小関としゆき議員の条例提案理由説明

2002年6月6日
 発議11号千葉市後見的支援を要する障害者支援条例の提案理由の説明を行います。
 この発議については、私達はこれまでも条例化を求めてきました。 
 新しい「成年後見制度」は、障害者の立場に立って改正されたものであり、その適用において、審判請求の手続きや鑑定料などの費用負担を、後見的支援を要する障害者の方が利用しやすいように、必要な支援を市がより充実して行うものです。また、一人一人の障害者や家族の実情に応じたサービスとベストの選択を行政がかかわって行うものです。
 横浜市が、2001年12月に、全会一致で可決した「後見的支援を要する支援条例」と同様の主旨で提案するものであります。
 この条例は、障害者の養護を行う親等がいなくなった時や、何らかの理由で養護が出来なくなった時はどうなるのか、障害者が社会生活するうえで多くの不安をかかえているもとで、こうした問題を行政が受けとめて実施しようとするものです。
 また、障害者及びその家族の不安を取り除き、安心を確保するために後見的支援を要する障害者に関して、市や市民の責務を明らかにするとともに、市の基本的事項を定めることによって後見的支援を要する障害者が地域で安心して生活を送ることができるようにしようとするものです。国において、1999年12月に新しい成年後見制度が成立して、判断能力の不十分な成年者(痴呆性高齢者・知的障害者・精神障害者等)を保護するための制度が法制化されました。また民法上、禁治産・準禁治産という制度がありました。今回の改正で高齢化社会への対応と、知的障害者、精神障害者等の福祉の充実に向けて「自己決定の尊重」「残存能力の活用」「ノーマライゼーション」などの理念により、柔軟かつ弾力的な利用しやすい制度の改善が図られたところです。それは、禁治産・準禁治産の制度を、多様な判断能力及び保護の必要性の程度に応じた柔軟かつ弾力的な措置を可能にするとして、補助・保佐・後見の制度として運用されることになりました。補助は、障害により判断能力が不十分。保佐は、判断能力が著しく不十分。後見は、判断能力を欠く状況にあるとしました。そして、成年後見人は、その事務を行うにあたり、本人の心身の状態及び生活の状況に配慮して、居住用の不動産の処分は家庭裁判所の許可を要することになります。任意の後見人との契約は、公証人の作成する公正証書によるものとされています。家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、任意後見人の申し立てにより任意後見監督人を選任することになります。任意後見監督人は、任意後見人の事務を監査し、その内容を家庭裁判所に報告することを職務とします。任意後見人に不正な行為があるときは、家庭裁判所で解任をすることが出来ます。その一方で、市町村長に対して、身寄りのない痴呆性高齢者・知的障害者・精神障害者等に対する、適切な成年後見の開始を制度的に担保する観点から、補助・保佐・後見の開始の申し立て権を市町村長に付与されています。そのため、千葉市は2002年度、成年後見制度利用支援制度諸経費として、申し立て費用6人分、97万8,000円を予算化しています。
 千葉市はこれまで、後見支援を要する障害者への対応は、福祉事務所のケースワーカー、保健所の職員等が扱ってきました。障害者専門相談は、「でい・さくさべ」に委託し、2001年度は117件の相談がありました。主な内容は、金銭・相続・財産関係が24件。育児・教育・生活・進路関係が18件。施設処遇・人権関係が14件。就職・雇用関係が8件との事です。相談後の紹介先は、弁護士が35件。市役所・福祉事務所が7件、病院4件、人権擁護委員が3件となっています。また、福祉サービス援助事業(地域福祉権利擁護事業)として、社会福祉法人の千葉県社会福祉協議会が、高齢者や障害者の自立した地域生活を支援するとして、千葉県後見支援センター(愛称 すまいる)をスタートさせています。ここでは、2001年度千葉市分で96件の相談があり、金銭相談25件、日常生活と今後の生活設計3件、事業の問い合わせ7件、裁判・成年後見制度6件等の内容です。利用件数は12件で、利用内容は財産管理・保全、証書の預かり、福祉サービスの申請手続きなどです。
 制度の果たす役割についてですが、現実には、これらの経過を見ましても、千葉市も一定の対応はされていますが、成年後見制度自体のPRがあまりされておらず、運用もかなりの専門性が必要となっています。
 日本弁護士連合会は2001年11月に、高齢者・障害者の権利の確保とその保障を求める決議を行っています。これは、介護保険や2003年から障害者福祉分野における福祉サービスの利用が措置から契約に移行されることに伴い、これらのサービス整備基盤が十分でなく、自由な意志で契約できないでいることの改善を求めています。
 また、提言として、地方公共団体による総合相談・支援センターの設置と国による財政的な援助を求めています。そして、「高齢者や障害者は相談・支援機関に相談するだけでも大変な時間と労力そして勇気を必要とするのであって、1か所に相談に行くことによってあらゆる問題が解決される状態にあることが望ましい。したがって、弁護士会が設置する高齢者・障害者の相談センターとは別に、法律職と福祉職、保険医療職等が協同して高齢者・障害者に対する相談・支援を行う機関が必要である。
 この様な相談・支援機関の設置及び運営は高齢者・障害者の有する権利を実質的に保障するために不可欠であって。憲法25条、地方自治法1の2の規定に基づき国及び地方公共団体の本来の責務である。したがって地方公共団体は住民に身近な行政機関として公費でその様な相談・支援機関を設置運営するとともに、国は地方公共団体の設置・運営する相談支援機関に対する財政的援助を行うべきである。」としています。また、1999年5月に日弁連が行った、介護保険・成年後見制度の実施にむけての決議では、(1)成年後見制度が高齢者の生活援護システムとして実行あらしめるために成年後見制度を迅速に受けることができるように市町村が整備、PRをする。(2)国もしくは都道府県において迅速、安価かつ信頼性の高い鑑定方法の開発、鑑定人の確保を行う。(3)市町村において成年後見人を確保し養成する体制を整備するとともに就任した成年後見人に対する身上監護などの支援体制を整備する。(4)低所得者に対して成年後見人あるいは成年後見監督人の報酬を、国、都道府県あるいは市町村において公費補助する体制を整備する。ことを挙げています。
 日本弁護士会連合会からも、以上のような強い要望が出されており、千葉市も地方自治体として、きめの細かい対応を行うことが求められていると思います。市内の、障害を持つ本人及び家族の実情に即して、成年後見サービスが提供されるよう条例を提案するものです。
 なお、本来は高齢者も含めて行うべきですが、高齢者の規定など難しい問題があり、先に大きな不安を抱えている障害者及びその家族の要望に応えて、サービスの強化を図ろうとするものです。地域で、親亡き後の障害者の不安をなくすために必要な条例です。同僚議員のご理解、ご賛同をよろしくお願いいたしまして提案理由の説明を終わります。