」ことを目的とするとされています。
 2018年から国保の保険者は都道府県と市町村になります。これまでの国保との違いは、新制度のもとで、都道府県が国保財政を一括管理し、市町村には「納付金」を割り当てることになり、「納付金」は原則100%納入とされ、保険料の徴収強化の圧力がかかることになるのはあきらかです。広域化は、都道府県を「国保財政の管理者」「市町村国保の監督役」とすることで、「医療費給付が高い、つまり病院にかかる人が多い自治体」「保険料の徴収率が低い自治体」「住民負担軽減のため一般会計からの繰り入れが多い自治体」を明らかにし、圧力をかける「住民いじめ」の国保行政に変えてしまうものです。
 常任委員会では「国保を広域化することで国保の堅持ができ問題の解決になる」との発言がありましたが、今回の都道府県化は、徹底した医療費削減を狙ったものであり、「国保の堅持」「問題解決」どころか、「市町村と住民をいっそう追い詰める」ものになります。
 2014年に成立した「医療介護総合確保推進法」で、地域医療構想を策定することが義務付けられました。この医療構想は、都道府県ごとの医療供給体制の枠組みをきめ、医療費全体の抑制を図ろうとするものです。都道府県が財政を握ることで、予算配分の削減や地域の病床削減で圧力をかけ、国保料の差し押さえを含めた強引な取り立てや、無慈悲な保険証取り上げが横行することも予想されます。
 こうした国保システムの都道府県化には賛成できません。住民の命を守る国保にするために、議会そして千葉市が責任を果たすことが大事であることを申し上げておきます。

 つぎに、議案第109号・千葉市証明等手数料条例及び千葉市印鑑条例の一部改正についてです。
 証明書のコンビニ交付サービスの導入に伴い、コンビニ交付の手数料を50円引き下げるものです。
 サービスを利用するには、個人番号カードいわゆるマイナンバーカードが必要になります。このマイナンバーカードは、従来の「住基ネット」などとは比較にならない大量の個人情報を蓄積し、税・医療・年金・福祉・介護・労働保険・災害補償などあらゆる分野の情報を、一つの番号に紐づけし、公務・民間にかかわらず多様な主体が、活用することが狙われています。今までまとまっていなかった情報をまとめることによって発生する情報漏えいのリスクは極めて高くなります。委員会審議の際、情報漏えいについて「安全だと言えるのか」という質問に対して、担当課は「100%安全とは言えない」と答えています。
更に、現在は身分証明以外に使い道がありません。カードで利用できるということは、コンビニ交付の利便性の向上よりもカード持ち歩くことによる紛失・盗難のリスクの方が高いと言わざるを得ません。
 システム導入の維持管理費に5年間で4億3千万円かかるにも関わらず、手数料を引き下げるというのでは、何のために導入するのか問われるのではないでしょうか。
 千葉市のカード利用人数は、5年後23万人と見込んでおり、利用者が増えれば証明書発行経費が削減できるとしていますが、5年間で利用者が増える保障もありません。問題だらけで、情報漏えいと紛失・盗難のリスクがあるマイナンバーカードは速やかに凍結し、中止・廃止も含めた見直しをすることです。よって、条例改正には賛成できません。

 つぎに、議案第111号・千葉市産業用地整備支援事業審査会設置条例の制定についてです。
 この議案は、民間活力を導入して産業用地の整備を進めるために10億円を上限に新たな支援制度を設け、審査会を設置して事業者の選定を行なおうというものです。
 この条例の問題点は3点あります。1つに、事前に明治大学とディベロッパーとの意見交換を進めている出来レースであること、そこへの市民参加がないこと。2つに、市民の税金を特定事業者の産業用地確保のために投入しようとしていること。3つに、中小企業への対策が不十分であることの3点です。
 以下、問題点を明らかにします。1つめに、対象となる千葉北インターチェンジと高田インターチェンジへの産業用地の確保にあたって、用地の確保における土地の買収が無くてもよいことや、住環境への影響が懸念される地元住民の「同意見込み」だけで事業計画を提出できることです。明治大学誉田農場についても、市は明治大学へ「用地としての可能性がある」という打診を伝えていることや、すでに産業用地確保に向けた基礎調査を含め、ディベロッパーとの意見交換を進め、関係者は「用地の集約が可能」と答えていることなどから、議会への説明の前にディベロッパーとやり取りし、たった1ヶ月の間に事業計画を選定することは、事前に打ち合わせしている事業者以外の参入を困難にする。まさに出来レースであり、議会無視と言わざるを得ません。市民参加については審査会において「関係者の出席を求める」に留まっています。特に、産業用地としての整備が想定される誉田農場の有効活用を求める周辺住民の意見が反映されないのは問題です。
 2つめの問題点は、産業用地を民間活力によって整備するために、市民の税金を上限10億円も投入しようとしていることです。企業は、その土地が調査結果にも示されているように従業員の通勤の便利さ、自社関連施設・取引先との近接性といった企業活動にとってどうなのかの判断で進出してきます。
 自治体による呼び込み型の企業立地補助は、茂原のIPSアルファの大型液晶事業の工場をジャパンディスプレイに譲渡・撤退などによって雇用破壊がされた事例や、シャープ亀山工場が三重県から90億円、亀山市から45億円の補助によって進出したのにも関わらず、わずか5年で撤退してしまうなど、呼び込み型の企業誘致はすでに破たんしています。千葉市が補助金を出してまで、用地を民間に整備させ、企業を誘致することは認められません。
 3つめは、産業用地整備のためには補助金を出そうという一方で、中小企業や商店街の活性化に対する予算や取り組みが全く改善されていません。千葉商工会議所や千葉市土気商工会で会員数は合計で5,323人ですが、中小企業振興対策費の総額は1,050万2千円となり、会員一人当たりで計算すると1,972円と、2千円にも満たないものです。長い間千葉市の地域経済を支えてきた企業、商店街に支援をすべきで、中小零細企業の振興、地域経済の活性化にこそ焦点をあてるべきです。
 以上のことからも、様々な問題を抱えている極めて不自然な条例であると言わざるをえません。この条例には反対するものです。

 つぎに、議案第112号・千葉市児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例等の一部改正についてです。
 待機児童対策や保育士の勤務環境の改善のために緊急的、時限的な対応として児童福祉法の改正で保育士等の配置要件を緩和しようとするものです。現場の実態から、朝夕の保育士確保が困難なことは承知していますが、規制緩和によって保育の質が低下する懸念の声として「朝や夕方は異なる年齢の子どもが遊ぶので、けがの危険性が高い」「子どもを無資格者に預けるのは、けがや病気の時に不安」こうした声が関係者から寄せられています。そもそも保育士は子どもの命を預かる仕事であり、昨今の保育死亡事故の増加はこうした規制緩和策も要因として指摘されています。また保育士不足解消のため、多額の税金を投入して保育士を増やそうとする一方、保育士資格がない方や幼稚園教諭、小学校教諭、養護教諭等で代替にしようというのは矛盾しています。保育士資格を外した規制緩和では、今後、保育士を志す人は益々減少し、結果保育士不足と待機児童解消ができないという負のスパイラルに陥ります。他の自治体では質の低下を懸念し、時限的に実施する自治体もあるなか、千葉市は期限すら設けず導入することは、保育士不足解消のためとしても無責任な対応と言わなければなりません。低すぎる保育士の処遇改善こそが急務であり、市独自の処遇改善を行い、長時間労働を是正し、働きやすい労働条件を整えることが市に求められる対応です。よって、本議案には反対するものです。

 つづいて、発議第8号・千葉市児童養護施設退所者等奨学基金条例の制定についてです。
 大学・専門学校等への進学の希望を断念することなく、自立できる生活を保障するために費用の一部を給付するため、児童養護施設の退所者等に奨学基金制度を設置しようとするものです。
 市民ネットは賛成でしたが、公明党は、「提案に対して周到な議論が必要だ」として反対、自民党は「個人的には素晴らしい条例とするが、国の制度ができる。現段階で賛成しかねる。」また「困っている人がいたら助けてあげたい制度」と言いながら「高校時代にアルバイトをする。特待生制度もある。大学に行けなかったとしても自分で働きながらできる。」と自助努力を強調し、反対。未来民進ちばは、「主旨は整備していかないといけない。」としつつ、「県の状況を見て市として議論して行うことが必要。」として反対し否決されたことは極めて遺憾です。条例の必要性を認識していながら、子ども達を支援する制度を進めようとしないことは本当に残念でなりません。世田谷区のように国待ちではなく、自治体が判断して今こそ、経済的困難を抱える子ども達を支援していく仕組みづくりが必要です。

 つぎに、発議第9号・千葉市営住宅条例の一部改正についてです。
 千葉市営住宅の入居者が支払っている共益費の空き家分について、条例に「空き家」のただし書を加え、共益費負担を適正な運用に変更し入居者の負担を軽減するための提案です。
 自民党は「市営住宅は家賃の分まで補助しているのに、それ以上に輪をかけての負担軽減は必要ない。政策空家については期限を切ってなら。なるべく市の負担を少なく」と反対。公明党は「トータルで政策空家部分はともかく、全空き家分とすることはあまりにも乱暴すぎる」と反対。未来民進ちばは「通常の空き家までは速やかに同じように扱えない。政策空家については早急に対応するとしても、条例では区別がないので無理がある」と反対。無所属委員も「未来民進ちばと同意見」と反対し、否決されたことは誠に遺憾です。
 ただし、複数の委員から、政策空家の共益費負担については、入居者負担は不当である旨の意見が出されたこと、またその対策についても、担当局から「政策空家については検討を始めたところ」との答弁があったことは重要であり、早急な対策を求めておきます。

 続いて、請願第1号・小中学校の老朽校舎改修、トイレ改善とともにすべての教室にエアコン設置計画を立てることを求める請願についてです。今回は請願第5号も提出されました。請願タイトルが「小中学校」を「市立学校」と2文字だけ変えたもので、普通教室へのエアコン設置を基本計画に盛り込むことを求めたものです。1号は早急に予算化を実現し、エアコン設置を推進することを求めたもので合わせて審議しました。
 市民ネットワークと未来民進ちばは、請願1号、請願5号とも賛成でした。自民党は「文科省、教育委員会にも行った。審議会を作ってできる方向となった。」として、普通教室のエアコン設置を基本計画へ盛り込むことを求める願意の請願5号には賛成し、請願1号に対しては、「願意をみないといけないが、今すぐ予算は付けられない。国にも要望していくが早急に来年度付けろと言うのは厳しい。責任与党としての立場がある。」として請願1号には反対。公明党は請願5号には賛成したものの、「スピード感を持つことが大事だが、早急の予算化は困難」として請願1号に反対しました。スピード感を持つと言いながらエアコン設置を急ぐよう求める請願に反対することは矛盾しています。
 第1号請願については市民ネット、未来民進、わが党が賛成し、自民と公明は6月議会継続としながら今回は反対し、結果可否同数で、委員長が反対し不採択となったのは極めて遺憾です。年々深刻化する温暖化で、夏場の保健室利用者が増加し学習権を奪われている環境を改善することが急務です。平成27年度決算において40億円の黒字というなか、トイレ改修、老朽化、エアコン設置と学校教育環境整備に集中的に予算を投入することが必要です。今後、有識者や市民の意見を聞く場を設けて設置判断していくという方向性は示されたものの、本来であれば市長が学校現場を視察して、意思決定することが当然の流れであり、早期の予算措置判断を強く求めるものです。

 最後に、請願第4号・公立保育所の存続を求める請願についてです。老朽化した公立保育所を公立のまま早急に建替えることを求める、当事者を含め当たり前の願いが込められた請願です。特に現在、大森保育所や緑町保育所について、公立保育所から民営化される計画が示されています。市は、「公立だと建替えの時に国から補助金が出ない。民設民営の場合は国からの建設費の補助があるため整備を進める。」とするもので、コスト削減ありきで進められようとしています。
 その上、「公立保育所の施設改善に関する基本方針」では、建て替えが必要な木造保育所6か所は、民設民営か公設公営かを判断するとしていますが、今回の計画も含めて3箇所ともすべて民営化を進めようとしています。
 民営化によって、保育士はすべて入れ替わるため子ども達へのストレスなど計り知れません。公立にやっと入れたのに、卒所までいられないのは、契約違反ではないでしょうか。公立での障害児童の受け入れは、私立と比較しても多くの児童を受け入れており、経験豊かな保育士の配置によって、地域の子育ての重要な拠点となっています。すでに認可外保育園を認可化するなど私立保育園が急増し、質の確保が懸念される中で、公立保育所を堅持すべきです。
 請願は、市民ネットは、「私立が悪いというわけではない。現状では仕方ない」と反対、未来民進ちばは、「公立じゃなくてはだめというが使える税金を市民に使うことは大きなメリット。利用者の心配な分はフォローを要望」し反対。公明は、「陳述人の話はしっかり聞いてもらいたい」としつつ、「公立でないと水準が守られないわけではない」として反対、自民は、「知人が民間保育園を行い地元で人気があるが、認可が良くないということではない。民間で問題あるのか。」と質問し反対しました。請願4号が、共産党以外の反対で否決されたことは誠に残念です。
 そもそも、市が出した方針とは言え、個々の保育所を民営化することに保護者も含めて同意したわけではありません。保護者を含めた当事者には民営化決定後に説明することは、市民不在だと言わざるを得ません。他の自治体では保護者同意を原則としており、千葉市が今後予定している「公立保育所の建替」における意思決定プロセスは、見直すことを強く求めておきます。

 以上で、日本共産党を代表しての討論を終わります。